第65話 開戦3日目
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開戦三日目の早朝、第4艦隊は帝国南部のインテル沖合
10kmに達していた。木造機帆船の第4小隊で艦隊外周を固
めて少しずつインテルの町に近づいていた。
第4艦隊は既に帝国の沿岸都市を3つ、灰燼と化して来
ている。昨日は沿岸部を堂々と遊弋して南下しており、
時折発砲を行って恣意行動を行った。
沿岸都市の破壊はこの都市は最後となる。あまり気分の
良くない戦闘から脱却できるとあって、若干警戒が緩んで
いるような気もしている。
艦隊司令のヤマトはそんな事を考えながら沿岸都市イン
テルへの砲撃位置に着くべく艦隊を指揮していた。
「2時の方角に10隻以上の所属不明艦を確認。」
唐突な報告が上がった。ヤマトは首から下げた双眼鏡を
目に当てる。
「帆船とガレー船の混成か?帆布に帝国の国旗が描かれて
いるな。一番近いのは小隊のフリゲートか。」
「鋼鉄船に見えますな。」
副長も双眼鏡を覗いて意見を口にする。
「いや、あれは総鉄鋼船じゃなくて板金張りした木造船だ
な。火矢対策だろう。強度的にはさほど変わらん。」
「しかし、まだ出てきますぞ?40隻近いのでは?
「そうだな。数は脅威だな。早めに数を減らした方が良さ
そうだ。」
その時、煙を上げて接近してくるガレー船を4隻ほど発
見した。奴隷の漕ぐ人力船であるガレー船に火がつけてあ
るのだ。ひどい事をするものだ。
「各艦、榴弾装填、照準自由。あの火炎船を近づけるな。」
しかし、流石に命令とはいえ、たぶん同胞があの燃え盛
る船に乗っていると考えると即座には動けなかった。
そうこうしているうちに、外周警護を担っていた第4小
隊の木製フリゲートの1隻に向かって、火炎船が体当たり
を仕掛けて行く。
フリゲートの手前200mくらいの位置でようやくムサシ
の副砲が火炎船を捉えた。
ドッゴーン!
たった一発の着弾で、火炎船は凄まじい轟音を発して爆
発四散した。爆発の衝撃は水面に放射円状の高波を作り出
し、至近のフリゲートは波に翻弄されると爆発の衝撃で折
れたのか、マストが軋みをあげて倒れて行く。
何という事をするんだ?これでは民族浄化じゃないか。
人族至上主義とはここまで歪んでいるのか?
亜人は血肉となる家畜以下の存在なのか。。。
「副長、艦長。後を任せる。徹底して敵船団を殲滅した後、
インテルを殲滅して、彼らの墓前に添えろ。私は観測飛
竜を駆って残りの火炎船を止めて来る。」
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帝国海軍 旗艦
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「やったか?馬鹿な奴らめ、砲火力だけがすべてでは無い
わ!火薬を満載した奴隷船の威力を思い知ったか!」
自他ともに認める生粋の人族至上主義者であり、帝都の
覚えめでたく海軍司令となった侯爵は自らが考えた作戦を
自画自賛していた。
「直撃は免れたようだがかなりの損傷だろう。残りのガレ
ー船を衝角突撃させて動きを止めさせろ!
白兵戦を警戒した敵船にそのまま大砲を打ちまくれ!
帝国にも優秀な大砲がある事を知らしめるのだ。亜人奴
隷など使い潰すのだ。」
「了解しました。右舷側大砲装填。敵船の行き足が止まっ
たら斉射開始!」
侯爵子飼いの子爵である副司令が艦長に命ずる。
こ、この方達はいったい。。。?
亜人は人族より劣ってはいるが、我ら人族に従って動く
分には力が強かったり、魔力が強かったり、観賞物にな
ったりとある程度有用な種族では無いか?正教会の教え
とてそう言っているはずだ。
獣人をみんな殺してしまったらガレー船は誰が漕ぐの
だ?人族の3倍の力を発揮するのに。。。
顔を合わせて間もない上官である貴族たちの作戦には
ついて行けない艦長であったが、この世界で平民出身の
艦長と貴族の身分差は絶対である。
疑問に思いつつも命令を復唱する。
「承知致しました。衝角突撃に成功したらガレー船ごと
一斉射撃にて撃沈を狙え!」
ヤマトは上空から火炎船の消火のため、氷魔術を唱えて
火炎船上にアイスウォールを生成して、アローレインによ
り豪雨のように水を降らせていた。
艦内に延焼したガレー船の消火には思ったよりも時間が
掛かったが、残りあと一隻はまだ距離が有るため。十分に
間に合うと感じて息を吐いた。
その時、ガーン、ガガーンと軽い砲撃の音が響き渡り、
音のした方を見ると、6隻ほどの帆船が青銅砲を斉射して
いた。
あんな射程の短い砲で何処を狙っているのかと思い、
視線を巡らせると、先ほどの攻撃で損傷したフリゲートの
両舷側にガレー船が突き刺さっており、そのガレー船ごと
砲撃を加えていた。
「あ、あの外道共~!!」
「我はアルテイシア神と使徒ラファエル様に願う!
全ての命あるものを永遠の氷檻へと捉えたまえ!
コキュートス!」
ヤマトがキレた。。。
1列縦隊で航行している敵船団を中心に半径500m程の
巨大な積層魔術陣が現れて、青白い円柱として立ち昇った。
円柱の中には細やかなダイヤモンドダストが舞い散り、
光を屈折、乱反射させながら徐々にその濃さを増して
行き、青白い魔術の光が四散する。そこには海水ごと凍り
付いた敵船団が漂っており、ダイヤモンドダストが気化し
てドライアイスの煙のように雲が漂っていた。
ヤマトは一撃の魔術で全魔力を枯渇させてしまい、飛竜
の背に蹲った。飛竜はそのまま騎首を巡らせてムサシへの
帰還の途に就いた。
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第4艦隊 旗艦ムサシ
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ヤマトが意識を取り戻したのは、指示通りに副官がすべ
てを終わらせてからだった。既にインテルは住民ごと壊滅
しており、氷に捕らわれた敵船団は氷が緩むたびに砲撃を
加えて海の藻屑となっていた。
「すまん。迷惑を掛けた。」
「いえ、我らの同胞です。せめて報いる事が手向けです。」
「攻撃を受けたフリゲートは?」
「既に竜骨までダメージを負っておりましたので、自沈さ
せました。死亡が68名、欠損者22名で残りは治癒済み
です。」
「そうか。。。」
「司令、これが戦争ですよ。気にするなとは言いませんが、
彼らの犠牲は無駄では無いと割り切りましょう。」
「そうだな。すまん気を遣わせた。」
「それから、ガレー船4隻と火炎船から救助した亜人を含
めて救助者624名です。隷属の首輪の解除法は総指揮所
から伝達が有りましたが、我らでは魔力の関係上無理で
す。司令にはもうひと働きお願いいたします。」
「了解だ!直ぐに掛かろう。魔力ポーションを多めに寄越
してくれ。」
「承知しました。」
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リスリド王宮 迎賓館
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ん?んん?よく寝てしまった。。。。
なんだろう?記憶が定かじゃない。
知らない天井。。。ってボケも出来ない。
「お目覚めですか?ラファエル様?」
アマネが耳元で囁いて来た。
「ずいぶんとお疲れでしたからね。」
キヨカが逆の耳元でささやく。
「えっと、これはどんな状況?」
「アマネとキヨカを愛でて頂く途中でございます。」
「あ、二人で押し付けないで?反応しちゃうじゃないか。」
「子種を満足行くまで頂くまではベッドから出しませんよ」
「だ、だから耳元でささやくと。。。。」
「お元気になられましたね。」
アマネさん。どこ握ってるんですか。。。。
「キョウコ様から伝言です。
本日は休養日ですのでベッドから出ないように。
もし、ベッドから出たら我々も前線に出ます。
だ、そうです。」
キョウコ。。。それを言われると逆らえないって。。。
「ち、な、み、に。。。我々に何を聞いても、もう愛しか
ささやきませんよ?」
「降参です。。。」
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東都ケルム 総指揮所
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「あら?は~い。よろしくね。」
唐突にキョウコが一人で会話を始めた。
「キヨカからよ。ラフィー様が気付かれたそうよ。
今日はベッドから出るのは諦めたみたい。」
「そう、良かったわ。」
大きくなったお腹をさすりながら、安堵の息を吐いて
マニエットが返事をする。
「まあ、代わりに切れて暴れる馬鹿が居るから、ラフィー
様にはゆっくりして貰いたいわね。」
ツクヨミがこめかみを押さえて言った。
「「暴れた馬鹿?」」
「ああ、たった今の報告よ。馬鹿なヤマト兄様が亜人差別
に切れて遺失魔法のコキュートスで帝国海軍を殲滅した
そうよ?ついでにインテルも住民ごと殲滅だって。。。」
「それは。。。ちょっと。。。頭が痛いわね。。」
「私はお腹が痛くなってきました。生まれちゃう!」
「「いやいや、それは流石に無いから。。。」」
二人でマニエットの冗談を窘める。
「まあ、かなり亜人奴隷の扱いが酷かったみたい。
今回の戦争の中ではちょっと被害も大きいわね。」
「まあ、ヤマト兄様には帰国までずっと、正座でもさせて
おけば良いわよ。過ぎたことを責めるのは疲れるだけだ
しね。」
「総司令のお言葉だって言っておくわ。」
「あ、そろそろウルス攻撃じゃない?」
マニエットが指摘する。
「カトリナ様が暴走しなければ良いけど。」
ツクヨミが疲れた顔で呟く。
「カトリナ様はああ見えて思慮深い方よ。そんな事は無い
でしょう。」
付き合いの長いキョウコが断言する。
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ウルス西方10km地点
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「さて、お嬢ちゃん達、準備はいいかい?」
バグリム獣王国の獣化部隊の指揮官を務める兎獣人族の
ギリアムがカトリナ達に声を掛ける。ギリアムはマリアム
とミリアムの兄だそうだ。
「私たちは飛竜で移動していますから、何時でも大丈夫で
すよ?」
「そうか、先ほど鷲人族を獣化させて空から偵察をさせた
のだが、傭兵部隊と帝国軍が1個師団、ウリエル国軍が
1個師団駐留していた。
たぶん、帝国の第二皇女ミスティールの直属師団だろ
う。厳しい戦いになるかもしれん。」
「あら?本来なら帝国は3個師団存在していたはずだから
少なすぎない?大丈夫?」
「おいおい。既に1個師団対3個師団に近い戦力差だぞ?
まして、傭兵なんてのは俺らを商品としてしか見ていな
いからな。そのくせ商品を大事にしないから意味わから
んがね。」
「流石に南方軍には亜人の戦奴部隊は配備されてないと聞
いていますが、ウルスには奴隷は多いのですか?」
「いや、基本的に上納金代わりにほとんどの獣人奴隷が
帝国に渡っているそうだ。ウルスで使役されているとし
ても王宮や上位貴族程度だろう。多くて2~300人じゃ
ないか?市場が無いから隷属の首輪もたぶん無いぞ?」
「それは重畳です。獣人族は家族や部族を大事にするのは
重々承知でお聞きしますが、いざとなった場合の優先度
は?」
「心配するな。こんな好機は数百年待ってももう無いだろ
う。まずはウリエル王国をこの世界の地図から消すこと
が最優先だ。
その上で可能な同胞の救助、労働力としての人族民の
確保だな。まあ、ここだけの話ウリエル王国は帝国ほど
獣人を排斥していないよ。
よく手入れすれば一生使える道具程度には大事にされ
ていると聞いた事が有る。」
「そうですか、ま、その辺は話半分の認識で聞いておきま
す。戦術は?前回同様獣人化して力押しですか?」
「まあ、基本はそうなんだが、まず郊外に駐留している帝
国師団と傭兵部隊を殲滅する。その内ウリエル軍も出て
来るだろう。出なきゃ出ないで順番に制圧すれば良いし
出て来るなら民間被害を抑えやすいだろう。」
「わかりました。我らは先陣を切って傭兵部隊を殲滅
しましょう。帝国師団はお任せします。」
「上位魔導師が7名も居れば可能なのか。。。わかった。」
「では、出立しましょ。。。?」
「汚らわしい獣人共に警告いたしますわ。
あまり、こそこそと生臭い匂いを吐き散らさないで
下さいます? 私は帝国の第二皇女ミスティール。
お前たちの生殺与奪の権利を持つ貴種よ。」
ウルスから高飛車な甲高い声が届いて来た。
獣化した獣人たちは人族の何倍も視力が良いため、
皇女の立つ防壁の上に視線をめぐらす。私たちはラフィー
様より頂いたオペラグラスを使って、その人物を捉えた。
かの皇女からは陽炎のように不気味なオーラが
立ち昇っており、莫大な魔力を感じさせる。
「あれは本当に人族なのか?」
「いえ、カトリナ様。あれはヴァンパイアロードですよ。
よく見てください。瞳が紅く染まっているでしょう?
あれは私に任せて頂けませんか?入れ替わったのか
バンパイア化したのか、どちらなのかわかりませんが
このままでは数百年の時間を掛けて吸血鬼の存在を薄れ
させてきた紅桜様の苦労が無に帰してしまいます。」
「わかったわ。皇女は朱希に任せるわ。残りの臣下は傭兵
部隊を殲滅しに行くわよ。」
「「「はっ!(はーい!)」」」
獣人たちも改めて獣化すると種族ごとに、帝国師団に
向けて疾走し始めた。
今回はあまり自重する必要性も無いので、遠慮なく傭兵
部隊に向けて、騎乗しているワイバーンにもブレスを吐か
せた。傭兵師団の弓矢程度では到達しない高度200mから
の遠距離攻撃だ。
同時に我々は銃器を使用して、指揮官や傭兵団長を狙撃
して指揮命令系統をずたずたに引き裂く。実は傭兵団の収
入のうち、戦争時の奴隷の売買が大きな比率を占めている
のだ。そして、貴族の次に亜人奴隷を使役しているのも傭
兵団であった。
我々としては強制不可能な集団に対して手心を加える必
要性など皆無なのだ。
死傷者が半分程度に及んで、指揮命令系統も崩壊した段
階で我々は地上に降り立ち、直接魔術や獣化をして殲滅を
開始する。
この馬鹿ども。。。今更命乞いなどするな!
何が「許してください。助けてください」だ!
亜人達が犯されたり、売られたり、殴られたり、殺され
たりした時に同じことを言ったはずだ。それをあざ笑って
愉悦に浸っていたお前らに、そんな言葉を吐く権利など無
い!
カトリナは自分の心が死んでしまわないように、強い怒り
を心の中で燃料にしてひたすら戦った。
きっと。。。獣人部隊もそうなのだろう。。。
何処かこの世界はおかしい。。。救われない。。。
「皇女よ。私がお相手致しましょう。」
「ん?これは驚きましたわ~
まさか、こんな場面でご同輩に会えてしかも敵方だ
なんて。なんて良い日なんでしょう?」
「ご同輩などと呼ぶな。汚らわしい。
貴様からは血と死の匂いしかしないでは無いか。」
「そう言うあなたはご同輩なのに、血の匂いがしないのね。
死の匂いは少しするかしら?あなたも私と一緒でしょ
う?殺して、殺して、嬲って、犯して、血を啜り、肉を
喰らい、捕食者として吸血鬼となったのでしょう?」
「一緒にするな。我は真祖ノーライフキングに新たな生を
賜ったものだ。汚らわしい食人鬼が吸血鬼を語るな。」
そう言うと、朱希は詠唱を開始する。
「我、我が王に賜いし魂に誓い、不浄不義なる者の一切を
赦さず。かの者の魂を三千世界より浄化したまえ。
サンクチュアリ!」
「ひぃ。。な、なぜヴァンパイアが聖魔術を。。。。。」
第二皇女は六芒星の魔術陣に囲まれ、おびただしい光の
刃により粉微塵に切り裂かれた上で蒸発して行った。
「ふっ。。。ディライトウォーカーが日光だけに適応した
ヴァンパイアだと思うなよ。。。つっ。。。まだ甘いか。。。」
朱希は魔術を放った右手中指と薬指の一部が裂き割れて
おり、一条の血液が滴り落ちていた。自己の血液を深紅の
瞳で見つめ、喉を鳴らしながらも朱希は目を閉じてその場
を去った。
・・・朱希、我慢なさい。
どうしてもダメなら私の所に来て、
私の血をあげるわ・・・
・・・カトリナ様、お心遣いだけ頂きます。・・・
カトリナは紅桜に聞いて知っていた。自己の血を飲んだ
ヴァンパイアは食人鬼になってしまうと。逆に長い年月、
血の渇きを堪えると真祖となり、やがてはハイヒューマン
に至る事を。。。
その後、臣下は獣人部隊に加勢して帝国師団を殲滅した。
この戦争ではなるべく生き残らせて、帝国に送還。
食料不足の帝国を更に困窮させる方針だったが、既に十分
な数の難民を送り返している上に、ウルスからの送還は既
に非常に手間と時間と金が掛かるため、獣人族の気が済む
まで殲滅戦を繰り広げた。
帝国軍の殲滅後はウリエル国王による無条件降伏があり
ウリエル王国はこの世界から退場した。
(白金貨105849大金貨9金貨1大銀貨1銀貨7大銅貨2銅貨2)




