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死刑執行人たちは、傭兵隊との戦いに身を投じる意志を固める。

「ルートヴィヒの野郎が、裏切ったのはご存知でしたよね。この際、いっそ殺しちまいますか? 奴に俺たちを裏切った報いを、きっちりくれてやるためにも」

               

 ゴーマが提案すると、すでにそのそばに寄ってきていたジマも無言でうなずく。

 

 その二人を見ながら、師はふっと鼻で嗤う。

               

「おまえらはもとより、ルートヴィヒを敵視して殺意すら抱いているから奴を殺したいんだろうがな」


 眉間にしわを寄せると、師は毅然とゴーマの提案をはねのけた。


「だが、だめだ。あいつは殺すな。俺はいまのところ、おまえたち弟子を誰一人であろうと失う気は一切ない。ルートヴィヒを含めてだ。おまえたち弟子は、まだ俺の役に立つんでな。

 だからあいつを殺したり、利用できなくなるくらい傷つけることはこれまで同様に禁ずる。そんな真似をすれば、俺から相応の罰を受けると思え」


「じゃー、あいつはどうする気なんです?」


 ジマが問い返すと、師は答える。

                  

「弟子を失う気はないと云ったろう? あいつは五体満足のまま、生け捕りにして連れ戻す。これまであいつが抜けようとしたとき、常にそうしてきたろう? 今回もそうするんだ」

                  

 師はじろっと二人を睨みつけた。


「あいつには、今後も俺の役に立ってもらうつもりなんだ。

 まだ利用価値がある以上、下手に傷つけて、使いものにならなくなっては困るんでな」


「でもあいつは俺らを裏切り、傭兵隊がわにつこうとして出て行ったんですよ。俺たちが傭兵隊を全滅させようとしたら、邪魔してくるに決まってますよ。そんな邪魔をさせないためにも、いっそ殺しちまった方が」


「だめだ。ルートヴィヒは見つけ出し、生け捕りにするんだ」

                 

 師は強く命じた。その意図を受けて、ルートヴィヒを殺したかった弟子たちはしょげ返る。その様子を意に介さず、師は軽く嘆息をつく。


「とはいえ裏切ると告げて、今回あいつは俺のもとから立ち去りやがったんだ。連れ戻せば、その罰はしっかりと与えねばならんが」


 ゴーマとジマは、その師の言葉に嬉しそうにうなずいた。裏切ったからには連れ戻すにしても、その後にはそれなりの処分をするべきだと彼らも考えていた。

 師は二人に指示をだす。


「そういうわけで、いまから町に出るぞ。

 とりあえず、俺たちもここで一旦わかれる。

 手わけして探した方が、ルートヴィヒも見つけやすかろう。そのほかの連中を皆殺しにするにしても、手わけしておこなった方が手早く済むだろうしな。

 

 ただわかれるまえに、おまえたちに忠告しておく。まずはルートヴィヒについての対応を云う。

 いいか。ルートヴィヒになめてかかるなよ。奴は随分と強くなった。おまえらは一人じゃ、もう太刀打ちできないだろう」


 そう師に断言されて、弟子二人は悔しそうな顔をする。だが事実なので反論できない。彼らが黙っているなか、一息ついてなおも師は語を重ねる。


「しかもおまえたちも知ってのとおり、ルートヴィヒの奴はこの俺たちをひどく恨んでいる。俺たちがこれまでにしてきた、奴への仕打ちのせいで殺意を抱くほどに。実際、奴は過去に幾度も俺たちを狙ってきたこともあるくらいだしな。

 だからあいつは、もしおまえらが一人でいるのを見つければ始末する好機と見て、ここぞとばかりに殺しにくるかもしれん。

 そうなれば、おまえらは一人では奴に敵わず殺されてしまうだろう。

 そうならぬよう、おまえらは常に必ず離れずに行動しろ。おまえたちを失う気も、俺にはないからな」


 はい、と弟子二人は返事をする。師は頭に右手をやって、ため息をつく。


「しかしやってくれるぜ、ルートヴィヒの奴も。こちらの敵に回るとは。

 ルートヴィヒは力をつけて強くなった。そのルートヴィヒが敵に回ったからには傭兵隊を全滅させるのは多少、骨が折れることになるかもしれんな。

 すくなくとも奴が敵に回っていない状況で、ただ単に傭兵隊を滅ぼすよりもな」


 かもしれませんね、とゴーマがつぶやくと、師はにやりとする。


「それでもルートヴィヒは、おまえたち二人が同時に相手をすれば敵わん。

 むろんこの俺にもな。おまえたちか俺のどちらかが相手をすれば、すぐに捕らえられよう。

 ミゲールを含めたあの傭兵隊にしても、俺たちが総出で対すれば潰すのはたやすい。

 だから結局は、こちらが傭兵隊に勝つことになるだろうがな」


 師はなおも云う。


「ルートヴィヒの奴は勝ち目があると思えばこそ、こちらを裏切ったのだろうが。そうでなくては、もとより裏切らんだろうしな。

 だが、いくら奴がむこうに味方しようとも無駄だ。奴一人が味方しようとも、傭兵隊がわよりも結局は戦力自体がこちらの方がうえだ。

 おまえたちという優れた弟子もいるだけでなく、なによりとてつもなく強いこの俺がいる以上はな。

 対峙すれば、勝ち目はこちらにこそ充分にある。

 奴らは所詮、こちらに比べればその力は格下。ルートヴィヒが一人、味方につこうが同じだ。たやすく葬れる。ルートヴィヒは、裏切ったことを後悔する結果になるだろうよ」


 敵を見くびり、くくく、と師は嗤った。弟子二人も敵をあなどり、ですねと追従して嗤う。

 その二人に向けて、なおも師は指示する。


「まあともあれ、おまえたちとしてはこれから町に出れば、なるべくならまずは専念しろ。雑魚の傭兵や住民どもを、一掃することに。

 そのさなかに、町でルートヴィヒとおまえたちが会うことも考えられるがな。二人が一緒にいる限りは負けることなどないだろうから、奴とは戦ってもいい。

 だがもしおまえたちがなんらかの事情で一人になってしまったときに出会ったなら、戦うのはやめておけ。奴にやられないためにもな」


 はい、とゴーマはつぶやき、ジマはうなずく。その後も師は言葉を止めない。


「ただおまえたち二人には、ミゲールについての対応も忠告しておく。ミゲールには気をつけろ。二人が組んでいたなら町を徘徊中に奴と出会っても大丈夫だとは思うが、一応な。

 奴は強さに、かなりの自信があるようだ。相当に強くなっているかもしれん。俺に偉そうな口を叩くくらいだからな。

 もちろん、もってのほかだぞ。もしなんらかの事情でおまえたちが離れ離れになり、一人でいた場合には奴と戦うなんぞは。奴が相当に強いなら、一人で対峙すればおまえたちはルートヴィヒと対峙した場合と同様にやられてしまう危険が高そうだからな。

 ただミゲールの奴は、教会にこもっているというからな。そこにさえ行かなければ、おまえたちが町を徘徊しているときに奴と会うことはないと思いはするが。

 しかしもし会ったのなら、一旦は退け。なるべくなら、二人でいた場合にでもだ。二人でも奴にやられてしまう恐れもなきにしもあらずだからな。念のためを考えて、奴と対峙するのはなるべく後回しにするんだ。

 できれば、もし奴と対峙するのであれば、ふたたび俺と合流してからにしろ。

 どうせ最後には、俺たちも合流する。

 ここで命じておくが、おまえたちも最終的には町の教会へ向かえ。

 こちらの最終的な目的はミゲールの殺害であり、それを達するためにもな。むろんこの俺もそうする。

 もちろんこれは奴がずっとそこにいるならばの話で、状況によっては今後の我々の行動は変わるかもしれんがな。

 ともあれ我々が再び合流し、俺がそばにいる状況で奴と対するならおまえたちも安全だ。そのときには、奴と対峙することは許す。おまえたちが危険なときには、俺が助けに入れる。奴も俺には敵わんだろうゆえ、そのときにはおまえたちが死ぬ危険はすくなくなるからな。

 しかし繰り返すが俺と再合流するまでは、奴はできる限り避けろ。いいな」


 はい。弟子たちは、それぞれ答えた。



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