第11話 教会と腕時計
そう言えば教会はどこだろう。
女神ゼクシーにお礼を言わないと。
お祈りすれば会えることもあるって言ってたな。
宿の下に降りるとサリーさんが居たので聞いてみた。
「教会はどこですか?」
「教会?あぁ、大聖堂のことですね。大聖堂は…」
場所を教えてもらい、歩いて10分くらいのところに大聖堂があった。
大きなお城のような建物の横に教会の様な建物があり、そこで参拝ができそうだ。
中に入ると女神ゼクシーだと思われる像があった。
どう見ても盛っている。
実際にあった俺にはわかる。
そんなことを考えていると40代くらいのシスターが来て、声をかけられた。
「どの様なご用件でしょうか?」
「初めて参拝に来たのですが、どの様にすれば?」
「特に決まりはありませんが女神像に跪いて、目を閉じ祈ればいいのです」
言われた通り跪いて目を閉じ祈った。
すると転移した時のように白い靄のようなものに包まれた場所にいた。
「私を呼ぶのは誰ですか?」
「母さん、こんにちわ。俺です。あなたの息子エリアスです。2日ぶりですね」
女神ゼクシーが現れ、ややゲンナリした顔をされた。
「あなたね。で、なんなの?」
「質問です、母さん」
「あぁ、もう母さんなのね。はぁ、なに?」
「どうして盛っているのですか?母さんはボン、キュッキュではありません!」
「はい?」
「もう一度言います。どうして盛っているのですか?実際の母さんはボン、キュッキュではありません!」
「そ、そ、それは…少しくらい盛らないと信仰という人気が出ないからよ」
「でも、さすがにメガ盛りはどうかと…」
「そんなことを言いに来たの…(泣)」
「冗談はさておき、生活の目途が立ったことを報告に来ました」
「そ、それは良かったわね。私も少しは安心したわ、アハハハ」
「ではこれで失礼いたします。また来ますね」
「さっさと自分から打ち切るのね。もう来なくていいわ」
俺は現実世界に戻り、目を開け立ち上がった。
待っていた様にシスターがやってきてた。
良く見ると服がややくたびれ、顔も痩せていた。
今居る建物の外壁も塗装が剥げ、老朽化気味だし。
そのことをストレートに聞くと
「教会は寄付で運営しております。ただ昨今は寄付が減りました。それだけみなさんの生活が苦しいということでしょうか。大聖堂は大きく、他に建物もあり今の寄付の額では修繕が追い付かないのが現状なのです。それに孤児も引き取っておりまして…」
【メンタルスキル】魅力効果が発動しており、シスターは素直に話してくれた。
ある意味、『素直』と言うより自白効果だなこれは。
帰りに心ばかりの寄付として100,000円をシスターに渡した。
シスターはとても驚き、
「こんなに頂いて宜しいのでしようか?」
「俺もある意味、神の子ですし。このくらいは当然ですから」
「まぁ、そうですね、人はみな神の子です。あなたに神のご加護があらんことを」
立ち去ろうとした俺は振り向きシスターに「これ差し上げます」と言った。
「なんですか、これは?」
「腕時計です。正確に時刻が分かる道具です。必要でなければ売ってください」
後日、教会はもらった腕時計をオークションに出品した。
それは1億円で国に落札され、そのお金で建物を修繕しシスターや孤児たちの生活も改善された。
更に国は腕時計を国宝に指定。
教会に貸し出し、腕時計の正確な時刻を基準とし大聖堂の鐘が鳴る様になった。
日の出が遅い冬でも時間が分かり、待ち合わせをしても時刻が分かるので長く待たなくてもよくなり、商談にも良い影響を及ぼした。
良いのか、ずれたままの時刻が基準で。




