第41話 神意教会
いつも私の拙い小説をお読みくださり
ありがとうございます。
おかげさまで1万PVを超える事が出来ました。
ブックマークもわずかづつですが増えて
大変ありがたく思います。
今後もよろしくお願いいたします。
我々は西部諸島商連合国、いわゆる商連合国の首都サイ
近郊の平原に着陸した。大河があるわけでは無いが豊かな
草原地帯の小川のほとりを見つけて、アイテムボックスの
肥やしとなっていた野営セットを取り出し設営した。
ひとしきり休憩をした後に、意を決してマニエットに
念話を送る。
・・・マニエット。聞こえるか?・・・
・・・はい。我が主・・・
・・・良く無い知らせがある。
リムダムール聖国に帝国との停戦仲介を依頼に
向かったのだが・・・
・・・教皇を殺っちゃいました?・・・
・・・えっ?いや、そこまではしてない・・・
・・・聖都に入る前のソーンの船着き場で聖職者たちの
行動に違和感を覚えて引き返してしまった・・・
・・・なるほど。
総司令にでも言われて念話しましたね?・・・
・・・エスパーかよ?・・・
・・・今どちらですか?・・・
・・・商連合国の首都サイの東の草原だな。
頭を冷やそうと思って2~3日キャンプでも
しようかと思っている・・・
・・・それは必要な事ですね。主は働き過ぎです。
これからそちらに向かいますので、ミナミの
騎乗して来た竜の使用許可をお願いします。・・・
・・・許可する。・・・
・・・では、後ほど・・・
なんだろう?全然思ったのと反応が違う。
まるで、聖国と揉めるのが判っていたかのような?
「キョウコ。マニエットがこちらに来るそうだ。」
「承知致しました。」
そろそろ日も暮れようかと言う時刻、のんびりと草原の
木陰で休んでいると、ヘムザの乗ったマニエットが辺境伯
領の司教であるカイウスと共に到着した。
マニエットもカイウスもさぞ動揺しているかと思いきや
さほど慌てた様子も無く、到着の挨拶をして来た。
「お待たせいたしました。我が主」
「お久しぶりです。使徒ラファエル様」
「ご苦労、話は念話で話した通りだ。俺の肌に合わない国
だったので、交渉を取り止めてここまで戻って来た。
それから、我が配下のイースト国、バグリド獣王国、
ダムド獣王国は聖国に対して鎖国を指示した。
マキシアム王国にはプラス、教会関係者の1週間以内の
国外退去。聖国には係わったら宣戦布告と見做すと通告
させた。」
「くくくっ。なるほど」
カイウスは面白がっている。
「我が主はその件で我が忠誠を疑いましたね?」
マニエットもSに目覚めかけている。
「い、いや?そんな事は無いよ?」
「目が泳いでおいでですよ?
総司令にでも嗾けられましたよね?
ラファエル様と聖国のどちらに付くのかって。。。
どうせ聖国に付くと言ったら、私が切るとか
言ってたんでしょう?」
「いや、だからエスパー?」
「ラファエル様も総司令も考え違いをしておられます。
教会と聖国は同一ですが、ある意味で同一では無い
のです。」
「ごめん。よくわからない。」
「ああ、そうですね。
簡単に言うと国王気取りの教皇如きとラファエル様
の気が合う訳が無いじゃないですか。」
「その辺りは私がご説明申し上げましょう。」
カイウスが助け舟を出してくれる。
「そもそも、我々の信仰はアルテイシア様に向けられて
いますが、アルテイシア様の存在に自体を尊んで崇拝
している訳では無いのです。
天は自ら助くる者を助く。
我々は自らの足で立って自らを高め、より良い世界を
創りたいのです。そのための信仰で教会です。
アルテイシア様はそうした人間をきっと助けて下さ
り、指針や時には使徒様を使わせてくださる。」
「そもそもこれが教会の教義です。
ところが、教会上層部はアルテイシア正教しか実質
宗教が無い事を良い事に聖国を建国し、偶像として
アルテイシア様や自らが定めた聖女を崇拝する教えを
説いています。
また、聖国と教会の維持のためと謳っては、教会や
孤児院への喜捨についても9割を聖国に上納させており
ます。これでは信仰のための教会なのか、教会のための
信仰なのか判らなくなってしまっています。」
「現状を憂いている司教や教会関係者達も大勢居ますが、
一つに纏まっている教会を割る事による、混乱を恐れて
今まで表立って争っては来ませんでした。」
「今回は私も堪忍袋の緒が切れましたし、逆に良い機会と
捉えようと思い、こちらに同行した次第でございます」
カイウスも相当鬱憤が溜まっていたようだが、違和感の
正体はこれか。。。たぶんあの小娘が聖女なのだろう。
確かに偶像だったな。
「ちなみに主様、商連合を頼る必要はございませんよ?」
マニエットが指摘する。
「元々、バグリド獣王国、ダムド獣王国の教会は聖国の
正教側とほとんど交流は有りません。獣人はそれほど
信仰が深くは有りませんから。
主の指示で喜んで教育機関の役割を果たすでしょう。
イースト国には元々教会は有りません。彼ら独自の宗教
観を持って幼年教育も行っていますから、こちらも問題
ございません。
最後にマキシアム王国ですが、このカイウスを教主と
して、新たに神意教会を立ち上げます。
教皇では無く教主です。先ほどの教えを広く教えて
世界の発展の一助とする教会を目指します。尚、マキシ
アム王国の全教会は神意教会への参加を決定しておりま
すのでご心配無く。」
「なるほど、マニエットの言う通りだな。少なくとも教育
に関する部分については、元々聖国の関与自体も必要無
かったな。」
「はい、帝国に対する停戦交渉に関しては、出来うる限り
帝国側の教会を切り崩した上で神意教会側でも動きます
が、帝国の人種至上主義は元々正教側の一派の選民思想
が元ですから少し厳しいかと思います。
何でしたら私が今から行って帝王と教皇の首を上げて
来ましょうか?
よくよく考えたら宗教家が教皇、(皇)などと烏滸が
ましいにも程があります。」
マニエットがヒートアップしている。
「まあまあ、これはまだ誰にも言った事は無いんだが、
なるべく強大な敵は必要なのだよ。残念だが、現実は
戦争が一番技術的進化を促すんだ。
ほとんどの技術を敵にも平等に与えて習熟させる事に
より、敵国の技術レベルも底上げする。追い付いて来た
ら次のレベルへを繰り返す中で、経済規模も同時に拡大
させて、最終的には独自の進化を遂げて貰う。
我々はそれら独自の部分も取り込んで更なる進化の糧
とする。
これが私の求める今後の世界のあり方だ。
その為には裕福な聖国が敵になるのは悪い事では無いし、
早々に潰してしまうのは勿体無いのだよ。」
「我々としましては、戦争を肯定する事はできませんが、
タイムリミットの有る現状では最善のやり方とお考え
でしたら、綺麗事を言うつもりはございません。」
「うむ、帝国の件は停戦が難しい場合は臣下を順番に従軍
させて適度に時間稼ぎを行おう。
それから、カイウス。臣下の表ⅩⅩⅤを与える。
教主としての格も必要だろう、これでアルテイシア様の
加護が付くはずだ」
「ご配慮ありがとうございます。教会はお任せください。」
「あ、我が主。私の忠誠を疑いましたよね?
今晩は覚悟してくださいね!
総司令は混ざっちゃだめですからね。」
悔しがっているかと思いキョウコを
覗き見たが、むしろ嬉しそうな表情をしていた。
何だかんだ言って仲間だもんね。
優しい子なんだよね。
予定より長くその日から一週間ほど、小川の近くで
のんびり(悪だくみ?)して過ごした。
皆でこの後の聖国の反応を予想していた。
「申し訳なかった。何が問題だったかはわからんけど
申し訳なかった・・・」
「あの使徒は偽物で・・・」
の二択ね。
ひたすら謝ってきたら帝国との停戦10年で手を打つ。
我々からしたら偽物呼ばわりした場合は、その時点で
正教と聖国には宗教的価値は無くなるので、ちょっとだけ
お仕置きに行く。
まあ、得てして期待は裏切られないもので。。。
キョウコ、ツクヨミ、マニエットを相手に朝のお勤めを
していたら聖国に潜入している、ⅩⅣのカンタから念話が
入った。
・・・主、聖国が声明を発表しました・・・
・・・ふむ、内容は?・・・
・・・はい、ラファエルは使徒を語った偽物である。
周辺各国は惑わされないように。
マキシアム王国は責任を取って本人の引き渡し
と賠償金として白金貨20000枚を要求する。と。・・・
・・・わかった。・・・
「皆、聖国が声明を発表した。偽物認定に引き渡し要求、
賠償金は白金貨20000枚だそうだ。」
「「「やっぱり。。。」」」
「じゃあ、予定通り今夜マニエットと聖国に行ってくる。」
「キョウコとツクヨミはガイウスと一緒にここで待機ね」
「かしこまりました。」
日が暮れる直前頃にマニエットと共にオーサに乗り込み
聖国の聖都リムールに向かう。今日は荒事無しで平和的な
嫌がらせだけの予定だ。
リムールの上空に差し掛かる頃には、すっかり日は落ち
て聖都の街路には人通りは全くない。
オーサは一路大聖堂の時計塔を目指す。
カイウス曰く、大聖堂の一角に聳え立つ時計塔の中には
教典室、武器庫、宝物庫、教皇の執務室と寝室、聖女の
寝室があるそうだ。
そう。嫌がらせで宝物庫の中身を空にして行こうと
画策したのだ。
使徒を否定しておいて貰う物は貰うっておかしいもんね。
こういった侵入業務にブラックドラゴンのオーサと
黒い空挺用パレットは最強だ。音も無く時計塔の最上階
に滑り降りると一旦オーサを退避させておく。
マニエットとは無言のまま、念話のみで打合せをしなが
ら階下へと下った。道中見回りの衛兵も聖職者も居ない。
宝物庫の扉にはさすがに南京錠と鉄の鎖が掛けられて
いたが、ギムレット謹製の小刀であっさりと鎖を切断して
宝物庫への進入を果たした。
「おいおい。。。マニエット。目が眩しくてチカチカ
するんやけど?」
「はい。。。まさかこれほどとは。。。」
宝物庫の中には金銀で彩られた防具屋武器、箱にも収納
されずに地面に積み上げられた金貨や銀貨などが中央に山
となっており、最奥にはゴブリンキングの倍以上の大きさ
の魔石を筆頭にSクラス以上の大きさの魔石がゴロゴロ
安置してあった。
あ、マジックバッグ見っけ!20袋全部あるので没収。
とりあえず、問答無用で一つ残らずマジックバッグに
収納して行く。空っぽの宝物庫を見る教皇の姿を見れない
のは本当に残念だ。。。
帰り掛けには教皇の執務室の壁いっぱいに
「自ら助くる者のみを助く」
を大書きして撤収した。
小川沿いのキャンプ地に帰り着くとマニエットに
宣言通り夜通しお仕置きされました。。。
マニエットさん興奮モードで艶っぽかったっす。。。
翌朝、目が覚めると何故かキョウコが横に忍び込んで
いた。可愛い奴め。。。
結局朝からも頑張ってしまった。
小川の冷たい水で目を覚ました後、そろそろ飽き始めた
携帯食料を食べて撤収準備をする。
「マニエットはカイウスとジルを連れて領都に戻って
くれ。」
「ジルはマリアムとミリアムと一緒にレベリングね。最低
限度の土魔術を取得する事。」
「御意!」
「キョウコとツクヨミは俺と一緒にウリエルとリスリッド
に寄って帰ろう。神意教会の交渉もしばらくは無理だろ
うしね。」
「「御意!」」
俺たちは3頭のドラゴンに騎乗してヘルシード山脈を
越えて、ウリエル王国の王都ウルスに向かう。約1400km
の行程だ。
我々は携帯食以外の食事に飢えていたので、夕刻だった
が構わず、ウルスの近郊に着陸して王都に入ろうとする。
一応気を使って南門から入ろうとしたのだが、職務熱心?
な衛兵が居てすんなりとは通れなかった。
仕方が無いので、大銀貨1枚を握らせるとすんなり通過
できた。いや。。。仕事熱心で結構。
南門を潜り広場らしき場所で住民にお勧めの宿を聞くが
ハッキリしない。全体的に暗い雰囲気で疲弊しているのが
見て取れる。とりあえずこの町で一番高い宿を聞いて、
そこに向かう。
立地的には貴族街入口付近の富裕層の多い場所なので
少しは期待が持てそうだ。
まあ、その富裕層の住民とは一人もすれ違わなかったの
だけどね。
今回は王城に襲撃に来たわけでも王族にケンカを売りに
来たのでも無く、情報収集目的なので無理に王城へは向か
わない。キョウコとツクヨミを偵察に出してウリエル王国
の情報を収集して貰う。
夜半過ぎにようやくアルコールの臭いを纏った二人が
戻って来た。
「らふぃーさま~、こんやもかわいがっれくらさいね~」
キョウコが出来上がっている。
「キョウコさん。今夜は私の板です。独占はだめですにゃ」
えっ?。。。ツクヨミさん?
ギャップ萌え狙いですか??
まあ、収拾が付かないので成果を聞くのは明日にしよう。
翌朝は晴れ晴れしい朝を迎えた!
何故かって?二人共に泥酔状態でそれどころじゃなくて
すぐに寝たからね。今日は腰が軽い♪
朝食は宿の食堂で摂ったが、美味しくない。大衆食堂
以下だ。塩分、香辛料控えめの料理でパンなのかどうか
怪しいパンと薄味スープである。
食事を終えて部屋に戻ると昨夜の情報収集の結果を
問い質す。
「キョウコ、どんな情報が得られた?」
「ウリエル王国の国力と継戦能力ですが、王都の見た目
の通り、すでに疲弊しています。マキシアム王国との
紛争へ参加する労役が長期に渡っており、就労人口が
維持できずに畑は荒れ放題となり、農作物の収穫量が
激減しているそうです。
そして、収穫量の減少に伴って税収も低下の一途を
辿っており、国家財政も破綻の一歩手前のようです。
少なくともウリエル王国単体での継戦能力は早晩
破綻すると思われます。」
「ツクヨミは?」
「はい、酒場で少しだけ羽振りの良い人間を捕まえられ
ました。下っ端ですが王宮の官史だそうです。
やはり、ウリエル王はこの戦争には元々乗り気では
無かったが、帝国の無理強いにより参戦したようです。
帝国としてはウリエル王国は属国として国を残しても
良いし、完全に併合して属州とするのもどちらでも構
わない。だが、国を残すなら誠意を示せと。
あくまで伝聞だったらしいですが、リスリッド王国
も同様のようだと聞きました。」
「キョウコ、この宿の食事が不味かったのは?」
「納税が減っているので、王宮や国はあの手この手で税を
取り立てているらしく、民間にも資金が回っていません。
鼻の利く商人はもうすでに商連合国などに脱出した後だ
そうです。」
「ふむ、ツクヨミ。二国は既に限界に思えるが、帝国の
援助や援軍、又は梅雨払いは終わったとして帝国の本体
が侵攻してくる可能性は?」
「基本的に属国や属州扱いなので援助、援軍は見込めない
ようです。また、帝国の本体の侵攻に関してはマキシア
ム王国へのけん制としてはあり得るようです。
帝国がマキシアム王国をけん制している間にリスリッ
ド王国が冒険国を攻め落とす形ですね。
帝国の立場になると冒険国を残したまま、マキシアム王
国への本格侵攻はリスクが高いと言えます。」
「なるほど、戦略的にはリスリッドとウリエルの自壊を
待ちつつ、ラクレッド冒険国を支えるべきか。」
「はい。それが堅実かと。」
「それではつまらないな。こちらも軍資金的にはかなり
厳しいからな。今最も必要なのは時間稼ぎだ。
もう一捻りしよう。ウリエルとリスリッドの亡命政権
をマキシアム王国内に立ち上げよう。そして移民を制限
しているようだが、亡命政権の首班に号令を掛けさせて
一気に移民を引っ張る。
解放軍を立ち上げてウリエルとリスリッド国内でドン
パチしてくれれば、更に時間が稼げるだろう。まあ、
難民キャンプの維持に金が掛かるが、あまり贅沢は言わ
んだろう。
移住してくれるのは大歓迎だしな。
その間にラクレッド冒険国を立て直そう。」
「良い考えかと思います。帝国本軍も解放軍との戦いは
望まないでしょう。勝っても益が無いですから。」
「その方針ならリスレットはとりあえず良いな。
一旦、領都に戻ろう。
戻って、ラクレッドの国王の行き先を再度確認し直し
て、ラクレッドからリスレットに回ろう。
マナミに聖国のお宝を換金させなきゃならんしな。」
「「御意!」」
領都である西都まで1800kmを飛行する家路に着いた。
(白金貨11973大金貨2金貨5大銀貨1銀貨7大銅貨2銅貨2)




