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師ベルモンと隊長ミゲールは出会う。ミゲールは、師に再度の説得を試みる。

 その一方で西の通路では、師ベルモンと隊長ミゲールが対面を果たしていた。

 

まっすぐに伸びる西の通路のさき。その突き当りには壁がある。右へ行けば、通路が続く直角の曲がり角にもなっている。その壁に背を支えられ、隊長ミゲールは立っていた。


 師もその姿を、目にとらえていた。表扉近くから進んで曲がり角に至り、西の通路へ出てすぐに。

 ミゲールもやってきた者の姿をその目に止める。

                   

「グロー隊長?」


 そうミゲールが確認したのは、ベルモンが覆面をつけていて顔がわからなかったからだ。

 一方でベルモンとしても、その確認に応じる気だった。

 

いまはことさらに、その正体をミゲールに隠す必要もない。どうせ、もうむこうはこちらの正体をわかっているだろうしな。

 どのみち、こいつらは全滅させるんだ。こちらの正体があきらかになったところで、それを誰にも告げることはできないんだ。正体を明かしたとしても、云わなかったも同然という状況になるだけだ。困ることはなにもない。

堂々と、ベルモンは正体を打ち明けた。

                    

「そうだ。おまえの挑発に乗って、わざわざ出向いてやったぞ。ありがたく思え」


 そのままベルモンはゆっくりと隊長の方へ歩んでいく。

 自身の左の壁にいくつかちいさな鎧戸が設けられているのと、点々とした灯火以外にはなにもない、殺風景な通路をまっすぐに進んで。


「なぜ覆面を?」


 ミゲールはベルモンの覆面姿を訝しく思い、問いかける。


「おまえに、その理由をいちいち答える必要などない」


 説明が面倒な師は、答えることを拒絶した。


「もっともだ。たしかにないものな。なにも俺に、その理由を教える必要なんかは」


 ミゲールは苦笑する。訝しく思うが、ふたたび訊いたとしても無駄だろう。尋ねて返答を拒まれたのだ。繰り返し聞いたところで、これ以上は満足な答えは返ってこないだろうしな。

 

 それにその理由を尋ねたのは、なんのことはない。覆面が目についたから、尋ねたというだけだ。実際のところは、覆面をつけている理由などどうでもいい。どうせ、くだらない理由だろう。

 もはや、ふたたび訊く気すら失せた。

 

 ともあれ、その声と横柄な態度。それに覆面から見える目の形からして、あらわれたのはベルモン本人に間違いない。それが、わかりさえすればいい。

                    

 ミゲールは気を取り直すと、壁にもたれかかっていた背を引き離した。初代隊長ベルモンの方へ、ゆっくりと進んでいく。

 

 そのさなか、東の通路で戦いがはじまった。静まり返っている右の通路とは対照的な左の通路の騒ぎが耳に入り、そのことが知れた。

                    

 はじまったか。


 彼らは共通の思いを抱いたが、口に出してはなにも云わなかった。やがて彼らは、一閃すれば相手に剣が届く間合いの一歩手前まで来た。そこに至った時点で、ミゲールが歩を止める。

 それにあわせて、ベルモンも足を止めた。ミゲールの挙動を不審に思い、師は口を開いて問いかけもする。


「ミゲール。おまえは俺を殺すために、ここまでやって来たのだろう?」


「ほう、やはり知っていましたか」


「おまえの部下の口を割らしたんでな」


 師は答えると、ふたたび尋ねる。


「なのに、どうした? その殺したい相手が目のまえにいるというのに、なぜ足を止める?」

                    

「あと一歩踏み込めば、お互い自らの剣が相手に届く間合いに入ります。そうなれば否応なく戦うことになるでしょうが、そのまえにあなたと落ち着いて話をしておきたくてね。聞いておきたいこともありますし」

                 

 丁重な口ぶりでミゲールは語る。ベルモンは、かつての上官ではある。とはいえ現在では傭兵隊を引退し、上官ではないのだから敬意を払う必要はない。

 ましてやベルモンの奴はこちらの手下を今回、数多く殺しもしたんだ。そんな相手に、礼儀正しく接してやらなければならない道理もない。

 

 が、かつては世話になった過去があるのはたしかだ。

 その嗜虐性からベルモンにはいわれのない暴力や嫌がらせも過去に受けたが、世話になったことで多少の恩もなくはない。その点に思いを致し、配慮していまは敬語を使って語ってやろう。

 ミゲールはそう考えていた。

                     

「云ってみろ」


 ベルモンのうながしに従い、ミゲールは語る。


「以前もおうかがいしましたが、本当に私の配下になる気はありませんか? あなたが私に従ってくれさえすれば、我々が戦う理由はなくなります。戦いを避けることができるのですが」


「聞いておきたいということは、その件か? おまえのもとに降る意思がないかを、この俺に再度尋ねたかったということか? 

 落ち着いて話したいと云ったのも、その説得をしたかったからということか?」


「そうです。出来ることなら、して欲しいものですから。私としては、その選択をあなたに」


「ぬかせ。誰が成り下がるか。もと部下である、貴様の手下なんぞに」


「そう頑なにならずに。いまからでも遅くはありません。翻意してくれませんか? 

 是非とも、なっていただきたいものですが。あなたには私の部下に。あなたの手下である弟子ともども。

 あなたたちのせいで、私は部下たちを大量に失いました。

 それは痛手ですが、その損失を補ってあまりありますからね。

 私の部下を殲滅できるほどの、強い味方を得られれば。こちらとしては多くの部下を失った採算はとれますので。

 もちろん応じてくれれば、目をつぶってさしあげますよ。私の部下を殺したことについては」


 ミゲールがそう云った途端、みるみるうちに変わっていった。ベルモンの表情が、怒りに染まって。


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