第1話 ロンドベル辺境伯家
「ラファエル様、ラファエル様、起きてくださいませ」
夕日が差し込む部屋、マリエの声で目を覚ます。
「マリエ おなかすいた~」
「ええ、本日はお館様も体調が宜しいようですので
久しぶりに皆様お揃いで食堂にて夕食でございます。」
「ちちさまも いっしょ?」
「そうでございますよ。半年前の戦での怪我がようやく
癒えてきたようでございます。」
ほほう、漠然と怪我で寝込んでいたと思っていたけど
戦での怪我だったのか~辺境伯って結構えらいと思うんだけど
よほどの大敗だったのかな?結構脳筋なイメージだったけど。
「まりえ いこー」
「はいはい、夕食では新しいメイドの紹介もございます。
ラファエル様の専属メイドですよ?」
「えー まりえはー」
「マリエはお母様のミランダ第一夫人の専属ですので
明日からは新しい専属メイドがお世話をします。」
「でも、同じ御屋敷で同じ御屋形様の下ですので
お別れではありませんよ。」
「そっかー わかったー きれいなこがいいなー」
「もう、ラファエル様ったら。。」
ふむ、専属メイドか。男のロマンですな。
ドキドキですたい。セクハラしまくったろ!
しばらく食堂で待つと
ベルナンド・フォン・ロンドベル辺境伯が杖を突きつつ
家令のセバスチャンと共に現れて、席につくと
第一夫人であるミランダが
「今日はお加減が良い様子で何よりです」
第二夫人のエスメランダが
「そろそろ、閨に忍び込んでも良さそうですね」
第三夫人のクリスティーナが
「エメルダ?ご無理をさせたら駄目よ?」
「ふふふっ、
もう少しだけ労わっておくれよ
この貴族っぽいやり取りも苦手なんだよね。」
家令のセバスチャンが
「お館様、爺もあまり堅苦しくはしたくないのですが、
辺境伯家として、ある程度は上下関係をお示しする事
も必要かと。」
「わかったわかった!ラフィー!3歳の誕生日おめでとう!
パパはそれが言いたくて、今日まで我慢して療養して
いたんだからな~」
親バカである。思ったより辺境伯家ユルユルである。。。
「ちちうえ ありがと~」
「皆も息災なようで何よりだ!」
「御父上もお加減が良いようで、胸を撫で下ろしました。
このご様子であれば、近々稽古をお付け頂けそうですね」
8歳になる長男のアルフォンスが代表して返事をする。
「アルス?あまり無理を言ってはいけませんよ?」
アルフォンスの生母であるクリスティーナが咎める。
「ふふっ、アルスも嫡男候補として自覚が出てきて、
気が急いているんでしょう。
クリスも分かってあげないといけませんよ?
ねーアルス?」
第一夫人のミランダ母様は嫌味なく、第三夫人の
クリスティーナを茶化している。
アルフォンスもハニカミながら嬉しそうにしている。
どうやらロンドベル辺境伯家の家内は円満のようだ。
「まあ、もう少し調子が良くなったら、じっくり相手してやるぞ」
「ありがとうござます。御父上」
「ではお食事にしましょう。カナエお願いね。」
「かしこまりました。エスメラルダ奥様」
メイド長のカナエが指示をすると給仕が始まった。
現代日本の食生活に慣れた俺にとっては、少し薄味かな?
良く言えば素材を生かしたフレンチって感じかな。
香辛料が貴重なのかもしれないな。
ただ、素材自体があまり美味しくない。
安物を使っているのか、この世界の素材があまり
美味しくないのか。。。
食事も終わり、リビングに移動をする。
少し億劫そうにしながら、ソファに座ったベルナンドが
「ラフィーおいで!」と手を差し出した。
「ちちうえ~ どおん」
全力でタックルしてみた。(笑)
ん?アルコール臭い?さっき飲んでたかな?
「うっ。。。げ、元気に育ったな。。う。うん」
「ラフィーの三歳のお祝いにプレゼントがあるぞ~」
「わーい ありがと~ ちちうえ」
「カナエ、キョウコを呼んでくれ」
「かしこまりました」
コンコンッ
「失礼いたします」
ドアを開けて入って来た女性は日本人そのものだった。
日本人にしてはかなりの高身長。170cm位あるかな?
少し冷徹に見える切れ長の瞳、腰まである長い黒髪を
束ねてポニーテールにしている。
探るような視線をこちらに向けている。
極細スレンダーで貧乳。まだ若いけどね。
現代日本で言うならパリコレモデル?って感じだと思う。
「この度、東方のイースト国より縁ありまして、
こちらにご奉公する事になりましたキョウコです。
13歳になります。よろしくお見知りおきを。」
「キョウコにはラファエル坊ちゃまの専属メイドをして
貰いますが、当屋敷の使用人序列は三位となります。」
メイド長のカナエがそう言うとお母様達がざわついた。
ロンドベル辺境伯家は未開領域に近く、尚武の気質のせいか
使用人には序列が存在する。
武力を基準として使用人達が自分達で決定しており、
辺境伯であっても口出しはできない。
使用人達自らが切磋琢磨するために決めた制度だからだ。
ちなみに使用人序列一位は家令のセバスチャン、
二位はメイド長のカナエである。
問題の三位は先程までは騎士長のスタッドだったはず。
スタッドは。。。居た。。。
特に動揺も無く当然のように立礼している。
と言う事は13歳にして、騎士長であるスタッドよりも強い。
それもスタッドが納得するだけの実力があるという事なのか。
「皆も13歳にして序列三位に驚いたかもしれないが、
カナエの故郷の秘蔵っ子だよ。
ラフィーもキョウコの方が嬉しいだろう?
それともスタッドを守役にしたほうが良かったか?」
「ちちうえ~ ありがと~」
全力ダッシュでキョウコの脚に飛びつく。
スタッドが苦笑いを浮かべている。
「ラファエル坊ちゃま、誠心性意お仕えさせていただきます」
(。´・ω・)ん? なんか。。違った意味に聞こえたけど・・・
気のせい気のせい。。。。
「きょーこ よろしく~」
こうして、記憶を取り戻してからの初日の夜は更けていった。
当方、初めて物書きに挑戦いたします。
誤字脱字、読みにくい等のご指導をお願いいたします。
豆腐メンタルなので過激な指摘はご容赦くださいますようにお願いいたします。