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短編横丁  作者: 友野久遠
23/27

(23)わらしべ長者型パニック

 我が家の長男、小学校の頃は忘れ物の名人だった。


 まず荷物がランドセルしかなくても、そのランドセルを忘れて行くのである。

 体操服だけ持って出て、ランドセルを玄関に忘れて行ったことも幾度となくある。

 だからもちろん、ランドセルを背負っただけで、体操服や給食袋を忘れて行く、なんてありきたりな忘れ方なら、ほとんど毎日やらかす。


 家が学校からかなり遠かったので、忘れ物をすると大変だった。

 田んぼ道を延々泣きながら戻って来る。


 おまけに動揺しているととめどなくポカが続く。

 まず「体操服がない」と戻って来て、入れ替わりにランドセルを玄関に置いて出る。

 「あ! ランドセルがない」とまた戻り、今度は体操服が玄関に置き去り。

 取りに帰る時、道路にランドセルを投げ捨ててくることもあり、今度はそれを探していて体操服をなくす。 これではいつまでたっても、学校に行き着かない。 

 何度でも戻って来るので、「ヨーヨー」とあだ名がついた。


 そうなると、今度は自分の管理能力に自信がなくなってしまうのである。

 持っていかなくていい物まで、取りに戻るようになる。

 「エーン、みんな絵の具を持ってる。 僕忘れた!」

 「絵の具なんて3年生からしか使わんでしょうが!」


 

 そんな時代の秀逸な忘れ物エピソードは、いつものように彼の勘違いから始まった。

 泣きながら玄関に走り込んだ長男が、またしてもありえないことを口走る。

 「エーン、僕だけ『給食袋』がない!」

 「お前当番じゃなかったろ! 持って帰ってないでしょうが」

 「うわーん、そうだった!」

 まだ時間があったので、すぐに学校に向かわせたのだが。

 

 10分後、ゴミ出しに行った帰りに、近所の奥さんに声をかけられた。

 「司くん、無事に戻れた? 『体操帽子』を忘れたって、泣いて走って行ったけど」


 お昼すぎ、買い物に行ったら、八百屋さんのご主人に呼び止められた。

 「今朝、無事に忘れ物取りに帰ったかね?

  店の前で他の子が『習字道具』を持ってるの見て、僕忘れた!って走り出したんだよ」


 極めつけは、しっかりものの姉、長女の蘭が帰宅して言ったセリフ。

 「司、無事に取りに戻った? 『宿題』机の上に忘れたって泣くから、戻らせたんだけど」


 道中、何度忘れ物の内容が変わったのだろう。


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