表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/117

隊長ミゲールと師ベルモンの勝負は、白熱する。

「それがミゲール。おまえが誰も連れず、一人で俺と対している理由か。なるほど。よくわかった」

         

 師は鼻を軽く鳴らす。

                     

「本気でこちらに勝つために、ルートヴィヒの奴がこざかしくも策したというわけか」


 ベルモンが舌打ちすると、ミゲールは首を縦に振る。


「いま云った通りに事を運んでさえおけば、三つに分かれた味方はすべて自ら相対する敵と有利に、もしくは対等には戦える。そのうちにこちらの誰かが自分の相対する敵を倒し、そちらを滅す流れをつくれると新参は読んだようだ。

 事実、弟子一人なら新参は一対一で必ず勝てるという。ならこの策を用いれば、こちらが勝つ可能性は高いと新参は考えた。奴の策を聞いた俺も、また同じく。それで許可を与えて、奴の策を実行に移したというわけです」

                     

 ミゲールは冷ややかに目に霜を降ろす。


「その策に乗り、手下どもの仇はしっかり討たせてもらいますよ」


「おまえごときが、仇を討つだと? 本当に思っているのか? おまえは俺に勝てると?」


 ええ、とミゲールは答えた。


「いけしゃあしゃあと、よくも云う」


 師は不機嫌そうに低く唸る。


 まったく、たまらないぜ。

 俺に敵わぬ雑魚の分際で、ルートヴィヒの奴め。

 分際をわきまえず、俺を殺せると思ってこざかしい策などたてやがって。

 ミゲール、おまえも俺を殺せるなどとうぬぼれやがって。

 ひどくなめられているよなあ。俺は、こいつらに。まじでなめられてるぜ。くそが。まったくてめえらにゃ、むかついてならないぜ。

 

 師の頭のなかで、怒りがまたしても溶岩のように煮えたぎる。

 ぎりっと歯ぎしりをすると、彼のこめかみの血管は切れそうなくらいに浮き彫りになった。元々が気の長い男などではないだけに、あっという間に煮えたぎる溶岩を頭上から噴火させた。

                    

「まったく、俺をなめきりやがって。できるなら、やってみるがいい」


 激情に駆り立てられ、師は吠えた。その直後、一気に自らの剣が相手に届く間合いに踏み込んだ。


 にらみ合いは終わった。

                     

 憤怒の形相をあらわにし、師はミゲールに押し迫る。両手で剣を振りかぶり、ミゲールの頭めがけて強烈な斬撃をお見舞いする。

                     

 相手が常人なら、その一撃で柘榴のように頭を割られていただろう。だがそうはならなかった。

 危なげなくミゲールは自らの剣で、その斬撃を受け止める。そのまま師の剣を巻き込み、はじきとばそうとする。

                     

 そうと察し、とっさに師は剣を引く。その動作につけこんで、ミゲールは瞬時に突きを放つ。

 師は急ぎ、剣でその攻撃をはじく。

 

 直後、彼らはくり返す。二撃、三撃、剣での打ち合いを。

                     

 最後に強打を互いの剣に打ち込むと、師は仕切りなおそうとまたも後方に跳躍して離れる。ミゲールも呼吸をあわせてうしろに飛ぶ。


「おまえ、本当に腕をあげたな。俺とここまでやりあえるとは」


「戦場で鍛えあげましたからね」


 ミゲールは微笑する。


 とはいえ内心、懸念がないわけでもない。腕を鍛えあげ、自分が強くなったという自負はある。

 だがその一方で、未だにベルモンは変わらず強い。戦場を去って久しいというのに。

 それどころか、今日は奴の調子がいいのか。それともいまになって往年の戦場の勘を取り戻したのだろうか。奴の腕がなんとなく上回っている気がする。奴の家で見た、その弟子との訓練の際の動きと比べてみても。

                     

 剣を実際に交えてみて、そのことを感じた。


 もちろん強くなったことで、いまのところ自分も対等には戦えてはいる。やはり自分の見込みどおりに。

 こいつの家を訪れた帰り、その弟子との訓練を見たことで予想してもいたが。こいつと戦えば、接戦になるとも。いまのところその通りになっているが、相手がこうまで強いと逆に敗れる可能性も零でない以上、眼前の男がひどく恐ろしい。たとえ勝つ自信が、こちらにまだあっても。

                     

 ミゲールの背筋に冷たいものが走る。


 しかしながらこちらとしてもいまさら、こいつとの勝負から手を引く気などはすでにない。逆に殺されてしまう危険があるかもしれんがな。それでもこのまま戦うまでだ。

                     

 やられぬように気を引き締めろ。こいつに勝つんだ。


 ミゲールは鋭い目つきで師をにらみつける。師は高笑いをする。


「おまえがこの俺と対等に戦える。おまえ自身とルートヴィヒの、その見立てはどうやら正しかったというわけだ。すくなくとも、いまのところ対等に戦えている以上は。

 だがそれでも、結局のところおまえとの戦いで勝つのはこの俺だ。

 いましっかりと教えてやる。

 所詮、おまえは俺には敵わないのだということをな」

                  

 師は猛って、ふたたび斬りこんでいく。

 ミゲールも床を強く蹴った。前方へ踏み込んでいきながら、こうも大きく叫ぶ。


「俺も自ら望んで、あんたの相手をすることを選んだんだ。

 自ら戦いを挑んで負ければ、恥さらしなだけだ。そんな無様をさらす真似などはしない」

                   

 彼らは互いに駆け寄ると、ふたたび剣戟に興じた。

                   

作者の創作意欲向上のために、ブックマーク、ポイント評価にご協力いただけると助かります。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作品、ダークワールドをお読みいただき、誠にうれしく思います。もし読んで、この作品を評価できると思われた方は次の、勝手にランキング、をクリックしてご投票お願いいたします。 小説家になろう 勝手にランキング 投票によって評価されることで、作者の創作への励みになります。 もちろん、ブックマーク、ポイントをつけていただけますと、なおさらありがたく存じます。ブックマーク、ポイント、ご投票、そのいずれかをして頂いた方々には、お礼申し上げます。とても感謝いたします。今後もよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ