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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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悲鳴

前回のあらすじ~

枝毛をあげた。

「鱗、良かったの? あれってかなり希少なアイテム…というか素材になるんじゃ…」

「良いのじゃ。あそこは痛んでおったのでな。ただ捨てるよりは有効に活用してくれるじゃろ」


枝毛のようなものでした。

依頼を出した商人さんに会いに行く。

商人さんには大喜びで受け入れられた。


「今話題になっているペガサスの冒険者さんにお受け頂けるとは! しかもドラゴンもお持ちになったのですよね? 話は聞いていますよ!」


テンション高かった。

ていうか、いつの間にか有名人になってる?

早めにこの街を出よう。

荷物などはほぼ準備出来ているということで、明日の朝に出発となった。

他に冒険者は?と聞いたが、私の他にはいないそう。私が受けてくれるのなら他の者はいらないだろうと。まあそうか。

私も今日中にいろいろ買い物しておかないと。

明日の朝の鐘のなる頃、北の門で待ち合わせとなった。


「携帯食料はほとんど残ってるから、ちょっと調味料を買いに行こうか」


自分で料理出来るようになったらいいよね。


「あれは料理と言うのか…」

「クロ? 何か?」

「なんでもないの」


クロが何か呟いたけど、聞こえなかった。

調味料を買いに行ったら、また赤い粉を買いに来たのかと言われた。

もうそれはいらないよ…。














夕飯を食し、体を洗い、いつもの通りに八重子が倒れるように眠りに就いた。

クレナイも昨日と同じように八重子の隣のベッドに潜る。

リンちゃんは頭の上。クロは左脇だ。

ところが、少しするとクロがムクリと起きだし、そっと窓の外へと出て行った。

クレナイはそっとそれを目の端に留めながらも、布団をかけ直し、眼を瞑った。


シロガネとハヤテが入る厩舎へと、黒猫が入って行く。


「む、クソ猫か」

「まだ起きておったのか駄馬」

「駄馬ではない! ペガサスだ!」


いつものやりとりをし、ハヤテの方を見てみると、ハヤテは既に夢の中。


「特に変わりはなさそうだの」


ひょいっと柵の上に飛び乗る。


「昼間の従魔泥棒の話しを気にしておるのか」

「まあの。特に必要ないと言え、すでに八重子が仲間と認めてしまっているのだ。お主らがいなくなったら八重子が泣く」

「必要ないとはどういう意味だ」

「そのままの意味だがの」


シロガネがクロを睨み付けるが、クロは涼しい顔のまま。


「そういえば貴様。何故我の雷魔法を知っていた? 他にも何故か知らぬはずのことを知っていたな? 何処で知った?」

「おや、話していなかったかの。我が輩は他人の頭の中を覗くことが出来るのだ」

「は?」

「お主やハヤテ達が良からぬことを考えていないかとの。頭の中を覗いたことがある。その時に知ったのだ」

「あ、頭の中を…?」


シロガネの顔が青くなる


「もちろん、その1回だけであるぞ」


何故かシロガネがほっとした顔をする。


「覗いてはおらぬが、強い気持ちなどは覗かぬでも見えてしまうことがある。もっと八重子にブラッシングしてもらいたいとか、もっと鼻筋を撫でてもらいたいとか、首元を叩いてもらいたいとか…」

「わあああああああああああああああ!!!」


シロガネが顔を赤くして悲鳴を上げる。


「うるさいぞ。ハヤテ達が起きてしまうかもしれないではないか」

「貴様! 貴様! 貴様ぁぁぁああああ!!」

「別に覗いたわけではないぞ。見えてしまっただけだ」

「うああああああああああ!!」


柵の上で涼しい顔をするクロ。その横で身悶えるシロガネ。


「大丈夫だの。まだ(・・)八重子には言ってはおらぬ」

「い、言うなよ! 絶対に言うなよ!」

「お主が八重子の邪魔をしなければ、言うことはないだろうの」

「じゃ、邪魔などせん! 我は主のお役に立ちたいだけだ!」

「人の姿で八重子に添い寝したいとか…」

「やめろおおおおおおおおおお!!」


しばらくの間、厩舎から何故か悲鳴が聞こえていたのだった。










===================================










シロガネはちょっと不満だった。

新たな主となった人間に不満があるわけではない。

その主があまり自分を大切にしてくれないことが不満であった。


今までであれば、何処へ行ってもシロガネは重宝された。

幻の聖獣だの、超希少な魔獣だの言われ大切にされた。


前の主でさえ、自分にはあまり暴力を振るわず、どちらかというと人に見せびらかして楽しんでいた。

実を言うと、やはり背に乗りたがった。

乗せろと命令されたので大人しく乗せたのだが、乗った途端に前足を思い切り上げ、後ろに振り落としてやったのだった。

ついでに後ろ足の蹴りを見舞ってやったのだが、それは掠っただけで終わってしまった。実に残念である。

強かに腰を打ったらしく、しばらく唸っていた。

それからは二度と乗りたいとは言わなくなったのは有り難かった。


新しい主になった時も、乗りたがるものだと思った。

しかし、その主は乗りたがるどころか、乗ることを拒否する始末。

まあ、それならそれでもいいかと、自分を納得させる。何故納得させたのかは考えない。


前の主のようにグリフォンのハヤテや妖精のリンに、危害を加えるのではないかと最初の頃は様子を伺っていたが、その気配は全くなかった。

2人を守ろうと少し強い言葉で牽制していたのに。

人間になど遜らないぞと思っていたのに、黒猫にさえも遜る人間だった。


全くもって調子が狂う。


そして、妖精のリンが主に最初に心を開いた。

妖精は人の心の機微を感じる所があるから、この人間が自分に危害を加えないと理解したのだろう。

次に、グリフォンのハヤテが主に心を開いた。

優しい手に撫でられ、新しい主が自分を殴ったりしないと分かったのだろう。

2人のことを心配していたシロガネとしても、それは嬉しいことであった。


だが、だがしかし。


自分は最初の頃に主を拒絶するような言動をしている。

それに、やはりプライド的に人間に遜るようなことはしたくない。

なので、ちょっと言動がつっけんどんになってしまっていた。


実は、実を言うと…。


ちょっとしたことで頭を撫でられているハヤテが羨ましい。

自分ももっと撫でてもらいたいし、ブラッシングもしてもらいたい。

肩に止まったりして、時折主と目を合わせて微笑み合っているリンが羨ましい。

しかも寝ている時も側にいるなんて!

自分だって主に笑顔を向けてもらいたいし、もっと側に寄っていたい。


しかし、しかし、しかしいいいぃぃぃぃぃ!!!


人間に遜るなど!


遜るなどおおおおおおおおぉぉぉぉ!


でも、撫でてもらいたい!背に乗ってもらいたい!一緒に寝たいいいいい!

そんな事を考えつつも、そんなことなどおくびにも出さず、平気の平左の顔をしている。

だが、内心は嫉妬の嵐だった。


聖獣っすよ?!崇められる聖獣っすよ?!


どこぞの村に行った時も、「ペガサス様」と呼ばれ、崇められたのに。

宿屋の娘も、「ペガサス様」と言いながら、良い感じにブラッシングしてくれたし。

もうちょっとなんていうか、そういう扱いをしてくれても良いんじゃないかとおもうのだがなぁ~。


シロガネは不満であった。


ハヤテやリンに比べると、自分の扱いがなんとなく粗雑なのではないかと思い、不満を感じていたのだった。

しかし、プライドが邪魔をして、素直に甘えにいけないのであった。

これもツンデレというのであろうか?


寝ぼけ眼で書くものではないと反省。

加筆、習性いたしました。

ちょっとの間、仕事が一段落付きそうです。

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