(24)あらあらあら
亭主の母、つまり私の姑は、とても無邪気で少女のような性格だ。
「あらあらあら、今日子さんどうしましょう」
「どうしました、おかあさん」
「蜂が死んでしまったわ。 ちょっとスプレーかけただけなのに」
「スプレーって、それ殺虫剤でしょう? そりゃ死にますって」
「だって、おウチに入ってきたから追い出そうと思って、ちょっと脅すつもりでかけたのに」
どんなつもりだって、かかりゃ死にます。
「まあ今日子さん、きれいな薔薇を飾ったのね!」
「それ、コピー用紙ですよ」
「あらそんな種類の薔薇もあるの。 どこのお花屋さんで買ったの? いい香りねえ」
「香りはないはずですってば。 紙でできてるんです!」
「紙?」
「私が作った紙の花です!」
「あらあらあら」
手に取っているのに気づかない。
「今日子さん、チョコレートをもらったのよ。 一緒に食べましょう」
「いただきまーす。 あ、おいしいです、これ」
「まあ、何かおまけが入ってるわ。 茶色くてかわいい犬の絵がかいてある。 これもチョコ?」
「あけてみましょうか。 ああ、わかった。これはマグネットですね」
「そういう名前の犬なの? おいしそうね、いただきまー」
「わー!! だからマグネットですって、食べちゃダメ!」
「え?」
「チョコの形した、磁石ですってばー!」
「あらあらあら」
あまり人の話は聞いてない。