▼第008話 リグルガスト街道3 無駄であるべき努力
「【D・S・ガール】をBゾーンに送る事で手札から
レジェンダリー級ユニティを呼び出す!おいでませ!
☆6【ステルスバード】!」
☆6のレギュラーユニットはいきなり場に出す事は出来ない。
☆4以下のユニットを1体Bゾーンに送る事によって
初めて場に出てくる事が許される。
【セリカ】【☆40 Md:092】
■□□□□□■ 手札枚数【U:07 C:03 M:02】
■□◇□□□◇ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□◆◆□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■8864□◆ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・Fゾーン1:【白夜】☆0 レア 天候
・Pゾーン:【?】
・Cゾーン3、4:【?】
・Uゾーン2:【ステルスバード】☆6 レジェンダリー ユニティ
・vs:【賊】×? ☆4 ノーマル ユニティ
・vs:【賊】×? ☆3 ノーマル ユニティ
・vs:【賊】×? ☆2 ノーマル ユニティ
その姿は両翼を広げても僅かに10センチ程の
真っ白な大根色の小型の鳥が現れる。
そのカード効果は非常にこの状況に有効的だと考えた。
「カード効果1【光学迷彩】を発動!」
このカード効果の発動で【ステルスバード】は攻撃対象とならない。
それは体表が周囲の状況に溶け込むようになり
その姿を目で捉える事が出来なくなる為。
「そしてカード効果3【連続攻撃】を発動!」
これによって【ステルスバード】は攻撃☆が半分と繰り上げとなる変わりに
攻撃回数が☆の数まで増やす事が出来る。
つまり攻撃☆6で1回攻撃の【ステルスバード】が
攻撃☆3で6回攻撃を行う【ステルスバード】になる。
ただこれは攻撃行動が6回取れる訳ではないのです。
あくまで1つの対象に対して6回攻撃を行う、というもの。
しかも連続攻撃は【ゾディアック・インバース】では
決して強いものとは考えられていないのです。
何しろ回数が増えた所で1回目で倒せばそれまでで
2回目の攻撃が当たったとして、1回目と2回目の攻撃等が
累積したりして、☆12分が最終的に削れるならまだしも
【ステルスバード】のカード効果にはそれが無い。
その変わりにこのカード効果3【連続攻撃】は
ユニットを倒した場合、連続攻撃の一環として別の対象に
続けて攻撃を行う事が出来るのです。
1回目の攻撃で倒せれば2回目の攻撃を別対象に移せる。
いずこかで倒せなかった場合はそこで終わる事になる。
それが【ゾディアック・インバース】というゲームとしての
カードユニットとしての【ステルスバード】。
それが実体化するとなれば話は別……。
現実に受けた攻撃のダメージが無かった事にはならない。
だからこそそれが累積するという現実を引き起こす。
それも1ターンに6回攻撃が行える程に素早く飛び回る。
そして最後にカード効果2【錐揉飛行】によって
【ステルスバード】は攻撃時の攻撃☆を2倍計算する。
「つまり撃☆6の【ステルスバード】がこの戦いの場を
素早く飛び回り、数の優位を引っ繰り返す特効薬足れる訳!」
目の前で縦横無尽に飛び回る【ステルスバード】が次々と
賊だけを仕留めていってくれる。
それこそ【ステルスバード】に身体を貫かれたりと
日本では絶対に見る事のない、凄惨なる光景が広がる。
この為に努力を重ねてきた。
匂いに慣れるべく、轆轤グループ協力の下
私の血を抜いた後に肌に塗る事で発生する「血の匂い」であったり
海外でジョークグッズとして売られている臭いスプレーで
お医者さんがまるで手術中に感じる匂いを再現し、それに耐える事。
未だ地球で行われている多くの紛争や戦争などの
見るに堪えがたい映像等に慣れたりという
無駄であってほしい、あるべき訓練という努力を重ねた。
本来、無駄でなければならない事。
カードユニットに加減、手加減なんてものは存在しない。
【ステルスバード】の飛び回った結果の跡に
彼等が生きている保証なんて一切出来ない。
それが自業自得だとしてもそれは日本でまず見る事も感じる事も
まずありえない光景……。
だけどそれ以上にそんな連中に襲われ、殺され
家族と生き別れるなんてそんな事の方がもっとありえない。
カードを悪用し、そんな事をしようとする事もありえない。
独善だと言われたとしても構わない。
そもそも正義なんてものは人それぞれの立ち位置や考えで変わる。
鬼と言われようと、悪魔と言われようと
私はこの世界の創造神が売ってきた喧嘩を買いに来たんだ。
私が享受していたであろう幸せを台無しにしてくれた存在。
どんな所に堕ちようとこれだけは譲れない……私は喧嘩をしに来たんだ。
僅か5分と掛からず終わった命のやり取り。
ほんの僅か、それでも息がある者が居てもその結果に変わりは無かった。
賊達は騎士達の手によって殺されたからだ。
これが国軍としての行動中なのかは解らないけど
多くの国ではこれが普通らしい。
街まで連れて行き、罪を償わせるなんてのはむしろ冒険者だのが
賊の首の報奨金を目当てにするだけのもので
その後、死ぬまで強制労働に従事させられるのはほんの一握り。
人は生かしておくのにお金も懸かる。
そしてこれが行軍中なら連れて行く余裕なんて無い。
そして何より国軍に刃を向けるのは国に対すて剣を向ける事でもある。
だから彼等はこの場で首を刎ねられ、そして穴を掘ってその全てが燃やされる。
この世界では魔素の影響で死体を放置するとアンデッドと呼ばれる
魔物へと数か月で変貌するのだとか。
それを防ぐ為にその全てを燃やす。
残るのは精々荷として邪魔にならない程度の金品と装備が
剥がされる位のもので、彼等の痕跡でも遺品でも無くなる。
それに嘆き、驚き、気を悪くしている暇なんて私には無い。
それと同時に彼等騎士の人達ですら、私の敵になるかもしれない。
彼等の国がもしカードを悪用しているのであれば
そこに踏み込むのも私の負う使命だから……。
重いながらも引き摺って差し出したアンデスに限れば
それこそ叩き起こされ、この世の物とは思えない声を出し
私的に目を向けたいとも思えない程の光景が背後で行われている。
騎士は国に忠誠を誓った人達だ。
何の為に国軍を襲うのか、それこそ天幕から馬車に至るまで
国を示す印が描かれている相手に対し、襲い掛かる等
この世界であっても正気の沙汰ではないから……。
そしてアンデスが一通り吐露した所で彼の命は刈り取られた。
カードという力がある以上、襲う相手なんて誰でも良かった。
そんな理由だったらまだ違っていたかもしれない。
彼等は騎士達を襲った理由、それは敵対国だからだった。
彼等はこのホシュルイド王国に隣接する国、サンドレア王国の
敗戦兵であり、アンデスはその指揮官だった。
既に戦争はホシュルイド王国の勝利で終わったものの
サンドレア王国の敗戦兵達はもう帰る国が存在しない事になる。
敗戦兵は大抵そのまま賊徒になる事が殆どだそうで
サラマンさん達はその捜索と討伐の為の巡回行軍の真っ最中。
アンデス達はそれを見つけた事だけでなく
数の優位とカードという切札がある事から襲撃を画策。
しかしそれはこうして失敗に終わり、全員が返り討ちとなり
アンデスの首から上だけがこのまま持ち帰られ
あとは全て掘った穴に入れられ、全てが燃やされたのだった。
「嬢ちゃんのお陰でこれといった被害も無く終わった。
感謝するぜ。」
「感謝、ね……。」
「なんだ?その喉に何か詰まったような言い方は……。」
「いや、皆さんは家族も居るだろうし、待っている人達も居れば
これが仕事なのかもしれないけどさ……。
この人達も同じなんだろうな、ってさ。」
「……………。」
「帰る国は無いし、家族もどうなっているか解らない。
だからといって賊徒となった事を正当化する理由にはならないけど。
もしかしたらいつの日か家族に会える可能性を
夢見ていたかもしれないと思うと
どっちの立場もそう大きくは変わらないのかもとね……。
どちらが戦争を始めたのかも私は知らないからね。
ただ他所の国からやってきた私としては通り掛かりな上に
私にまで敵意を向けてきたか否かの違いしか無いんだよね。」
そういうとサラマンさんが頭をガリガリと掻いていた。
「蚤?虱?移さないでね?」
「違う!流石に頭位は街に着いた時に水浴びしてるわ!
だが、そう言われちまうとその通りなんだがよ……。」
「蚤と虱?」
「そっちじゃねぇ!」
「なら前の方かね、正義なんてそれぞれの立ち位置や価値観で変わる。
だから私はサラマンさん達を助けたというよりかは
私の身を護っただけにすぎないって事。
感謝される謂れはないかなってね。」
「ま、そりゃそうだ。国同士の諍いなんてものは
言っている事の食い違いだったり、お互いの欲のぶつかり合いだ。
それでも少なくとも言える事は俺達はこの国の人達を
護る為に国に忠誠を誓っている訳だ。
相手がどうであれ、賊なんかになって諍いの駒である
俺達以外を危険な目に合わせる訳にはいかねぇ。」
「でもサンドレア王国を落としたのであれば、それすらも
ホシュルイド王国の国民じゃないのかな?」
「そう言いてぇところだが、一応投降は呼びかけた。
奴等が信じるかどうかって所にもよってくるが
少なくとも戦争で駆り出される揃いの鎧も着てない連中ってのは
大抵が農民だったりする。それで投降に応じない、となればな……。
それが例え背中から刺される事を意味していようともな……。」
「ふーん、世の中思うようにはいかないって所か……。
で、アンデスとやらを殺した理由は?」
「ありゃ指揮官だから本来は生かしておくものだが……。
今回の戦争では殺害命令が出ていてな。
何しろここ昨今で増えたとされるカードの使い手だそうだ。
それでこの近くの国境砦の1つと5つの街と村が全て
壊滅しただけでなく、その全てを奪われていた。
連れて帰った所で。」
サラマンさんは首に手をあてて「これだ」と言った。
連れて帰った所で死刑が決まっている。
なら首だけが残されて持ち帰るってのも仕方ないのかね……。
「ところで2つ確認しても良いかな?」
「なんだ?」
「なんでずっとアンデスの首をこうして晒しておくのかね……。」
正直、さっきからずっと私の視界に入っている。
っていうか見せなくて良いんですけど?
「何、これを見て臆す事もねぇ嬢ちゃんが気になってな……。」
「ならもう1つの確認にも繋がるね。
私をどうするつもりかな?敵意まで飛ばしてきてさ……。」
少なくとも敵意が2つ程確認出来ている。
サラマンさんのものではないのは確かなのだけどね……。
「ま、アンデスとやらと同じカードを使うってのは
この戦いで解った以上、敵意を向けちまった奴がいるのは
正直俺が詫びる事で許してほしい。
ここ1年少しで特にカードを使う奴が増えた事で
その犠牲になった連中も居るからな。
それが戦争が増えている理由でもあるんだが……。
助けられておいてどういういうつもりは俺にはねぇが……。
納得してないのが居るようだな?」
「ふぅん……まぁ勝手にした事だし自らの身を護っただけだから
感謝もされる必要もなければ恩着せがましくするつもりもないよ。」
『だが我が主に刃を向けるとなれば、どうなるのか。
解らない者達では無いのであろう?』
サラマンさんの顔が一気に硬くなっているのが解ると共に
聞いた事のあるこの声に喋り……。
「【火雷神】、私は出てきて良いとも言っていないんだけど?」
『何、主の意志は尊重はすれど敵意を向けてきている者に対して
我が黙っていなければならない理由にはならぬな。
それに先程から主の左腕をずっと見ている者も居るが……。
このカードの力を知り、欲から欲するのであれば
それこそ我がこの大鎌にて、その命刈り取るつもりでもあるぞ?』
「物騒な事言ってないでさっさとカードに戻りなさい。」
『否、野心はここで刈り取ってこそ、諍いは避けられるものなり。
聴け、愚かな意志を漂わせている者よ。
我は主の意図とは別に自ら自我を持つ親和の存在、【火雷神】である。
その愚かさを発揮した時、主がいかなる状況であろうと
主の意と関係なくこうして現れる事が出来る者である。
その時、自らの愚かさを呪おうと我は主の危機の一切を許す事は無い。』
「はいはい、解ったからさっさと帰る。」
『主には言っておらぬが努々忘れぬ事だな……。』
そう【火雷神】が口にした事で敵意は減るも
1つだけ残った敵意を私は決して忘れる事は無かった。
■新規登場カード■
・☆6レジェンダリー
・【ステルスバード】
特性:【ユニティ】【空ユニット】【潜水攻撃】
・カード効果1:【光学迷彩】
このカードは攻撃対象に出来ない。
・カード効果2:【錐揉飛行】
このカードの攻撃時、攻撃☆を2倍計算する。
・カード効果3:【連続攻撃】
このカードは攻撃☆を1/2と繰り上げとする変わりに
☆数回の連続攻撃が出来る。
ユニットを倒した場合、この連続攻撃は別の対象を
続けて連続攻撃の一環として攻撃する事が出来る。
■新規登場特性■
【潜水攻撃】:陸・海・空ユニットが持つ特性で【潜水】特性を持つ
ユニット等への攻撃が可能となる。
【潜水】:主に海ユニットが持つ特性で水中・海中へと潜る事が可能な為
主に陸・空ユニットからの攻撃対象とならないようになる。