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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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青いドラゴン

前回のあらすじ~

スープ作ったらありえない味になった。

ドラゴンをも唸らせたスープは(マイナスの方向にだが)、大地へと返されることになりました。

勿体ないけど仕方ない。

私も一杯飲んで限界だった。味的に。


「主殿、まだ鳥は余っておるのじゃろう?」

「うん、そうだけど」


さすがに2羽も入れられなかった。というか、半分も入れられなかった。

鍋が1人用なもので。


「ならば、妾が何か簡単に作ってみようかの」

「え?! クレナイが?!」

「最初の主の時の奥方がの、面白がって妾に料理する所を見せておったのじゃ。見様見真似であるが、作れるやもしれぬ」


産まれて1年もしないうちに、クレナイは人語を理解し始めたらしい。

最初の主さんは面白がってクレナイに言葉や文字を教え、その奥さんも面白がって料理などをしている所を見せたりしていたとか。


「多少手伝ってもいたのじゃぞ」

「火加減とか?」


まだ人化出来ていない頃だから、調味料取ってとか、火加減調整してとかだよね?


「まあ、そうではあるが」


ナイフを渡すと、器用に一口サイズに切り分けていく。

ナイフの扱い上手くね?

それから調味料をまぶし、簡単に焼いた。

本当に簡単料理だった。


「これで、なんとか食べられるじゃろう?」


差し出されたそれを口に運ぶ。

おお、美味い。

クロもちゃっかり頂いてる。

そういえば、クロはスープに手もつけなかったっけ。


「我が輩にあれは、塩分過剰摂取になるからの」


そっすね。


猫に人の食べ物をあまりあげてはいけないと言われる理由。一番の理由は塩分。

成人女性の塩分摂取量の目安は7g。

仮に女性の体重を50kgと仮定して、猫の平均体重は4kg。

分かり易いように少し体の大きな5kgと考えると、お分かりですよね?

猫の塩分摂取量の目安は0.7g(多分)。およそ塩一つまみ分くらいです。

つまり、1回の料理で塩一つまみとか言ってる料理は、それだけでもう終わりです。

下手に人間用におつまみなんか上げようものなら、一欠片だけでも下手すると塩分過剰摂取になってしまうのです。

猫に人間の食べ物上げるのはやめましょう。


少量を他の器に移し、ハリムさん達にお裾分け。


「先程の口直しにどうじゃ?」

「おお、ありがとうございます」


2人共、食べて喜んでました。

私のあんな料理食べた後だから余計に美味しく感じたかもね。


くそう。


クレナイもペロリと平らげ、食器を洗って片付ける。


「見張りは私達も交代でしましょうか?」


ハリムさんが声を掛けてきた。

そういえば、私1人、いや、クレナイ入れて2人しかいない。

経費削減が徒になったか?


「我らが見張りをする。主達はゆっくり休んでくれて大丈夫であるぞ」


シロガネがそう言ってくれた。


「おお、ペガサス様」

「ペガサス様がそう仰ってくださるならば安心だ」


そう言って2人は安心したように寝袋を引き出してきた。

ペガサスの信頼度高くね?


「主殿、大丈夫じゃ。妾が街を出てからずっと気配をダダ漏れにしておるからの。まず魔獣の類いは寄っては来ぬじゃろう」


そんなことしてたんですね。

地上最強の生物と言われるドラゴンの側に寄ってこようなんて思う輩などそういないだろう。

余程のニブイ生物、例えば人間とかならともかく。

そういえば、鳥の鳴き声が少ないなとかハリムさん達が零してたのは、それが原因か。


「一応私も起きれるだけ起きてるよ。皆だけ働かせるなんて悪いよ」

「我らは元々夜も人間ほど深く眠る事はない。慣れておるから大丈夫であるぞ」


野生生物はそうですよね。

でも私の気が済まないから、ちょっと頑張って起きている。

でも、ハリムさんとカリムさんが焚き火の側で気持ちよく寝ているのを見たら、なんだか眠くなってきてしまう。


「無理するでない。寝ろ、八重子」

「れも~、わらしも、見張り…」

「既に声が寝とるわ」


ダメだった。


シロガネとリンちゃんによって既に用意されていたベッドに寝転がり、マントを体に巻いて、クロとハヤテの体温を感じたところで、意識がなくなった。















ペシペシ


何か柔らかいものが私の頬に当たっている。

う~ん、ちょっと気持ちいい。


グサ


「痛い!」

「なあお」


爪が頬に刺さったんですけど!

飛び起きたらリンちゃんが吹っ飛んだ。

髪の毛に掴まってたらしい。









特に魔獣に出会うこともなく、ダンジョンの街コーヒーを目指して3日目。

それはやって来た。


「む?」


クレナイが空を見上げた。


「ん?」


シロガネも何かに気付いて空を見上げた。

私もつられて空を見上げる。

うん。ハヤテが飛んでいる。


ん?ちょっと待て。あれは・・・。


青い空の彼方から、更に青を濃くした鳥のようなものが飛んで来ている。

遠近法がなんだかおかしい。

ハヤテよりも遠くにいるはずなのに、すでにハヤテよりもでかいような…。

そして特徴のあるあの翼、よく見れば煌めく鱗。

長い首にトカゲのような尻尾。鋭いかぎ爪のついた手足。


「グオオオオオオ!!」


青いドラゴンだ。


「ど、ど、ど、ど、ドラゴン?!」

「な、な、な、な、なんで?!」


ハリムさんとカリムさんが抱き合って震える。

馬車を隅に寄せて止め、ドラゴンの様子を見る。

明らかにこちら目指して飛んでくる。

馬車から少し離れた所に、ドラゴンが地響きを立てながら降り立った。

あ~あ、木が倒されてる。あの巨体じゃ仕方ないか。


「人間よ。我らが同胞を縛り付けておるな?」


青いドラゴンから重低音の声がしてきた。

これ、クレナイのことだよね?


「ふむ。初めて妾の同胞を見たわ」

「く、クレナイさん?」


カリムさんが馬車から降りたクレナイを怪訝そうに見つめた。

一生懸命クレナイにアプローチしてたものね。

正体については黙ってたんだけど、言った方が良かったかな?

ハヤテも降り立ち、皆で青いドラゴンを見上げる。

クレナイが静々と前に出て、青いドラゴンを見上げた。


「赤き竜の姫君とお見受けする。何故人間の下に付いておる?」

「妾は卵の頃に攫われての。産まれてからずっと従魔紋に縛り付けられていたのじゃ」

「なんと!! 下賎な人間ごときが! 我らの同胞を!」


青いドラゴンが吠えた。


「人間よ! 今すぐその呪いを解呪せよ! でなければ殺す!」

「「「殺す?」」」


赤、白、黒のトリオの声が重なった。

てか、クロ、君は普通の猫を演じてる最中でしょうが。


「妾の主を殺すじゃと?! この青二才が!」


青で掛けたんでしょうか。使い方間違ってない?


「主を殺すなどと、許してはおけぬ」

「クア~」


リン!


皆連戦態勢になっちゃった。

いやいや、クレナイはともかく、他の面々はヤバいでしょうが。


「主殿に手を出す輩は許さぬ! 主殿に手を出したくば、妾を倒して見せよ!」


そうクレナイが叫ぶと、クレナイの体が光り、あっという間にドラゴンの姿になった。


あ、カリムさんが放心してる。


前にいた茶虎の兄弟は、ご飯の時間になると起こしにきたものです。

それこそ、鳴いたり人の頬を叩いたり、人の上に乗ったり、暴れたり。

今の黒白の女の子はご飯の時間になっても起こしてくれません。一緒に寝てます。

おかげで平日も布団からなかなか起きられないという弊害が・・・。

何故かって?

寝顔が超絶プリチーィィィィィィィィィィだからですよ!

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