(16)バナナの呪文
胃が痛いので、子供が幼稚園に行っている間にと、最寄りの内科診療所に飛び込んだ。
「胃痛ですか。 レントゲンが取れるとイッパツなんですが、何時に朝食を取られましたか」
「朝の6時です」
「5時間は経ってますか、うーん、撮れるかな。
ちなみに朝食の内容は?」
「堅い物が食べられそうになかったので、バナナを半分だけ」
「♪さっちゃんはね♪」
「……先生?」
「えー、ゴホン。 バナナはまずいなー。 まだ残ってるかもしれないですねえ」
「えー、だって柔らかいじゃないですか」
「繊維と灰汁がほとんどですからね。 下手すりゃ1日居座ってる」
そこで医者は席を外し、看護師と相談を始めた。
レントゲンが取れるかどうかを議論しているのだが、私の席からは途切れ途切れにしか会話が聞こえない。
おまけに専門用語ばかりなので、理解できる単語は「バナナ」だけである。
それはこんな風に聞こえた。
「多分、バナナだと……になってしまうからバナナだけ……だと思います」
「でもバナナなら……になるし……っていう事がバナナの場合……のがバナナの……だろう?」
「バナナは……ですからきっと……になってバナナが……と言う恐れも……バナナの量が……ですし」
「問題はバナナが……なことで、バナナの……は関係ないです」
「だけど、どにかくバナナだから」
悪かったね! バナナなんか食べて!!