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ジマと、副隊長率いる傭兵たちの戦いは激化する。副隊長はルートヴィヒの策に沿って、敵を仕留めようと。

 ゴーマの背後よりすこし離れた場所では、ジマが奮闘していた。

                   

ジマと傭兵たちとの戦いは激化していた。傭兵たちは矢継ぎ早に、ジマに攻撃を繰り出してくる。いまも傭兵の一人が渾身の力を込め、ジマの頭を砕かんとして戦棍で殴りつけてきた。

 

 ジマはふっと嗤う。そんな攻撃、避けるなんてわけない。あっさりそれを避けると、ジマはその傭兵を殺そうと剣で突こうとする。その刹那、別方向から違う傭兵が繰り出した斬撃が落ちてくる。眉間をしかめてジマはそれを避けた。

 しかし休む間を与えられない。間断なく傭兵たちは攻撃をジマにくわえてくる。素早い動きでジマは次々と避けたが、ついに反撃のときを得た。

 傭兵の一人が戦棍を振り回してきたが、その攻撃を避けたあとにできた相手の隙を見逃さない。

 すかさず、その傭兵を斬りすてる。その首は宙を飛んだ。鮮血を噴きあげながら、その体躯は床に倒れ込む。戦棍もその手から離れ、音を立てて床に落ちる。

                    

 うおお。周囲の傭兵たちが驚愕でざわめく。その攻撃が、あまりに素早かったことで。


「次の獲物は誰だ?」

                   

 ジマが、ぎらついた目で周囲をにらみつける。その気迫に押され、周囲の傭兵たちは攻撃するのも忘れて後ずさりする。兵たちはジマに怯えていた。その状況を目にし、副隊長は手下を叱咤する。

                    

「怯えず戦え、馬鹿野郎ども。そいつを殺れば、褒美をやるぞ。あとでたっぷりとな」

                

 副隊長が士気を上げようとして叫んだ。その効果は絶大だった。褒美と聞いた途端、怯えて青ざめていた傭兵たちの顔色に生気が現金にもよみがえる。

                  

「本当ですか? 副隊長」

                  

 傭兵の一人が確認する。


「ああ、約束してやる。残念ながら、我々はこの地で仲間を大勢失いはした。しかしそのおかげというべきか、人数が減ったぶん生き残った連中にはたっぷりとくれてやれるしな。この町で略奪して得た、分捕り品の分け前を」


 さらに士気をあげるために、副隊長はそう云った。おおお。傭兵たちは喜色満面となった。


「だがそれはこの教会で、死刑執行人どもを殺したあとでのことだ」


 副隊長は熱意を込めた演説をぶった。

                 

「いいか。敵を孤立させたいま、とにかく奴らを一人でも殺せば我々の勝ちだ。すでに、おまえたちにも説明してあるんだ。わかっているな、みな。

 孤立させた敵を倒すため、こちらの手勢も三つにわかれはした。が、味方は合流していく手はずにもなっている。それぞれが、相手をしている敵を倒すたびにな。

 その手はずは、わが隊の全員に適用される。ここでともに戦う俺とおまえら。一人で戦う、新参のルートヴィヒ。それと我らが隊長。この三者、みんなにだ。そのことに変わりはない。

 この三者のうちのいずれかが敵を一人殺せば、それ以後はまだ戦っている味方に合流する。その手助けをするためにだ。

 そのときには当然、来援を得た味方の力は増強される。応援が来たことで、そのぶんだけ。

 むろんのこと来援を得た味方は、その相対する敵よりも勝負の形勢も有利になる。結果、その相対する敵を葬ることができるだろう。

 さらにまだ敵がいるなら、これを繰り返す。

 これをやり遂げれば、最後には俺たちが勝ちになるってわけだ」


 このとき、はっと気づいたような表情をジマとゴーマが見せる。演説は、なおも続く。


「まして、俺率いるおまえたち傭兵どもの相手は一人。逆にこちらは一人やられちまったとはいえ、この俺を含めてまだ八人もいる。

 おまえたちよりも強い、この俺もついているんだ。相手も手練れかもしれんが、一斉にかかれば充分に勝ち目はあるぞ。

 手段も問わん。汚い手でもなんでも使って、とにかく始末しろ。こいつらは、俺らの仲間を多く殺している。その敵討ちもしてやるんだ」


 副隊長の演説は終わった。おう、と傭兵たちがはつらつと声をあげる。その一方で、得心した顔をしたジマがつぶやく。


「これがルートヴィヒの策ってわけか」

                    

「そういう手で、俺らを殺そうってつもりかよ」


 ゴーマもつぶやく。

 

 そうだよ、と語気強く叫んでルートヴィヒが斬りこんでくる。その斬撃をかわし、ゴーマはルートヴィヒと剣さばきに興じる。

                     

 ジマにも傭兵たちが迫ってくる。


 俺も行くぞ。叫んで副隊長も斬りこむ。強烈な副隊長の斬撃がジマを襲う。

 その攻撃を、自らの剣でジマはとっさにふせぐ。金属音が鳴り、ジマの腕がしびれる。

                     

 ジマは、くっと唸る。なかなかに手強い。さすがは副隊長という地位にいる男だけのことはある。


 その副隊長は、次々と攻撃を繰り出してくる。ジマは剣で受けるだけでなく躰もうまく動かして避けるが、その攻撃だけにかまっていられない。

 他方からもやって来る、傭兵の動向にも気を配る。

 油断してたら、このさなかに隙を突かれて殺されかねない。案の定、一人の傭兵が攻撃を仕掛けてきた。

                     

 くらえ、と叫んでちいさな袋を投げつけてくる。

 

 ぐうう、とジマはうめく。目つぶしだった。


 もはやどの傭兵たちも、副隊長の指示を忠実に聞き入れて手段を問う気はなかった。

 しめた、とばかりに傭兵たちは襲いかかってくる。


 ジマは目つぶしが効いたことで視界が悪くなったが、それでも薄目を開けてなんとか攻撃を避ける。

 だが、こうも敵に連続攻撃をされては消耗が激しい。次第にジマの疲労の度合いは増していく。

                     

 くそお。雑魚どもが。ジマは内心で毒づく。調子に乗って、一緒になって襲いかかってきやがって。それも必死に。

 褒美欲しさでのことか。それとも敵討ちのためか。あるいはその両方のためか。

 

 なんであれ、いくら相手が雑魚とはいえよ。

 必死に複数が同時にかかってくるうえ、そのなかにそこそこ手練れの副隊長まで混じっているとなると正直きつい。そう簡単には片づけられない。これは下手をするとやられるかも。険しい顔をジマは見せる。

 ちらりと、ジマはゴーマの様子をうかがう。

 

 どうやら、ルートヴィヒと真剣に戦っているようだ。師はどうだろう。

 ジマは思いを馳せたが、状況は師とてそう変わらないはず。

 師の向かったさきには、この傭兵隊の隊長がいると云っていた。実際、その隊長はあちらがわの通路にいたようで師を挑発し、呼び寄せてもいた。きっといまごろ、その隊長と師は戦っていることだろう。

                     

 しかもあの隊長は、かなりの手練れのようだ。あの隊長だって、師が傭兵だったときの腕を知っているはず。にもかかわらず、その腕より上だと豪語していやがったしな。

 俺たちの家に訪れたときにも、そんなことをほざいてもいたし。

                     

 あまつさえ強いと知るはずの師をわざわざ自分のもとへここでこうして呼び寄せて、その相手を一人でしようというのなら、腕に相当な自信があるんだろう。

                     

 師はその隊長を自分より格下と云っていたが、どうだろう? 


 ジマは自分が不利な窮地に立たされていることで、悪い方向へ考えが進み、ここにきてある可能性に思い至った。一抹の不安がジマの頭をよぎる。

                     

 隊長がそこまでの自信が持てるほどの腕を持つというなら、師との勝負もそう簡単には決着がつかないかもしれない。それでは師が軽くあの隊長を倒して、こちらへ来援に来てくれるということも期待できそうにないのでは?

 ジマは打開策を講じようとする。ではどうするか? 

                     

 そう思ったとき、敵の隙をジマは見つける。見逃さず、突きを入れてその喉を貫く。剣を抜いたときには、敵は死んでいた。血を噴出させて床に倒れる。

 その光景を目にして、副隊長は手下たちに注意する。


「おいおい。てめえら。云っとくが、気をつけろよ。さきに三つにわかれたこちらの味方のどれか一つでも奴らにやられちまえば、こちらもまずいんだ。そうすっと、残った味方が敵に片づけられちまう破目に陥るからよ。逆に、こちらの策を死刑執行人どもに使われてな。

 あげく、俺らは全滅するってことにもなりかえねえ。

 こっちが奴らを、全滅させたいってえのによ。逆にこっちがやられちゃ、元も子もねえぞ。気をつけろよ」


                    

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