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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
62/194

猛攻!

前回のあらすじ~

リンちゃんが怪我人達をあっという間に治した。

「街から出来るだけ離れて欲しいのじゃ」

「承知しておる」


クレナイを背に乗せ、シロガネがスタンピードの迫っている西の門へと急ぐ。

ハヤテもその後に続く。

西の門にはかなりの人が集まっているのが見えた。

門の上、外壁の上に、兵士やら冒険者やらが集まり、じっと西の方を見つめている。

森の奥の方で、木々が倒されるのが見える。あそこがスタンピードの最前線なのだろう。

よく見ればその後ろにも黒い影が連なり、かなりの数がこの街の方角を目指しているのが分かる。


「これはなかなか。暴れがいがありそうじゃのう」


それを見て、クレナイが呟いた。


「あまり森を焼きすぎると、主に迷惑がかかるであるぞ」

「承知しておる」


口元を扇で隠しながらも、クレナイの口角は上がっていた。

今まで碌な相手に出会えず、街のコロシアムでちまちまと戦っていて、ちょっと鬱憤が溜まっていた。やはり時には全力とは言わずとも、思い切り戦ってみたい。

シロガネが悠々と門を超え、森へと急ぐ。

シロガネの姿を見て、門やら外壁やらの人間達が騒ぎ始めた。


「そこの者! 止まれ! 何処へ行く!」


責任者らしき男がこちらに向かって声を掛ける。

自分を人として見ているのだろう。そう思ってクレナイが振り向くと、男達の顔が色めき立ったのが分かった。


「美しいというのも、罪よの…」

「・・・・・・」


シロガネは黙っていた。


男達にサービスとばかりに微笑んでやると、幾人かの者が顔を赤くし、体を固くしたようだった。

興味ない雄とは言え、自分を見て顔を赤らめるのを見るのは気分が良いもの。クレナイは満足そうに前方を見据えた。


「人と言うのは面白いのう。何故自分も危険じゃというのに、他人の心配などするのかのう」

「確かに。人は何故か、己より他人を心配するおかしな者が時折おるな」


見ず知らずの他人なのに、危険と分かると体を張って助けたりする。ともすれば、身内でも蹴落としてまで助かろうと藻掻く者もいる。

とても不思議な生き物だと、クレナイとシロガネは頷き合った。


「さて、そろそろかのう。ハヤテ、少し離れておれ!」


大分街から離れたことを確認し、クレナイがハヤテに声を掛け、シロガネの背から飛び降りた。

言われた通りハヤテはクレナイから距離を取り、シロガネもすぐにUターンして、街へと向かった。

クレナイの体が光り、ドラゴンの姿へと戻る。


ズズン・・・


地に降り立つと、地響きがした。

久々に元の姿に戻ったので、軽く全身を伸ばし、伸びをする。


「ふあああああああ~…」


と気の抜けた声を出したつもりであったが、そこはドラゴンであったため、


「グオオオオオオ!!」


周りにはそう響き渡った。


スタンピードの方を見るが、迫り来る魔物達は正気を失っているのか、自分の姿を見ても怯んだ様子はなく、真っ直ぐ突き進んでくる。


「そうでなくては面白うない」


首を軽く回す。うむ、凝ってはいない。

近づいて来たハヤテに、


「ハヤテ、妾の前には出ず、妾の後ろで、妾が取りこぼした者を屠っておくれ。前に出たら間違えて攻撃してしまうやもしれぬからのう」


ハヤテが頷き、自分の背に回るのを確認する。

これで前に気にする者は無い。

口元に魔力を集めていく。

ちょっと森が燃えてしまうかもしれないが、殲滅するにはこれが一番早い。

口を大きく開け、魔力を練り、勢いよく吐き出した。


ドラゴンブレス。


超高温の光線が、スタンピードの最前線に突き刺さった。

そのまま横薙ぎにすると、数多の魔獣が吹き飛んだ。


「ん~~~~~! これじゃこれじゃ! 偶には思いっきりやらんとのう!」


再び魔力を練り、それを翼に集め、翼を強く羽ばたかせた。

途端に、大きな竜巻が2つ現われ、スタンピードの方へと向かっていく。

魔獣達が次々に竜巻に飲み込まれて、空高く舞い上げられ、地面に激突していく。

翼のある魔獣も、竜巻に飲み込まれると、自由を失い、宙へと投げ飛ばされる。

ついでに森を焼き始めた炎も、竜巻に飲まれて消えて行った。


運良く竜巻から逃れて来た者達も、その鋭い牙や爪で一薙ぎにして行く。

取りこぼした者も、後ろで控えていたハヤテの爪や嘴の餌食となっていった。







しかし、それでも漏れてくる者はいる。

街に向かって、数匹の魔獣がやってくる。

だが、今までの数と比べれば、なんと容易い数にまで減ったのだろう。

門や外壁に控えていた人間達が声を上げ、士気を高める。


ここまで来たら自分たちもやらねばと、各々の武器を握りしめ、迫り来る魔獣達を迎え撃つ。

魔術師達が呪文を唱え、弓矢隊が矢を番える。

攻撃の範囲内に達し、少し粘った所で、それぞれの力を発射させた。

ゴブリンやオーク、蛇型や牛型の魔獣が火の玉や矢を受け、地面に転がっていく。

攻撃隊に気付いたのか、オーガの1匹が、外壁の上に向かって、自分の持っていた武器をぶん投げた。


「ああっ!!」



避けきれないと思った術師が、観念して目を閉じるが、


ガン!


何か固い物に当たったような音がしただけで、術師達にまで、武器は飛んでこなかったのである。

何かと思い、目を凝らしてみれば、いつの間にか結界が張られているではないか。


「人間達よ。よく聞け。あのドラゴンは我らの仲間、我らの味方だ! この街には我が結界を張った。何があろうと外からの攻撃は受け付けぬ! 存分に戦え!」


声のした方を見上げれば、先程あの女性を背に乗せていたペガサスが、浮遊しながら人間達を鼓舞しているのだった。

外からの攻撃は届かないと知り、俄然張り切り出す人間達。

よく見れば、とある場所から、魔獣達が何かに阻まれたように前進出来なくなっている。

あそこが境界線なのだろう。


となれば、門を開けても魔獣が雪崩れ込んで来る心配はない。

人間達は門を開け、剣や斧などの近接武器を持った者達が、結界に阻まれ動けない魔獣達に向かって武器を振るった。

なんと楽な戦いか。


だがしかし、1つ気を付けなければならないことがあった。

1人の冒険者らしき人物が、調子に乗って結界の外に出てしまったのだ。

この結界は、中から出ることは出来るが、外からは何であれ、入れないようになっている。つまり、その冒険者は戻ることが出来なくなってしまったのだ。

魔獣に囲まれる冒険者。助けようと、その冒険者の周りの魔獣に剣を向ける仲間達。

手を繋いで戻そうとするも、一度全身が出てしまうと、戻れなくなってしまうらしく、中に引き入れることは出来なかった。


魔獣の包囲もだんだんと狭まっていき、これまでかと思ったその時。

風の刃が走り抜け、魔獣達をバラバラにしてしまった。



「世話が焼ける。我に掴まれ」


フワリと降り立ったペガサスが、翼の先を差し出してくる。

訳が分からないながらも、しっかりと翼を握りしめる。


「ほれ、我と共にならば入れるぞ」


入れた。

翼を握ったまま、促されるままに歩いたら、いつの間にか結界内に入っていた。

仲間と喜び合う。


「まだ戦は終わってはおらん。気を引き締めて気をつけて戦え」


そう言うと、ペガサスは空へと駆け上がって行った。

その姿を見て、人々はなんと神々しいお姿か…と、呟き、祈りを捧げるのだった。

いや、シロガネは神じゃないぞ。


書いている途中猛烈な睡魔に襲われて、一応確認したのですけど、誤字脱字があったらすいません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰かが指揮してなけりゃドラゴンが元凶(笑)
2020/07/07 20:20 退会済み
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