第31話 『マヨネーズ』販売開始!
朝が来た。
一階の食堂に降りていくと丁度、アルバンさんたちが食事をしていた。
俺が朝、遅く起きるのを事前に伝えておいたから、先に食べるように言っておいたのだ。
「お早うございます」
そう言って俺は丁度、席が空いたので同じテーブルに着いた。
「いただきます!」と手を合わせ食事を始める俺。
「エリアス様、『いただきます』とはどう言う意味でしょうか?」
「はい、『いただきます』は食事を作ってくれた人に対する感謝や、食材となった野菜や肉などに感謝するという意味があります。食べ終わったら『ごちそうさま』と言って、更に感謝と敬意を表すのです」
「ほう、食事前に神に感謝する祈りの言葉と同じですね。今日から我々もそうしましょう」
「無理に変える必要はありませんよ」と、俺は笑った。
食事の後、俺の部屋にアルバンさんを呼び、現在の我が家の収入源について話しておいた。
①塩と砂の精選処理は不定期。依頼待ち。
100g当たり売値33,000円の0.2%の手数料が入る。
②『味元』の製造販売は商業ギルドへ毎月1,000個卸し月200万円の収入。
③『マヨネーズ』は情報料が高く『なごみ亭』しか使用許可を出していないこと。
「塩と砂の精選処理ですか。マジック・バッグでそんなことが出来るなんて…」
「これは企業秘密ですからね」
「ええ、勿論です。定期的な収入は『味元』のみですね。『マヨネーズ』が惜しい。量産化が出来ればいいのですが」
ストレージ内で製造し販売も考えたが、『味元』の様に俺以外の人が作れないのでは問題だ。
誰かが『マヨネーズ』の情報料を買い取るまで、人の手で作りたいと思っていたところだ。
貯えもまだ20,000,000円くらいはある。
奴隷や人を雇うこともできる。
ただ作っても販売ルートがない。
そうだ!以前、アバンス商会のアイザックさんが『マヨネーズ』を販売したいと言っていた。
これを機に手を繋ぐのも良いかもしれない。
「アルバンさん。まずは『マヨネーズ』を作る前に販売ルートの確保です。思い当たる店があるので一緒に行きませんか?」
「販売ルートですか。その店の名は?」
「アバンス商会です。以前、精選処理を頼まれた時に『味元』や『マヨネーズ』販売をさせてほしいと言ってたからね」
「アバンス商会ですか!この界隈では一目置かれる大商会ですね」
「そうです、そこならある程度の量なら受け入れてくれるはずだ」
その時に原材料となる大豆、植物油、塩を仕入れれば少しは安くしてもらえるはずだ。
ただ販売前に反響を知りたいな。
そうだ『なごみ亭』に置かせてもらて販売してもらおう。
「アルバンさん。販売前にどのくらいの反響があるのか調べる必要があります」
「はい。ただどうやって」
「『なごみ亭』に置かせてもらうんです。食事に来たお客さんに販売してもらえば」
「それはいいアイデアですね!さっそくやりましょう」
* * * * *
朝の忙しい時間帯が終わった頃を見計らい、サリーさんたちに話をした。
「実はご相談がありまして」
「相談?ビルを呼んでくるわ。待っていて」
そう言うとサリーさんは厨房にビルさんを呼びに行ってくれた。
「ようエリアス君。相談があるんだって、なんだい?」
「実は…」
『マヨネーズ』を卸しで売ろうと考えていること。
その前にどのくらいの反響があるのか調べたいので、『なごみ亭』で店頭販売をしてほしいことを伝えた。
「それは助かる!売ってくれ、と言うお客も多くてさ~。断るのも大変だったんだ。空き時間の間に店でも『マヨネーズ』を作っていたが、忙しくてとても手が回らない。卸してくれるなら、こんなに嬉しいことはないよ」
「価格ですが『味元』と同じ価格統一で、300gで3,000円でどうでしょう?」
「300gで3,000円ねぇ」
「少し量が少なくありませんか?」
と、アルバンさんが言う。
「『マヨネーズ』は長期保存ができないので、300gくらいの方が使い切れて丁度良いと思いまして」
「それにしても値段が平均賃金一日分の3,000円だと高くありませんか?」
「いえ、逆にです。あまり手頃な価格だと、購入者が多くなりすぐに売切れです。1,000円で欲しい人が九人いるより、3,000円でも買う人が三人いれば良いのです。人件費、材料費を考えたらそれくらいの値段にしないと採算が取れません」
「そうですか。今後の事業拡大を考慮したら、それくらいの金額の方がいいかもしれませんね」
「取り分は店側は三割でどうでしょうか?」
「俺にはそんな難しい話は分からないからな。二人に任せるよ」と、笑うビルさん。
その晩から『なごみ亭』で50個ほど試しに『マヨネーズ』を売ることにした。
ここから怒涛の『マヨネーズ』伝説が始まる?!




