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ジマと傭兵たちの勝負は激烈を極めた。

 くらえぇ。ジマは叫んだ。

 傭兵の一人の喉を剣で串刺しにする。ざまあみやがれ。邪悪な笑みとともに、ジマは剣を引き抜く。

 その犠牲者となった兵は、ごぼりと口から血を吐いて力尽きる。

 目がぐるりとうえを向き、床に前のめりに倒れ込む。傭兵たちは騒然となる。その動きも止まる。

 傭兵たちは立ちすくんだ。全員がおびえた目をジマに向け、口だけを動かす。

                

「つええ。こいつ」

                    

「あいつより、べつの相手を選んだ方がよかったんじゃねえか?」


「どうせ戦うなら、もっと弱い相手の方が楽だもんな」


「とはいえ、隊長が相手をしている初代隊長は無理だろ。俺らじゃ敵わねえから、隊長が相手してるんだしよ」

                  

「それで、俺らは弟子どもの相手に回されたんだしな」

                  

「けど、どうせ弟子どもの相手をするんならよお。やっぱあの新参者が戦っている方を選んでりゃ、まだましだったかもしれねえな」


「どっちでも同じだ」


 副隊長は一喝する。愚痴り、動きを止めた傭兵たちにいらだって。


「その強さは、そう変わらん。新参者が戦っている奴だろうが。こちらが相手をしている方だろうがな。そう聞いたろうが。奴らの元仲間の新参から、今回の策を実施するにあたって」


 ルートヴィヒによって、彼らは二人の弟子の強さのほどを教えられていた。今回の策を説明されるときに。


「それで連中を挟撃する際、どちらを襲おうが俺らの好きにしてかまわないってことになっていただろうが。その強さに変わりがない以上は、どっちと対しても相手をした奴を俺らが殺す苦労が変わらんこともあって。

 だから取り決めもしたんだ。挟撃の際、俺らはとにかくあいつら死刑執行人の弟子のうちのどちらかと戦うことに徹する。残りの一人は、新参が引き受けるってことに。

 だったらどちらを襲っても、その結果は変わりなかったはず。

 すこし味方がやられたといって、いまさらぐだぐだ云ってんじゃねえ」


 副隊長は、手下たちを睨めまわした。


「いいか、おまえたち。いまは愚痴るより、敵を殺すことに集中しろ。事が終われば、おまえたちはたんまりと報酬をもらえるんだ。

 その金でたっぷりと酒を飲んで、いいものを喰らい、女も抱け。好きなものだって、おおいに買え。馬、剣、鎧。ほかにも、なんであれな。事が終われば、こんなにもお楽しみがおまえたちの身のうえに待っているんだぞ。そのことを忘れるな」


 おおお。欲の皮を突っ張らせ、傭兵たちは興奮した。

 報酬をちらつかされて、やる気がみなぎってきたようだ。副隊長はにんまりとする。副隊長の地位に長くいたことで、手下たちの扱いはこっちも心得ている。


「盛りあがったようだな。その調子だ。いいぞ、おまえら。奴らにゃ、こっちの仲間も相当に殺されているんだ。その勢いに乗って、仲間の仇も討ってやれ」

                 

 副隊長は叫び、兵をより煽動した。単純な兵もあっさりと乗る。兵の一人が叫ぶ。


「そうだ。ダチの仇だって討つんだ。奴らをぶっ殺してやる。その手始めに、目のまえのこいつを血祭りにあげてやろうぜ」


 おう、と口々に兵たちは答える。ジマへと攻撃もくわえてくる。


「こいつら、勢いづきやがって」


 ジマは、そう云い捨てる。


 すでにこちらは、ひどく消耗している。肩で息を切らせてしまうほどに。

 この状況で傭兵の相手をするのは、正直きつい。だが傭兵たちは迫ってくる。

 相手をしなけりゃ、やられちまう。

 そろそろ限界に近いってのはわかってる。けど死にたくなければ相手をするしかない。くそお。


 毒づいて、なんとか傭兵たちの攻撃をさばく。


 そのうちに、鼻の大きい傭兵がまえへ出てきた。片手に持った剣で、ジマを貫こうと試みる。

 瞬時に、傭兵の突き出した腕の外側へジマは身を躍らせる。

 やや出遅れたために、いままで敵の攻撃をよけ続けてきたジマの腕にその突きがかすった。


 雑魚の攻撃を、こうして身にかすらせちまうだなんてみっともねえ。多数を相手にしてきて、さすがに疲れて動きが鈍くなっていたせいなんだろうが。

                     

 くう。ジマは内心で唸ったが、腕に傷をつくりながらもなんとか攻撃をかわす。だがそれだけでは済ましもしない。

 まえに突き出されたその傭兵の腕に、片肘を勢いよく振りおろす。

 骨が砕ける音が聞こえた。鼻の大きい傭兵は苦痛で、無様な悲鳴を叫ぶ。しりもちをついて倒れ込んでから、床を転がりもする。

 

 ジマはとどめを刺そうとしたが、ほかの傭兵たちによって妨げられた。

 傭兵たちが仲間をかばおうと、攻勢に出てきたのだ。骨を折られた鼻の大きい傭兵は、苦痛のために戦えない。戦線を離脱したまま、痛みをこらえながら床にうずくまっている。

 結局ジマはその傭兵にとどめをさせない。ほかの傭兵の対処に必死に追われてしまった。


 ジマと傭兵たちの勝負は激烈を極めた。

                     

 はた目には、その勝負はまさに互角。


 ジマは着実に傭兵たちを倒して、その数を減らしている。その反面、ジマ自身も傭兵たちの手で戦いのさなかにつくられた細かい傷を躰にいくつか負っていた。

                     

 出血と疲れから、消耗の度合いもジマは激しくなってきている。

 互いがこの勝負に多大な犠牲を払っており、そう簡単に傾きそうもなかった。

 ジマと傭兵たち、そのどちらにも勝利の天秤は。

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