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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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スープの素と塩胡椒

前回のあらすじ~

シロガネが1人で悶えていた。


前回追記してあります。シロガネが1人でうじうじ言っているだけですが。

「八重子」

「むう・・・」

「八重子。起きろ」

「ぐう・・・」

「寝たふりをするな」

「眠いっすよう…。クロさん…」

「仕事だぞ」

「うふぁい…」


眠い頭を無理矢理起こし、体を起こす。


リィン


リンちゃんもフワフワと宙を漂っている。


「おはようなのじゃ。主殿」

「・・・。おはよう、クレナイ」


クレナイは朝に強いのか、既に起きていた。


「ほれ、早よ支度せんと。遅れてしまうぞ」


クロが膝に乗ってきた。

ガバリと抱きしめる。


「これ! ビックリするではないか!」

「んふうう~~。クロのにほひ(・・・)…。ふんすうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…」

「気持ち悪いのだ。やめるのだ」


クロの背中に鼻を押しつけ、クロのにほひ(・・・)を嗅ぐ。

ん~、いつものクロのにほひ(・・・)です。良いにほひ(・・・)

一番良いのは、日向ぼっこした後の猫のにほひ(・・・)ですがね。

何と言っても、この肩甲骨の間の窪みがたまりません。

ここはちゅーするためにある窪みです。思わず口を埋めたくなります。


「んふうう。ちゅっちゅっちゅうううう。今日もクロさん可愛い可愛い」


朝の挨拶です。


「早よせんと、遅刻するぞ…」


クロの声がちょっと怒って来たかも。大人しく離した。

ベッドの隅っこに行ってグルーミング始めました。

私が折角ちゅーしたのに、舐め取る気です。


「朝から暑いのう…」


クレナイが少しそっぽを向きながら、何故か手で顔を仰いでいる。

いや、猫飼いにしてみたら、当たり前の朝の挨拶ですよ?














朝の鐘が鳴る少し前、北門に着いた。

今日はクレナイ以外のメンツは、皆元の姿になってます。当然やね。

クレナイはドラゴンの姿になると、でかいので、人化したままで同行すると。

まあ確かに。でかい。


商人のハリムさんと、その息子さんだというカリムさんが、荷馬車を引いて現われた。

やっぱり似てるなぁ。

ハッサムオッサムポッサム3兄弟に。

それとなく親戚なのかと尋ねてみたけど、全く関係ないと。なんでそんなに似てるんだよ。


ドラゴンは?と聞かれたので、用意していた答えを言う。

ドラゴンは目立つし大きいし、人の近くにいると皆が怖がるので、街の外の見えない所で待機してもらっていると。

この先も姿は見えないかもしれないけど、ちゃんと付いてきてくれると。

言い終わると、ハリムさんがほっとした顔をしていた。

カリムさんの顔が、ちょっとクレナイに釘付けになってる気もするけど…。

きっと気のせいだ。














ソラマメの街を出て、ぽっくりぽっくりと進んで行く。

私はシロガネの背に揺られ、クレナイは荷馬車の隅を借りている。

歩いて行っても良いと言ったら、何故か必死にカリムさんが荷馬車に乗るように説得していた。なので有り難く乗せてもらっている。


「貴女のことは噂になっていたんですよ。珍しいペガサスを連れている上に、あのコロシアムでドラゴンと対峙し、見事に撃破したと。私もその試合を見たかったですよ」


ハリムさんが話しかけて来た。


「あーははは、噂になってましたか…」


早めに街を出て正解だったかしら?


「しかも、貴女に護衛されてきたと、サム商店の3人があちこちで自慢しておりましてね。運ばれてきた商品も、ペガサスに護衛してもらってきたものだと上手いことを言って売り捌いているんですよ」


さすが商人。付加価値の付け方が分かってるね。

でもなんか、勝手に名前…ではないけど、威厳?を使われるのもなぁ。まあいいか。


「しかし、あの3人共、意見が食い違っておりましてね。1人は、ペガサスがとても強くて格好良かったと自慢しており、1人は、いや、グリフォンが噂に違わぬ勇猛果敢であったと自慢しており、1人は、いやいや、妖精こそ可愛い上に実に見事な魔法を使うと自慢しており、三者三様なのですよ」

「そうなんですか」


3人でそんなに意見が違うものなのか。面白いものだ。

その後も他愛のない話をしながら進み、初日は特に何事もなく、野宿する場所に着いた。


ハヤテに、なるべく小さな獲物を獲ってくるようにお願いする。

まずは大きい獲物ではなく、小さな獲物から捌く練習だ。

できるだけウサギや鳥をお願いしますと、ハヤテを見送る。


リンちゃんにはお馴染み野草を探してもらって。


ハリムさん達も夕飯の準備を始める。

と言っても、ハリムさん達はもちろん、こんな自然味溢れる中で温かいご飯など食せるわけもなく。携帯食料で済ませるようです。


私は、シロガネに竈を作ってもらって、薪を拾って来て、新しく買い足した鍋を取り出す。

水もシロガネに出してもらう。なんだかんだで役に立ってもらっているシロガネ。

ナイフを軽く洗い、火にかざして滅菌。

すると丁度いい所にハヤテが帰って来た。


「クア~」


なんか綺麗な鳥を2羽。よくやったねと頭をナデナデナデ。

ちょっと大きめの鶏くらいの大きさの、羽の色が見る角度によって七色に変化するとても綺麗な鳥だった。


「そ、それは!!」


ハリムさんが声を上げた。


「ご存じなんですか?」

「ご存じも何も! それは迷彩鳥ではないですか!」


メイサイドリ?美味しいのでしょうか?


「その七色に輝く羽は、魔力を通すと周りの景色と同化して見えなくさせてしまうという効果を持っております。なのでその素材は高値で取引されるのですよ」

「はあ」


まあ、お金はそこそこあるからいいんだ。今の問題は、この鳥が美味しいかどうかなのだ。


「この鳥は食べられますか?」

「もちろんです。お肉も美味しく頂けますよ」


それを聞いて安心です。


「んでは早速」


羽を、


ムシッ、ムシッ、ブチッ!


毟り始めた。


すると、蒼い顔をして息子のカリムさんが駆け寄ってきた。


「そんな! そんな毟り方ではいけません! せっかくの希少な素材が…。売るのならもっと綺麗に剥かないと!」

「別に売る気はないので。私は今お肉を食べられる否か、その方が重要です」

「ででで、でしたら!」


再び毟り始めようとした私の腕から、カリムさんが鳥を奪い取った。


「わ、私が解体致しましょう。これでも少しは出来るのです。それで、ついでと言ってはなんですが…。是非、この羽を買い取らせて頂けないかと…」

「ああ、別に私は入りませんし、差し上げますよ」

「いえいえ、ただというわけには…」

「いえいえ、構いませんので…」


しばし押しつけ合っていたが、私が折れた。

そんなに希少なのかね?この羽?


カリムさんが綺麗に羽をむしり取り、綺麗に解体を済ませる。

適当な大きさに切ってもらった肉の塊を、少し煮立ってきていた鍋につっこむ。

リンちゃんの野草も適当に切ってぶち込んで、あとは味付け。


「え~と、これとこれかな?」


スープの素と、塩胡椒。

スープの素を鍋にツッコミ、適当に塩胡椒で味付け。


「どれどれ」


一口飲んで…。


「しょっぱい…」


あれ、塩を入れすぎた?


「水足したら良い感じになるかしら?」


ということで、シロガネに頼んで少し水を追加。


味見…。


「う~ん?」


なんか、足りないような…?

もう一度塩胡椒。


「やべ、入れすぎた」


勢いよくいっちゃった。

味見…。


「うべ」


しょっぱい。

またシロガネに頼んで。


「? こんな感じ?」


塩を取り過ぎて舌が変な感じになっている。味がよく分からない。


「まあいっか」


というか、これ以上鍋には入れられません。

余ったらクレナイに処分してもらうつもりではあるけど。

せっかく作ったのだしということで。


「ハリムさん達も、いかがですか?」


声を掛けた。


「ほお、せっかくなので頂きますかな」


鍋に並々と出来た迷彩鳥のスープを見て、ハリムさんとカリムさんが嬉しそうな顔をする。

差し出された器によそって、皆で座って頂きます。

クレナイも一緒です。


一口飲んで、顔を顰めた。

う~ん、思ったより変な味?


ふと見れば、ハリムさんとカリムさんが青い顔をしている。


「あ、主殿…」

「何? クレナイ?」

「な、何を、入れたのじゃ…?」

「普通に、スープの素と塩胡椒」

「それで、どうしたらこんな味に…」


クレナイも青い顔をしている。

うん、なんかゴメン。

自分でもどうしてこんな味になってしまったのか分かりません。


久しぶりにいっぱい書けました。眠気が凄い。

疲れているのでしょうね。

残業続きだから仕方ないです。

でも愛猫とのモフモフは通常運転です。

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