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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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固まる人人

前回のあらすじ~

ダンジョンからぬけました。

「う~ん」


目を開けると、黒い天井が目に飛び込んできた。

え~と、ここはどこだっけ?

いつもの宿屋のベッドではないことは分かる。


「クア?」


リン?


ハヤテの顔と、リンちゃんの顔が覗きこんできた。


「おはよ~、ハヤテ、リンちゃん。え~と、あ、そうか。ダンジョンから出て~…」

「主殿、目覚められたか?」

「おはよ~クレナイ。そうそう、クロにシロガネを迎えに行って貰ったんだっけ」

「我が輩ならばここにおるぞ」


左の脇からクロの、いつの間にか猫に戻った顔が覗き込んできた。

習慣でナデナデしてしまう。


「お帰り~クロ。てことはシロガネは…」


起き上がって見回せば、なんだか申し訳なさそうな感じのシロガネが座っていた。


「主、お待たせして申し訳ないである…」


そんなこと考えてたのか。


「いいよ。大変だったんでしょ? 無事に出てこられて良かったよ」


シロガネの顔が嬉しそうになった。

皆も怪我とかしてなさそうだし(ハヤテの怪我はリンちゃんが付きっきりで治したそうだし)、良かった良かった。


「色々冒険譚を聞きたいところだけど、まずは外に出ようか」


灯りは灯っているのだけど、黒い部屋なのでなんだか暗い。お日様が恋しくなるよ。

皆もうんと頷いて、出口らしき扉に向かう。

クレナイが取っ手に手を掛けて、押し開いた。

太陽の光が差し込んでくる。

うん、ちょっと太陽が高い気がするけど、まだ午前中だろうからセーフということで。

左手の方に行列が見えた。あっちがダンジョンの入り口なのだろう。


「う~ん、冒険はしたけど、思ってた冒険と全然違かったな…」

「もう一度行くかの?」

「しばらくはいいっす」


クロのからかうような視線から目を逸らす。


「主殿、ダンジョンで回収した魔石は如何するのじゃ?」


クレナイが手に持っていた袋を掲げた。

ジャラジャラ音がする。


「魔石?」

「ダンジョンや高位の魔獣などから取れる魔石じゃよ。売れば金になるのじゃろう?」


知りませんでした。


「なんてこと…! じゃあ今までクロが倒した魔物達から…」

「案ずるな。回収してあるのだの」


腕の中からクロが囁く。あ、そうか。人がいるからね。


「さすがクロ!」


頬ずり頬ずり。

嫌そうな顔。


「ん? でも、回収って、どこに…?」

「・・・・・・」


クロが黙秘権を行使しました。


「まあいいか。後で人がいなくなったらたっぷりと…」


逃げようとするクロの後ろ足をしっかり掴む。ついでに胸元も押さえて動けないようにする。


「・・・・・・」


嫌そうな顔してるけど、逃げられないと悟ったか、大人しくなった。

ここで油断してはいけません。手を緩めた瞬間、猫はさっと逃げるのです。

なので、掴まりは続行。


「なんてことだ…。なんてことだ…」


シロガネが呆然と呟いている。

シロガネは走り回って魔物をやっつけていたという話しだけど、やっつけるだけやっつけて、走って行っちゃったんだろうね。それに馬の姿だと拾えないだろうし。


「シロガネ、いいのよ。期待してたわけじゃないんだから」

「しかし、不甲斐ない…」


項垂れる。


「クア~」


リン・・・


ハヤテとリンちゃんも申し訳なさそうな顔。

ナデナデナデ。

リンちゃん、ハヤテの頭が気に入ったのか、ハヤテの頭に座ってます。


「いいのいいの。皆が無事だっただけでいいんだってば。クレナイが偶々知ってて拾って来てくれただけだから。気にしなくて良いのよ」


ナデナデしてたら、元気になったような2人。

そう、無事だっただけで良いのさ。


「して、魔石はどうする?」


クレナイがジャラリと袋を鳴らす。


「売れるなら売っちゃおうか。私達が持ってても使いどころが分からないし」


ということで、簡易ギルド出張所へ。

復興はまだまだだけど、とりあえず買い取りカウンターは簡易で置かれているらしい。

受付はやはり綺麗なお姉さん。


「すいません。ダンジョンで拾って来た物って、ここで売れますか?」

「はい。取り扱っております。どんな物でしょうか?」

「魔石なんですけど、鑑定お願いします」


クレナイがカウンターの上にジャラリと袋を置いた。

なんだかお姉さんが固まっているように見えるけど…。


「あの、すいません?」

「は、はい? え、いや、あの、その…。こちら、全部魔石で…?」

「そうだよね、クレナイ」

「うむ。魔石じゃよ」


お姉さんの顔が青ざめてるけど、体調悪いのかしら?


「あ、あの、申し訳ありませんが…、この量ですと…、こちらでは買い取りが難しくなりますので、申し訳ありませんが、街の方のギルドに持っていって貰いたいのですけど…」

「あ、そうですか。分かりました」


再びクレナイが袋を持つ。

ん?なんだか周りの視線がまた痛いような…。

クレナイのせいか?


「んじゃ、街のギルドに行こうか。シロガネ、頼める?」

「もちろんである」


ダンジョンから少し離れて、開けた所でシロガネに乗り、ダンジョンを後に、ダンジョンの街に戻ることにした。ややこしいな。













西の門の手前で降りて、念の為皆で人化。

リンちゃんは私の頭の上に。

やっぱり顔パスで通り抜けられた。フシギダナー。

そのままギルドへ向かっていると、


「あんた、あの時の!」


威勢の良い声が降ってきた。

見れば、そこには戦女神のような風貌のミューズさん。

名前と雰囲気が真逆なので覚えてた。


「ヤエコだったっけ? ダンジョンに行くのかい?」

「いえ、今帰って来たところです」

「おや、そうかい。こんな時間だから出かけるのかと思ったら。帰って来たというなら、お腹空いてるんじゃないかい? 時間があるなら食べに来ないかい?」


そういえば、起きてからまだ何も食べてないや。


「えっと、お邪魔しても大丈夫なんですか?」


空腹には勝てなかった。


「大丈夫だよ。その妖精も観察させてもらいたいし、来てくれたら大歓迎さ」


む、ちょっと下がりたくなってきた。


「リンちゃんに酷いことしません?」

「するわけないだろ。こんな可愛い子を」


リンちゃんを可愛いと?そんな当たり前のことを。ふふん。


「分かりました。ちょっっっっっっっとくらいならいいでしょう」

「ご馳走するから、もう少し色をつけてよ」

「リンちゃんが嫌がらなければ」


というわけで、ミューズさんの所でお食事を頂くことになりました。

折角だからこれ使って下さいと肉を見せたら驚かれました。












やって来たのは何故か教会。


「何かあったらすぐに対応出来るように、ここに住まわせてもらってんだ」


とのこと。出来る女性は違うね。

中に入ると、この前とは様相が違い、椅子が並べてあった。これが普段の姿なのだそう。

通路を通って行くと、食堂らしき場所へ。

なんか、長い机が2つあるんだけど…。

厨房に行くと、料理を作っている女性が。


「マリア。ちょっと多めに作れる? お客さんを連れてきたんだ」


マリアさんと呼ばれた女性が振り向く。

黄色い髪に青い瞳。お~、いるんだね~、こういう容姿。


「お客様? ミューズが珍しい。 あら、こんにちは。マリアと申します」

「冒険者やってる八重子と申します。この子はクロ、この子はハヤテ、頭の上の子がリンちゃん。こっちがシロガネで、あっちがクレナイです」

「ですー!」

「よろしくである」

「よろしくなのじゃ」

「はい。いらっしゃいませ。大した物はありませんが、ゆっくりしていって下さい」

「あと、これ、使って下さい」


肉を目の前にどん!と出したら、マリアさんが固まってしまった。


冬はにゃんことの距離が縮まります。

うちの子もずっとお膝の上に・・・。

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