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第24話 アバンス商会

 あれから数日が過ぎた。


 そんなある日、俺にお客が来た。


「エリアスお兄ちゃんにお客さんが来てるよ」

『なごみ亭』の一人娘、アンナちゃんが俺を二階まで呼びに来た。


 何だろうと降りていくと、50代くらいの商人風の恰幅の良い男性が居た。


「私はアバンス商会のアイザックと申します。突然伺いすみません」


「いえ、その様なことは。エリアスと申します。今日はどんな御用でしょうか?」


「商業ギルドで伺ってまいりました。塩の精選処理を請け負って頂けるとか。また『味元あじげん』や『マヨネーズ』の販売元もエリアス様と伺っておりますが」


【スキル・鑑定】簡略化発動

 名前:アイザック・エリントン

 種族:人族

 年齢:52歳

 性別:男

 職業:アバンス商会会長

 レベル:17


(会長さんか、その割には腰が低いな)

「エリアスで結構ですよ。はいその通りです。立ち話も何ですからこちらにどうぞ」と、テーブルに案内した。

今は昼間の閉店している客のいない時間帯なのだ。


「具体的にはどのようなお話でしょうか?」 

「はい、『味元あじげん』はギルドに卸していると伺いましたが、可能であれば私共にも販売させて頂けないでしょうか?また『マヨネーズ』の独占販売を結んで頂ければと思いまして」 


(『マヨネーズ』を個人で作るなら情報料50,000,000円を払わなければならない。それなら権利を持っている俺から『マヨネーズ』を仕入すれば初期投資がない分、負担が少なくなるわけか)

「『味元あじげん』はすでに店頭販売価格が決まっております。商店に卸す場合は一律4,000円で良ければ販売可能です。」

「なぜ販売価格を決めるなどと…」

「私の趣旨としては個人の利益より、この街に食文化を芽吹かせたいだけなんです。宿屋やレストランや屋台で使ってもらい、そこから切磋琢磨して美味しいものを作ってもらいたいだけなんです」


「あなたも商人なら稼げるときに稼いだ方がいいのでは?」


「はい、だから商業ギルドなんです。『味元あじげん』は賞味期限がありません。そのため遠くの街や国に輸出しても品質に問題がないんです。この街アレンやジリヤ国と言う狭い範囲ではなく広めたい。だから商業ギルドの広い販売網を使い全国的にいえ、国境を超え世界的に広めたいのです。消耗品は購入を繰り返すので、数が売れれば薄利多売でも十分以上に儲かりますから」


「そんな壮大なお考えがあるとは。私の様なものでは考えられないお話です。では『マヨネーズ』はいかがでしょうか?」


「『マヨネーズ』は賞味期限があり、7日くらいしか持ちません。そのため、たくさん売ろうと思ったらその場所に、製造工場を作り配送できる範囲で売ることになります。ただ今は量産体制が出来ておらず『なごみ亭』使用する分で精いっぱいなんです。量産体制ができれば考えますが」

(ま、ストレージで材料があれば簡単に作れるけど)


「わかりました、では『マヨネーズ』は諦めましょう。『味元あじげん』は卸してください。それと精選処理をお願いできないでしょうか?実は商業ギルドでその話を聞いた際に『味元あじげん』や『マヨネーズ』の話を聞いたのです」 


「そうでしたか、100g当たり売値33,000円の20%の手数料を頂きます。それとマジック・バッグに1度収容するので、俺を信用してもらえないと仕事を受けることが出来ません」


「それは勿論、商業ギルドのアレックさんより伺っております。エリアス君は欲のない信用に値する人だと」


「アレックさんがそんなことを、照れますね。精選処理する塩はどのくらいありますか?」

「はい、300kgほどになります」

「それだと2,000万円近くになりますが宜しいんでしょうか?」

「はい、かまいません。それ以上の利益がこちらでは出ますから」

「いつ伺えばよろしいでしょうか?」

「当店はいつでも構いません」

「ではまだ昼過ぎですので、今から伺いましょう!それ程時間は掛かりませんから」「そんなに早くですか!ではさっそく参りましょう!」


 出かけることをアンナちゃんに言い、アバンス商会に向かった。

 

 アバンス商会に着き倉庫に向かった。

 倉庫にはたくさんの塩が積み上げられており、これが全て売りさばけるとのこと。

 塩は10kg単位に袋に入っており300kgなら30袋で分かりやすい。

そして不純物を入れる袋を1つ用意してもらった。


 始めようと思ったらアイザックさんがジ~と俺を見ていた。

「では始めてください」と言われ俺は塩をストレージに収容した。

 一瞬で塩が消えたことにアイザックさんは驚いている。


「私も商売柄マジック・バッグを持っておりますが、せいぜい入っても今の1/5。

しかも一度ではなく分割で入れてです。いったいどちらで手に入れられたのでしょうか?」

 (あれ?マジック・バッグて、そんな感じなんだ。今度からは気を付けよう)


「このマジック・バッグは曽祖父の代から受け次いでいるものなので、分かりません。これから作業をしますのでお待ちください」 

と、やってるい振りをするために俺は目を閉じた。


(このエリアスと言う少年は一体なにものなんだ。一見幼そうだが言葉使いもしっかりしており、手数料の計算の速さから高度な教育を受けたのが分かる。それにマジック・バッグだ。塩300kgは馬車一台分だ。そんなに収容できるなら仕入れに行くのも楽になり、軍からも移動の際の荷物運びを頼まれるなど引く手あまただろう。

しかも一瞬で収容できるなんて。私のマジック・バッグの容量でもここら辺では多いはずなのだ。だがせいぜいが貴重品を入れておくくらいだ。この少年には何かがある。仲良くしておいて損はないだろう)


「終わりました、アイザックさん。確認してください」


「もう終わりましたか?」


「はい、分けるだけですから」


 それが普通ではないのだ。バッグの中で塩と不純物と分けるなんて聞いたことがない。

「これからもよろしくお願いします。エリアス様とは、長い付き合いになりそうですからな」


(そんなに精選処理の仕事をくれるんだ。助かるな)

「こちらこそよろしくお願いします」


 そして俺は2,000万円近い手数料をもらい宿に戻った。

 順調すぎる、なにか怖いな。


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