第3夜 お前の血は何色じゃ
たびたびに起きる通り魔事件‥‥‥
新たな犠牲者が!?
とある黄昏時‥‥‥
会社帰りの女性。疲れ果てたその顔。今すぐにでもベッドで寝たい気持ちを抑えて歩いている。
ハァ‥‥‥また残業だよ‥‥‥このままじゃ死んじゃうよ。
愚痴をこぼすのも、飽きるほどだ。
あたりは暗くなり人気も無い道。
「お前の血は‥‥‥」
「ん??」
「なにか聞こえたような‥‥‥疲れてるのかな。」
「お前の血は何色じゃ‥‥‥」
「え‥‥‥??」
鈍い音が鳴り響いた。
場所は変わって、天野家――
あんなことがあったのだ。千影は食事をよそになにやら天邪鬼と話をしているらしい。
「ねえ天邪鬼。君の言っていたじじいっていったい誰なんだい??」
「それに、一つあの事件の時に気になったことがあるんだ、一つ目入道は憑依したときにこの体は自分には合わないと言っていたんだ。だから僕に乗り移るとも言っていた‥‥‥それってやっぱり何か理由があるの??」
何やらうなずいている天邪鬼
(千影はよく見ているんじゃな。感心するぞ。まずはじじいのことじゃが、じじいは我ら物の怪を封印するのを職業にしていた――いわば陰陽師というやつじゃ。陰陽師はわかるな??)
千影はこくりと頷く
(じじいは、陰陽師でありながら我らに優しくしてくれた。封印するのは悪さをしていた物の怪たちだけじゃった‥‥‥そんなじじいを我らも心を許していた‥‥‥何をやるにも天才であり、人の域を超えているとさえ言われていた‥‥‥お前も聞いたことくらいあるじゃろう。)
”安倍晴明„――と
「え!? 安倍晴明ってあの陰陽道を築いたといわれている??」
(そうじゃ、じじいは天才じゃったしな‥‥‥ぬらりひょんなんてすごいなついとったわい)
懐かしそうに話す天邪鬼はどこかかわいさまであった
「これはびっくりだ。‥‥‥でもまってなんでその安倍晴明が君たちを封印したんだ??」
(そこなんじゃ!! あれは普段のじじいとはまるで違っていた‥‥‥だからその原因を突き止めたいんじゃが生憎まだ道が開けんのじゃ。)
「もっと仲間が集まったら話を聞いてみよう。何か知っている妖怪がいるかもしれないよ」
(じゃな‥‥‥それと一つ目入道のことじゃが我自身も細かくはわからないんじゃ、我が千影に乗り移ったとき歯車がかみ合ったような一体感?? といえばいいのかパズルのピースが一つ一つ合わさった感じがしたんじゃ‥‥‥それと同時に何やら懐かしさも覚えた‥‥‥もしかしたら何かしらの仕組みがあるのかもしれんな。)
「それと”憑依人(カトコ―ス)„ってなんなんだい??」
(あれはじじいに教えてもっらたんじゃ。憑依といってもこちらから一方的に憑依するのではなく、お互いの了承のうえで成り立つ封印‥‥‥いわば契約でする封印らしいのじゃが‥‥‥我もようわからん!!)
「そこ大事だろ!!」
あきれた様子の千影
テレビでニュースの音が聞こえる
live中継のようだ。画面には何やら女性が救急隊に囲まれている動画がうつっている
女性が奇妙なことを言い出した。
『まるで鬼のようなものが「お前の血は何色じゃ」と突然殴り掛かってきた』‥‥‥と
(ん!?)
「恐ろしい事件もあるもんだな~、ひょっとして妖怪だったりしてな笑」
フラグを立てた千影であった‥‥‥
(千影、ここへいくぞ!! やつじゃ!! 奴が現れた)
--急に大声だすなよ!!
突っ込みたい気持ちを抑えた千影であったが嫌な予感が的中してしまったと思った。
なによりも最近あのようなことがおきたばかりなのだから--
「え‥‥‥まじで‥‥‥」
「ちょ、今から!?」
勘弁してほしそうな顔で返事を返す
(そうじゃ!! はよ支度せい!!)
--だよね。
「わかったよーもおおおおおおお」
いやいやと支度をさせられるのであった‥‥‥
(千影!! 急げ!! もっと早う走れ!!)
「うるっさいなあ!! 僕は運動が苦手なんだよ!!」
重い足を動かして走るが、運動が苦手な千影にはとても酷だった‥‥‥こんなことなら普段から運動するべきだった‥‥‥
夏場ということもあり、搾れるほど汗をかいているようだ。
あとすこし‥‥‥
くそ‥‥‥息が切れる‥‥‥
(千影!! 右に曲がれ!!)
「え!? でも、現場はあっちだよ」
(気配は右から感じるのじゃ!!)
チクショウ‥‥‥妖怪というやつは‥‥‥
天邪鬼と契約したことを少々後悔した千影‥‥‥
「どこだよ!!」
(あそこじゃ!! 目の前の柱のところ)
暗闇でよく見えない‥‥‥だが、確かに何かいる‥‥‥
その何かは立ちすくみ動こうとしない‥‥‥
ようやく暗闇に目が慣れてきた。
うっすらと見えてきたその影はどこか見覚えのある姿であった‥‥‥
「ツルハじゃないか!! 何やってるんだよこんなところで!!」
(‥‥‥待てっ!! そやつに近づくな!!)
「え‥‥‥何言ってるんだよ。ツルハじゃないか!!」
(違うんじゃ!! そやつから‥‥‥そやつから感じるのじゃ気配を!!)
「うるさい!! そんなことあるわけないじゃないか!! あれはどう見てもツルハ‥‥‥だよ」
瞳からあふれた雫が足元に落ちる。
現実は、待ってはくれなかった‥‥‥その目に映るのは、見覚えのある姿‥‥‥
ツルハに見えてツルハではなく、まがまがしいオーラを放っていた。
目からは【赤い血】が流れ、髪は腰まで伸びていた‥‥‥【金棒】をもっている‥‥‥頭からは【角が二本】生えている‥‥‥
そ‥‥‥そんな‥‥‥
「お前の血は何色じゃ‥‥‥」
完
憑依されてしまったツルハ‥‥‥
千影と天邪鬼は救うことができるのか‥‥‥
そして‥‥‥物の怪の正体が‥‥‥
第4夜 魔の反抗