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マヌケさんの歯の隙間

作者: つくし

おはようございます。

ここは、あるサメの歯と歯の隙間の間です。想像すると不快かもしれませんが我慢してお付き合いください。


私は一週間くらい前、家出中にサメに飲まれました。毎日毎日ノートに数式を書く生活がどうにも窮屈で、つまらなくて。死ぬほど辛いってわけでもなかったけど、とにかく窮屈だったのでウチの近くにある海辺辺りにでも家出しようかなと思って、フラッと外に出たんです。久々に来たからか潮風がたまらなく気持ちよくって思わず学校指定の紺色の靴下とローファーを脱いでくるぶしくらいまで水につかったんです。そしたら、思ってたより冷たくなくて、むしろ生暖かくて。ぬるま湯に浸かってるみたいで心地よかったので10分くらいそこでボーっとしてたんです。今まで生きてきてここまで何も考えない時間ってなかったから波が荒れてきたのにも気づかなかったんですね。制服の膝下丈のなっがいだっさいスカートが半分くらい濡れてきた頃にやっとデッカイサメが大口開けて私を飲み込もうとしてるのに気づいて。あ、やべ、って思った時には飲まれてまして。飲まれたって言っても海の中に居たわけじゃないからピノキオみたいに胃の中へ波と一緒に流されたんじゃなくて、私の場合はサメの何でか欠けてた歯と歯の隙間にピッタリはまった状態。生きてて良かったって思うのと同時に何でこのサメ歯欠けなんだって思ったらなんか怖さとか吹っ飛んで、むしろ歯の欠けたようなマヌケなサメに消化されてたまるかって謎のやる気まで出てきたんですよ。このサメが釣られて捌かれるまではなんとしてでも隙間で生きてやろうって。


そこから一週間、まだこいつが捌かれる様子はありません。でも私は負けません。まだまだ隙間で生きてやります。おい、マヌケ。私はここで生きてるぞ。ってたまに歯茎を蹴ってやったりしながら。


P.S. 漁師さんへ。

負けはしませんが、サメの中で1人なのはやっぱり少し寂しいので歯の欠けたサメを見つけたら第一に釣ってくださいね。サメの歯と歯の隙間より。

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