▼第011話 ヤルマーニの街3 古代王七十四柱
昨日はベルツさんの計らいで商業ギルドの庭の一部を借り
【起きて半畳、寝て一畳】を設置して就寝。
朝から素材を次々と商業ギルドの倉庫内に出し
査定を待っている中、ふと気になって聞いてみた。
「カードの取り扱いしているお店ですか?」
そもそも素材を出すのにカードから戻している時点で
ベルツさんには私が【カード・ハンドラー】である事が
バレているので聞いた所で問題は無いと思ったのだけど……。
「殆どが各国の王都でも無ければ扱っているお店そのものは無いかと。
露店であればあるかもしれませんが、それこそ【スライム】や
【ゴブリン】といった簡単な自衛手段の1つとして
売られている程度、ではないでしょうか。」
実際にカードを扱っている露店があったけど
素材として冒険者に多く狩られるらしい【スライム】に
1匹いたら30匹いると思え、ともされる
駆け出し冒険者御用達なんて訳の分からない呼ばれ方まで
される程には討伐数の多いであろう【ゴブリン】。
食用として大変美味しいとされる【フォレストラビット】や
【角兎】に【オーク】等、何かしらの目的で狩られた
カード等が並んでいる上に、その値段が中々お高い。
大体☆1つ増える毎に桁が1つ上がっていくといった
感じに値段がつけられていて、最も高いのが
レア級ユニティの☆4【オーク】、お値段大金貨1枚。
日本円で1000万円……。
高くない?と思ったけど、才能や努力とは無縁で
誰でも実体化させられる事を考えれば妥当と言えば妥当なのかな?
他にもないかと露店を離れていった時、事件は起きた。
突如後ろから猛る様な声が重なるように聞こえたかと思えば
露店の店主と、客?がそれぞれオークを実体化させていた。
いや、あれは……強盗?
オーク同士のぶつかり合いなら、決着はつかない。
そう思っていたけど店主は露店のカードを次々と呼び出す事で
5体のユニットを揃え、オークに立ち向かうも
まぁ【オーク】が最も☆の高いユニットなら勝負が付く筈は無い。
なら衛兵さんでもやってくれば終わりかと思った。
強盗と思しき男の手からカードが地面へと叩きつけられた時
現れたのが【オークエリート】だった。
【オーク】の上位ユニットにあたり
【オーク】が☆4のレア級ユニティであるのに対し
【オークエリート】は☆5のエピック級ユニティにあたる。
店主もそれによってユニットが倒される事を察したのか
1枚のカードを地面へと叩きつけた、まではよかった。
少し離れた目の前で、店主は強盗の手によって。
いや、【オークエリート】の手に持つ斧で襲われてしまったのだった。
叩きつけたカードは実体化しなかった。
そして風と共に、私の方へと流されるように飛ぶ中
強盗は露店のカードを全て手にした後
私の方へ視線を向け、笑みを浮かべていた。
飛んできたカードを私が拾うと、理由が解った。
「【風雪神】……。」
神二十七柱、二十七種存在する
主役級ユニットの1つで虎の獣人を模したリマーカブルユニット。
カードとしては☆12のゴッデス級になるものの
この世界で実体化させられるのはたった1人という制約があるカード……。
私も試してみたけど実体化は出来なかったし
恐らくこいつ、と思われる使い手が既に頭に浮かんでいる。
見た目で☆12だからと使おうとして実体化出来なかった事で
強盗を追い払えなかった、って所か。
どういう経緯で手に入れたのかは解らないけど
神二十七柱は実体化出来ないから、実体化の可否による価値は
無い、といっても等しいからこそ
露店の店主が持っていた可能性はあるだろう。
「そのカードを寄越せ!」
強盗の男が【オークエリート】と共に私の方へと駆けてきて
露店の店主に振るったのと同じ斧が私へと振るわれると共に時間が止まる。
「……………【ねこねこローブ】のカード効果1【ねこねこ保護活動】と
カード効果2【ねこねこリフレクション】を発動……。」
そして時が動き出すと【オークエリート】が私に振るった斧は
決して私に届く事は無く、変わりに【オークエリート】が吹き飛んだ。
「そういえば【荒ぶる腹肉】なんてカード効果を持っていたね……。」
【オークエリート】はカード効果2である【荒ぶる腹肉】によって
LPを1持っている珍しいユニットだ。
ユニットが持つLPの役割は倒された時、即座にLPを消費し
起き上がる事が出来るもの。
反射される攻撃☆ダメージが2倍にある【ねこねこリフレクション】を受けても
【オークエリート】はLPを消費する事でまだ戦える状態で居られる。
だけど強盗の男からすればそれ処ではないのだろう。
何しろ☆5の【オークエリート】が私に攻撃を仕掛けた筈なのに
私は無傷で【オークエリート】が吹き飛ばされた。
恐らく表示上ではLPが1から0に減った事にも気が付いただろう。
もう1度、同じ事をしたとして今度は【オークエリート】が
倒され、この場から消える結果になる可能性。
それすら頭が過らない程の馬鹿という訳でもなさそうだった。
強盗の男は急停止、一気に踵を返すも
それは決してしてはならない手段へと男を誘ってしまった。
「そっ、そこの小娘!こいつの命が惜しくばっ!?」
いや、馬鹿では無いかもしれなかったけど愚かなのは確かだった。
「審判、決闘申請。」
☆1【カード・ハンドラー】セリカ・ナナホシ
【シングル・カード・ハンドラー】カーボ
カードチェック………終了、デュエル・アクセプト
承認と共にデッキがリセットされていく。
当然、男の【オークエリート】が消えるだけで済む事は無い。
何故【カード・ハンドラー】同士の決闘には強制力があるのか。
何故実体化、ではなく映像化なのか。
当事者以外、誰にも被害を与えないように配慮されているからだ。
男は近くに居た女性を人質を取り、刃物をつきつけ
私を脅そうとしたのだろうけど
デュエルはどちらがが挑んだ時点で強制となり
そこにデュエルを行う者同士以外が踏み込む事が出来ない。
これはプレイヤーを護る為に半透明な壁で遮られるのと同時に
プレイヤー以外をも護る為に自動的に出てくる障壁。
人質は私と男の間から吹き飛ぶ様に弾き出されるも
怪我をする事も無いように、吹き飛んだ彼女を受け止める
非常に柔らかい壁が現れ、安全かつ即座に排除する。
カードも、デュエルも、それは人の命を奪う為のものではないからだ。
【セリカ】【☆40 Md:095】
■□□□□□■ 手札枚数【U:05 C:05 M:00】
■□□□□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□□□□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■58476□ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・vs:【カーボ】☆40
【カーボ】【☆40】
■□□□□□■ 手札枚数【R:01 U:035】
■□□□□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□□□□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■□□□□□□ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・vs:【セリカ】☆40
Rカードが1枚、Uカードが35枚……。
「てっ、てめぇ何しやがった!」
「カードは才能があろうとなかろうと誰もが扱える。
だからといってあんたみたいな悪事を働くような輩が所持していて
良いもんじゃないんだよ!だからこの私が1枚残らず
あんたの手札、奪い尽くすよ!
決闘開始!私のターンだ、糞野郎!」
【セリカ】【☆40 Md:094】
■□□□□□■ 手札枚数【U:06 C:06 M:01】
■□□□□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□□□□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■58476□ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・vs:【カーボ】☆40
「Mカードを1枚補充!Cカードを4枚セット!さらにUカードを
1枚場に裏向きにセットしてターンを終了!
そして常に私のターン、ドロー!!」
【セリカ】【☆40 Md:093】
■□□□□□■ 手札枚数【U:06 C:03 M:01】
■□◆□□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■◆□□◆◆□ ◇:表向きカード □:空白マス
■58976◆ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・Pゾーン:【?】
・Cゾーン1、4、5:【?】
・Uゾーン2:【?】
・vs:【カーボ】☆40
「俺のカードを奪い尽くす!?馬鹿言ってんじゃねぇよ!」
「そう思うなら飽きるまで付き合ってあげるからさっさと掛かってきな。
すぐにでも国軍たる衛兵がやってくるんだからさ。」
「言われなくともさっさとてめぇを殺してここから逃げるさ!
やっちまえ【ゴブリン】共!」
【カーボ】【☆40】
■□□□□□■ 手札枚数【R:01 U:032】
■◇◇◇□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□□□□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■□□□□□□ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・Uゾーン1:【ゴブリン】☆1 ノーマル アタッカー
・Uゾーン2:【ゴブリン】☆1 ノーマル アタッカー
・Uゾーン3:【ゴブリン】☆1 ノーマル アタッカー
・vs:【?】
・vs:【セリカ】☆40
男の声に3体のゴブリンが地面に浮き出たカードから
次々と現れると共に街中に叫び声が響き渡る。
本来、街中に存在しない魔物である【ゴブリン】。
特に女性を好み、襲い掛かると知る女性達が
叫ぶのも無理は無いし、その【ゴブリン】達が女性である
私に向かって突進してくる姿はその呼び水にもなったのだろう。
「一切の手加減は無いよ、Pゾーンのカードを反転。
レジェンダリー級イクイップβカード。
☆0【漁り猫の布巾】のカード効果1と3を発動。」
私に向かってきた【ゴブリン】達が手に持つ斧で、短剣で。
抱き着くように足元へと襲い掛かってくる姿も私に触れる事無く
全てが弾き飛ばされると共に消えていった。
【セリカ】【☆40 Md:093】
■□□□□□■ 手札枚数【U:06 C:03 M:01】
■□◆□□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■◆□□◆◆□ ◇:表向きカード □:空白マス
■58976◇ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・Pゾーン:【漁り猫の布巾】☆0 レジェンダリー 装備
・Cゾーン1、4、5:【?】
・Uゾーン2:【?】
・vs:【カーボ】☆40
「馬鹿だね、さっき【オークエリート】の攻撃ですら効いてないのに
【ゴブリン】如きが触れられると思ってたの?」
そんな私の姿はいつもの【ねこねこローブ】ではなく
地色が灰褐色で黒褐色の斑点があるローブ姿へと変わっていた。
【ねこねこローブ】の原型ともなった装備【漁り猫の布巾】。
このローブの最大のポイントは【ねこねこローブ】とは
微妙な性能差があるけどほぼほぼ同じ効果を持っている上
実は発動コストが存在しないのです。
【ゾディアック・インバース】では公式大会においては禁止カード。
それ以外はなんら制限の無いカードである為
別名【友達を無くす装備】とも某巨大掲示板では呼ばれたものの
そもそも殆どのプレイヤーが持っていない位の希少なカード。
まだ【ゾディアック・インバース】が商業化される前、まだギリ晴れた海で
行われていた同人誌即売会で頒布された限定100組のβ版カードセットに
含まれていた1枚で私の知る限り、現存している枚数で言えば
10枚と残っていなかった筈……。
私?当然、同人誌即売会で買いましたが何か?と思いつつも
自慢するようなカードでも無い為、所持している事を
言った事もなければ、使った試しも無い。
だけどこの場で私は一切の手加減をしないつもりでいる。
だから【漁り猫の布巾】が入っているデッキを選択し、今回使っている。
その効果はカード効果1によってマギの消費無くして延々と攻撃を無効化。
さらにカード効果2によって無効化した攻撃☆ダメージを
【ねこねこローブ】には劣る2倍-1にして反射する事が出来るけど
今回使ったカード効果3はカード効果2を2倍+1へと変える。
結果としては【ねこねこローブ】とほぼ変わりない結果が得られる上で
重要なのは消費マギが存在しない事、つまり余程の事が無い限りは
永久機関ともなるのです。
「なら【オーク】だ!」
【カーボ】【☆40】
■□□□□□■ 手札枚数【R:01 U:029】
■◇◇◇□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□□□□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■□□□□□□ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・Uゾーン1:【オーク】☆4 ノーマル ユニティ
・Uゾーン2:【オーク】☆4 ノーマル ユニティ
・Uゾーン3:【オーク】☆4 ノーマル ユニティ
・vs:【?】
・vs:【セリカ】☆40
「結果は一緒だよ!」
同じように襲い掛かってくる【オーク】共も私に触れる事無く
反射されたダメージによって消えていった。
「ならこれでどうだ!」
【カーボ】【☆40】
■□□□□□■ 手札枚数【R:01 U:028】
■◇□□□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□□□□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■□□□□□□ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・Uゾーン1:【オークエリート】☆4 ノーマル ユニティ
・vs:【?】
・vs:【セリカ】☆40
「馬鹿の1つ覚えだね!」
【オークエリート】だって先程倒した事を解らない訳が無い。
それだけ焦っているのか、先程から無駄な時間しか過ぎていない。
「そうか、だがこれは俺の狙い通りだ!」
男が地面へと叩きつけたカードから黒い煙のようなものが噴き出し
それが天高くへと真っ直ぐに伸びていった。
「こい!ムルムル!」
っ!?ムルムルだって?
男の声に呼応するかのように、空が何処からともなく現れた黒雲に覆われた。
それがドーナツ型の穴を形成し、その中央からトランペットの音と共に
巨大なグリフォンが現れた。
その上に乗る公爵冠を被った騎兵が私達の上空にまで降りてきた。
【カーボ】【☆40】
■□□◇□□■ 手札枚数【R:00 U:028】
■□□□□□□ ◆:裏向きカード ■:デッキ・ブレイク(休息)
■□□□□□□ ◇:表向きカード □:空白マス
■□□□□□□ 数字:マギカードと☆ ×:封鎖マス
・UゾーンR:【Or54 音楽の魔人ムルムル】
☆1 ゴッデス リマーカブル
・vs:【?】
・vs:【セリカ】☆40
「っ!?まさか【古代王七十四柱】がここで出てくるとは
夢にも思わなかったよ!」
「こいつはたった☆が1つしかないが、これまで負けた事がねぇ
馬鹿みてぇに強い奴だ!」
そりゃそうだ……【Or54 音楽の魔人ムルムル】は
【古代王七十四柱】の一体で【神二十七柱】が出揃った後に
誕生したユニットシリーズ、準主役級ユニットである位の強ユニットだからね。
全てがリマーカブルかエクシードのRカードに分類され
特殊呼出条件がとにかく厳しい反面、1回呼び出してしまえば
ほぼ無敵に近い性能を持っているのも特徴……。
【シングル・カード・ハンドラー】なら厳しい特殊呼出条件そのものを
無視して良い上に、無敵といっても良い位頭のおかしいカード効果を持っている事で
レギュラーカードは疎か、下手なリマーカブルやエクシードユニットに
負ける事はまず無い。
「衛兵が来るまで時間がねぇ!さっさとてめぇを殺して俺は逃げさせてもらうぜ!」
「そうはいかないよ!こんな危険物、あんたのような奴に持たせておくとか
ありえないね!私がこの場で回収させてもらうよ!」
私の言葉に、ただ高笑いする男カーボは自らの勝利をまるで疑っていない。
勝って当然、とでも思いながら私の言葉を嘲笑っているのだろうけど……。
この世界にとって危険であったとしても、それが私にとって
危険かどうかは別問題なんだと……今からあんたは知るんだよ?
■新規登場カード■
・☆0レジェンダリー
・【漁り猫の布巾】イクイップ(装備)β(べーた)
・カード効果1:【流しの常連】
この装備の装備者へ攻撃を行った際
その攻撃は無効化される。
このカード効果は無効化できない。
・カード効果2:【キッチン・ハンシャー】
カード効果1の発動後に利用出来
無効化した攻撃ダメージを
2倍-1に計算し直して反射する。
このカード効果は無効化出来ない。
・カード効果3:【水掻爪】
カード効果2発動後、さらに攻撃ダメージを
2倍+1に計算し直して任意の対象に与える。
このカード効果は無効化出来ない上
気絶効果を発生させない。
・☆1ノーマル
・【ゴブリン】
特性:【アタッカー】【陸ユニット】
・☆4レア
・【オーク】
特性:【ユニティ】【陸ユニット】
カード効果:【荒ぶる鼻息】
このカード効果は1ターンに1度戦闘時に
☆を1加算する事が出来る。
・☆5エピック
・【オークエリート】
特性:【ユニティ】【陸ユニット】
カード効果1:【荒ぶる鼻息】
このカード効果は1ターンに1度、戦闘時に
☆を1加算する事が出来る。
カード効果2:【荒ぶる腹肉】
このカードはLPを1持っている。




