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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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オークの調査

前回までのあらすじ~

ハヤテが子供になって、散歩したらオーク獲ってきた。褒めるのは飼い主の義務です!

ギルドに持って行ったら、何故か奥の部屋に通された。

ギルマスのコウジさんが出て来た。え、なんで?大事?


「さて、ヤエコちゃん。このオーク、どこで獲ってきたんだい?」


エリーさんがそっとお茶を置いて、ギルマスの後ろに立つ。


「ええと、すいません、ハヤテが獲ってきたので、ちょっと場所までは…」

「ハヤテ…、そのグリフォンのことかな? そのハヤテ君に聞けないかな?」

「ええと、シロガネ、翻訳出来る?」


シロガネ、今は人の姿になって、私の後ろに立ってます。


「もちろんであるぞ、主。ハヤテ、お主あれを何処で獲ってきたのだ?」

「クア~グア」

「・・・。適当に飛んでいたので覚えていないと…」


がっくり。


「何か、場所の特徴とか分からないかな? 大きな木があったとか、高い崖があったとか」


ギルマス、諦めていない。


「クア~」

「森の中を1匹で歩いていたらしい」


がっくり。

だめだこりゃ。


「えと、あのオークって、そんなにやばい奴なんですか?」


何故こんな大事っぽくなってしまったのか気になる。


「いや、あいつはDランクの魔物なんだけどね…。倒すのは然程難しくは無いんだけど…。あれはね、美味いんだよ」

「美味い?」

「そう。美味いんだよ。だからね、巣が見つかると、定期的に間引きに行くんだ。あまり繁殖させると近隣に被害が出るからってのもあるけど。あれが住み着くと、近くの街はウハウハだよ。なにせ、美味いものが向こうからやって来るんだから」


なるほど。さすがは豚肉と言った所か。


「人が攫われるとかはないんですか?」

「あるよ。だけどオークはゴブリンと違ってちょっと頭が良いせいか、女性に乱暴しないんだ。ゴブリンは生まれて勝手に育つみたいだけど、オークは生まれてから育てる母親的存在が必要らしくてね。産ませても育児をされなきゃ育たないらしい」


へ~、そんなことがあるのか。


「女がいない時は、巣の中の数匹が性転換して繁殖するみたいだよ。面白い魔物だよね」


時折オークの雌が獲れる事があるらしい。雌は珍しいが、雄ほど美味しくはないんだそうだ。


「場所が分かれば…、焼き肉パーティーが出来るんだけど…」

涎、出かかってますよ。


「生姜焼き、豚カツ、豚汁…」


このギルマス、飢えてる?


「な~う」


クロが膝の上で鳴く。何か言いたいみたい。

あ、そっか。エリーさんがいるから話せないのだ。一応世間様には普通の猫通してるものね。


「あの、ギルドマスター…」

「ん?」


ちらりとクロを見る。

それで察してくれたようだ。


「エリー君、ちょっと出ていてもらえるか」

「え? はい」


不思議そうな顔をして、エリーさんが退室していった。これで大丈夫。


「すまぬの。ギルマス。あまり我が輩の正体をバラしたくはないのでの」


クロがテーブルに広げてある地図の上に飛び乗る。


「いや、バラさないで正解だと思うよ。何に狙われるか分かったものじゃないからね」


コウジさん、いい人だ。


「我が輩もさほど正確には分からぬが、ハヤテの気を追っていた所、この辺りでオークを仕留めていたの」


いつの間にそんなことしてたんですかクロさん。

クロが指さす(正確には爪)所を覗き混むギルマス。


「ふ~む。近くに崖があるな。となると、洞窟でも見つけて住み着いてるのかもしれないな」

「調査隊を出して詳しく調べた方が良いだろうの。してギルマス、いくら出す?」


いきなり何を言ってるんですかクロさん。


「我が輩達ならば、調査だけなら飛んで帰ってくれば良いだけだの。そこらの冒険者よりも早くて正確な調査が出来るぞ? いかがする?」


シロガネありきで話してるよ。シロガネがちょっとむっとしてるよ。


「なるほど…。確かに。いいだろう。金貨3枚でどうだ?」


調査だけで金貨3枚?


「ふむ、それだけか? オークが獲れれば、この街も潤うのであろう?」


豚肉万歳。


「むう…。分かった。5枚でどうだ?」

「ふむ、まあ良かろう。それで手を打ってやろう」



私を置いて話が纏まりました。

いや、まあね。確かに私は交渉とかやったことないですけどね。ちょっといじけたくなりますよね、これ。

ちなみに、牛肉はミノタウロスだそうです。










そのままギルマスに依頼書を作ってもらい、時間もあるしと向かうことにする。

地図もちゃんともらいました。

しかし森の中、東西南北間違えたらさっぱり方向が分からなくなる。


「あれ、どっちが上だっけ?」

「こっちが北だぞ八重子」


クロの方が分かってる。

シロガネの背に乗って、オークの巣があるのではないかと思う方向へ向かう。


「そういえばクロ、クロは索敵のスキルを持ってるのね?」

「索敵というか、まあ周りの気配を調べる感じかの」

「くう、私に何故そういうスキルがないのか…」

「索敵というか、敵の気配を感じるくらいなら、駄馬でもできるだろうの」

「駄馬とは誰のことだクソ猫」

「誰とは言ってないが、自覚があるのかの」

「振り落とすぞ貴様!」


空の上で喧嘩するな。


しばらく飛んで、まずはハヤテがオークを倒した辺りに降りる。


「ここら辺? ハヤテ」

「クア~?」


ハヤテも分かっていない。


「ここで合っておるぞ。さて、地図からして崖はこっちの方かの」


スタスタと歩き出す。


「待ってよクロ」


クロを先頭にその後を付いて行く。シロガネは人の姿になっている。

人が通れる所を選んで歩いて行ってくれているようで、随分追いかけやすい。

しばし森の中をみんなで行進していると、先頭を行くクロの足が止まった。


「ふむ。あれかの」


茂みの下から何処か覗いている。

私達は茂みの上からクロの見つめる方を覗きこむ。

崖の下に洞窟ができており、そこに人型の影。

よっく見れば、頭は豚だ。オークだ。

石槍みたいなものを持って立っている。見張りなのだろうか。


「何体くらいいるのかな? それも調べた方がいいのかな? ってかそんなの調べられないか」

「いや、小さな群れのようだの。外にあの1体。中に10体ほどいるの。外に出ている奴もいるかもしれんとなると、20体近いくらいの群れかの」


クロ、万能です。


「何体くらいで何体間引くんだろ? 10体って多いのかな?」

「最悪、2体残っていれば繁殖はするであろうの」


まあそうなんだけどね。


「従魔紋つけて家畜みたいにできないのかな? 魔獣ならできるでしょうに」

「その主となる人間はその牧場から決められた範囲しか動けなくなってしまっても?」

「そーでした」


まさかオークをゾロゾロ連れて歩くわけにもいかないものね。


「八重子、地図に印はつけたか?」

「おっと、そうでした」


地面に地図を広げる。


「ここだの」


クロが可愛い爪で指し示す。

う~ん、クロの爪切ってないから伸びてるなぁ。切りたいけど、狩りをするならこのままの方が良いのかなぁ?抱っこする時とか手に引っかかったりしてちょっと痛いのよね。


「八重子、何を悩んでおる」

「クロの爪について」

「八重子には立てぬように気をつけておるだろうが」

「えへへ~。クロってば優しい」

「たわけ。早よ印をつけろ」


鉛筆でバッテンを書く。


「む」


クロの顔が険しくなる。


「どうしたの?」

「うむ。どうやら気付かれたらしいの」


茂みを覗くと、門番よろしく立っていたオークがこちらに向かってくる。


「ふむ。まずいの。森の中からも3体ほど気配が近づいて来るの」

「え?! 挟み撃ち?!」

「いや、気配がバラバラだ。気付かずにこちらに近づいていると思われるの。さて、どうしようか」

「逃げよう!」

「逃げるにも、ここでは羽を伸ばすのは難しいと思うが」


鬱蒼と茂る森の中。周りは木立で囲まれており、上空にはたくさんの葉をつけた枝が広がっている。確かに、ここから飛び立つのはかなり困難が伴うかもしれない。


「クア!」

「そうだのう。1体くらいなら倒しても良かろう」


倒せるのね。


「よし、後ろの3体は我が輩がどうにかしよう。ハヤテ、お主は前の1体をどうにかするのだ」

「クア!」

「八重子達はここから動かずに待っておれ。馬、八重子に怪我をさせるなよ」

「馬呼ばわりするでないわ」


クロが茂みに消えていった。

同時にハヤテも前のオークに向かっていく。

うわ~、この前のホブ程じゃないけど、オークも結構でかいのよね。ハヤテ大丈夫かしら?

風を繰り、火の弾を発射する。巻き上がる煙などを利用し、オークの死角からカギツメで切り裂く。

おお、この前よりも戦い方が上手くなってる気がする。

オークも手に持った石槍で必死にハヤテを追うが、ハヤテの素早さに追いつけないでいる。

ハヤテにあちこち傷つけられ、満身創痍になっていくオークだったが、これがまたなかなか倒れない。


「頑張れハヤテ! 行け! そこだ!」


茂みから小声で応援。

リンちゃんも肩に止まって、私のように腕を振り上げて応援している。

可愛い…。

ザザッと音がして、クロが戻ってきた。早い。


「まずいの。さっさとずらかろう。馬、八重子を背に乗せて、いつでも飛び立てる準備をしておけ」

「馬と呼ぶな!」

「後ろの3体ダメだったの?」

「いや、後ろは良いのだが、騒ぎを聞きつけて洞窟から仲間がやってくるようだの」


団体豚の行進です。


「これ以上増えるとハヤテだけでは対応しきれんだろうし、ここで倒しても街まで運べなければ倒し損だの。下手に減らしたことで報償金が減らされても困るしの。あの1体を倒したらすぐに逃げた方が良かろう。我が輩はハヤテの援護に回る。馬は飛び立てる所まで八重子を運べ」

「我に命令できるのは主だけだぞ!」

「シロガネ、お願い」

「かしこまったである。主」


シロガネちょろい?

クロが飛び出し、ハヤテの援護に回る。

というか、どういう方法かオークを足止めし、止まった所をハヤテの風の魔法が切り裂いた。

首筋を切り裂かれたのが致命傷になったか、オークが倒れる。

馬の姿に戻ったシロガネに跨がって、木々の切れた所へ急ぐ。


「クロ!」


クロが乗ってない。


「ハヤテの背に乗せてもらう! 先に行け!」


その言葉を聞き、シロガネが翼を羽ばたかせて空に舞い上がった。

洞窟からオーク達が飛び出してくる。


「ハヤテ! 背を借りるぞ!」

「グア!」


ハヤテの背にクロが飛び乗った。

ハヤテが倒したオークを前足で掴んで、力強く翼を羽ばたかせる。

それを見たオーク達が、次々に手に持っていた武器らしきものや適当な石などをハヤテに向かって投げてくる。


「ハヤテ!」


ぶつかる!と思ったが、何故か全てハヤテの前で何かの壁に阻まれたかのように弾ける。


「言ったであろう。我は防御魔法が得意であると」


シロガネが胸を張った。


「シロガネ、初めて役に立った!」

「初めて?!」


あ、いや、空飛んで運んでもらってるっけ。

ハヤテ達も無事に空に舞い上がり、まだ頑張って何か投げてくるオーク達を後に、私達は街へと帰っていった。


これ書いてると、うちの子が目の前に座ってきます。

書いてないで構えということなのでしょう。

なので、遠慮せずにモフモフすると、ものの数秒でいなくなってしまいます。

何故だ・・・。

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