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死刑執行人と傭兵隊の勝負に決着がつく。

 ゴーマの絶叫が辺りに響く。

 その咄嗟の動作によって、ゴーマの頭は割られなかった。

 

 しかしルートヴィヒの剣に、その頬はまたも切り裂かれていた。

 

 彼は頬に、いま一つの傷を斜めにつくってしまった。これでゴーマに十字の頬傷がついてしまった。

 だがルートヴィヒの反撃もここまでだった。


「ルートヴィヒ。よくも」


 兄弟子を傷つけられ、ジマは激怒する。

 斬られてとっさに身を守れなくなっているゴーマをかばうかのように、そのまえに立ってルートヴィヒに攻撃を仕掛ける。おかげでゴーマにルートヴィヒはとどめをさせない。

                    

 ジマに身を守られていたゴーマも、その矢先に体勢を立て直す。

 

 斬られた頬の傷は深く、そこから血が流れ出ているが、傷自体はたいしたことはない。


 ふたたび攻勢に出る。またも斬られたことで、怒りの形相をあらわしながら。

                  

「てめえ、くそがああ」

                   

 ゴーマはすでに怒りではらわたが煮えくり返っていた。

 怒りの奔流に任せるままに、疲れを忘れて剣を遮二無二振ってくる。

 それにジマの攻撃も合わさり、ルートヴィヒはその場に踏みとどまれなくなった。またも後退をはじめる。

                   

 もうすこし後退すれば、ルートヴィヒから見れば右へ、弟子二人からみれば左へ曲がれる角にたどり着く。曲がらなければ、ルートヴィヒの真うしろには壁が立ちはだかることになる。  

                    

 もうこれ以上、まっすぐに後退はできない。


 ルートヴィヒはその曲がり角までやってくると、思った。


 仕方ない。逃げ場を求めるなら、右へ曲がるしかない。


 彼は角を曲がった。角を曲がったさきには一本の通路が伸びており、そこにルートヴィヒは身を入れた。

                    

 そのときである。その通路の右の壁の中央に一つだけある両開きの扉が閉まる光景が、ルートヴィヒの目に入ったのは。ほどなくして、聞き覚えのある哄笑も響いてくる。

                  

「どこに行ったんだ、ミゲール。俺に敵わんと思い知って、ついに逃げ出したわけか?」

 

 ルートヴィヒの入り込んだ通路の先端には左に折れる曲がり角があり、その付近の壁に影が伸びていた。

 乾いた靴音も聞こえてくる。

 やがてその曲がり角から、師が姿をあらわした。

 さきほどミゲールに吹っ飛ばされながらも、師は怪我一つなく起き上がっていた。その後は悠然と歩いて、ミゲールを追ってきたのだった。

                    

 そんな。ルートヴィヒは愕然とする。剣を交える手を休めることなく。

 一瞬で状況を把握した。

 

 これは、隊長が師に敗れたということか。

 それで隊長は逃げ込んだのだ。おそらくは、いま閉まった扉のなかに。

                   

「おう、ゴーマとジマ。おまえたち二人も、ルートヴィヒを追いつめているようだな」


 師は弟子たちの戦いに気づき、そう声をかける。同時に、二人の弟子が傷ついていることにも目を止めた。

             

「どうした? おまえたち。その傷は。ルートヴィヒに不覚をとってやられたか?」


「ええ、まあ」


 戦いながらもゴーマはうなずき、ジマも答える。

                     

「ほかに俺は、雑魚にも多少の傷をつけられちまいました」

                

 そうか。師は答えると、その後は歩を進めて両開きの扉のまえにまで来る。

 扉の把手に手を掛け、開けようとするが開かない。


 どうやら、なかから鍵が掛けられているらしい。

 

 奴を追ってなかに入ることは、いったんはお預けとするか。


 吐息をついて考えを変え、師はその場に佇んで二人の弟子に命じる。

                 

「とりあえず、いまはさきにルートヴィヒとおまえたちとの戦いを終わらせることにしよう。ゴーマとジマ。おまえたちは、ルートヴィヒを俺の目のまえまで追い込め。

 俺としては扉のまえを離れて、自分からルートヴィヒに近づく気はないんでな」


 師は軽く笑んで、その理由を話す。


「もしそんなことをすれば、俺が扉を離れた隙をミゲールに突かれかねん。奴が中から出てきて、逃げられてしまうかもしれん。むざむざと奴に逃げる好機をくれてやる必要もなかろう?」

                    

「わかりました」


 ゴーマが返答すると、弟子二人は攻撃の手を休めずルートヴィヒを追い込んでいく。ルートヴィヒとしては二人にやられないために角を曲がって以後は後退し、師の方へ近づかざるを得なかった。

                 

「よし」

                     

 師は唇に笑みを刻む。まもなくルートヴィヒが、間合いのなかへ入ってくる。それを確認すると、師は剣を縦に一閃させる。

 

 ルートヴィヒは冷たい汗をかき、息を止めた。その動きは見えていたが、弟子二人を相手にしていることで躱す余裕はない。師の剣は、ルートヴィヒの肩のうえに降り落とされそうになる。あわやというその刹那、ぴたりと師の剣はルートヴィヒの肩すれすれで止まっていた。


「剣を引け、ルートヴィヒ。さもなくば、痛い目を見てもらうぞ。殺しはしないまでも、動きを止めるためにな」

                   

 師は恫喝をする。ルートヴィヒはなにも云わず、斬られかけたことでその場に凍りついていた。

 二人の弟子も、ルートヴィヒが動かないことで応戦する必要がなくなった。すでに攻撃をやめて状況を注視している。

 師はルートヴィヒが戦うのを大人しくやめるよう、さらに説く。

                  

「わかっていると思うが、すでに破れたぞ。俺たちを殺すために、おまえが案じた策とやらは。おまえは味方と合流を果たし、俺たちを仕留めるつもりが仕損じた。逆に俺たちの合流の方をこそ、許してしまった。

 おまえとしては避けたい事態であったろうから不本意だろうがな。俺たち三人がそろい、それに対しておまえ一人となる状況が形作られてしまう結果になるということなどは」


 ふん、と師は鼻を鳴らす。


「しかしそうなった以上、いまこの瞬間おまえには味方もいない。

 そちらの戦いの様子は聞き耳を立てていたので、俺も知っている。雑魚の傭兵どもは、すでに全滅したのだろう? 

 その隊長のミゲールにしても、いまや俺に敵わず逃げ出した。俺のそばにある扉の向こうに閉じこもったという体たらくだ。

 いまおまえは一人きりだ。この状況では、もはやおまえに勝ち目はあるまい。ここはもう潔く、俺たちを殺すことなどあきらめた方がいいぞ」


 くっ、とルートヴィヒは眉間を寄せる。いまや三対一。よもやこんな事態に陥ろうとは。この三人が合流する事態は是が非でも避けたかった。

                    

 弟子二人にも手こずっていて師までくわわったとなると、もうだめだ。隊長も無事かどうか知らないが、とりあえずこの場にはいない。両開きの扉の向こうから出てくる気配も感じない。その援護は到底期待できそうにない。

 

 もしこのまま戦いを続けるなら、俺一人でこいつら三人を同時に相手にしなくてはならない。これではこちらに勝ち目などもちろんあろうはずもない。

 

 どうやら俺は敗れたようだ。


 ルートヴィヒは神妙な表情で両目をつぶると、がくりと両肩を落とした。


勝負に決着はついても、まだ話は続きます。


求めてやまない力を、ルートヴィヒが得られるか否か。

バッドエンドか、そうでないのかを、お見届けいただけると嬉しく存じます。

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