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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
31/194

とあるペガサスの話?

前回までのあらすじ~

ゴブリン片付けて川で遊んだ。

今までの環境がどんな物だったのか、私はよく知らない。

いまだに触れようとすると少し体を固くするハヤテ。

人間がまだ怖いのだろう。


ということで、子供は子供に任せてしまえと、興味津々に近づいて来た子供達に、あまり乱暴に扱わないことをきつく、きつ~く言い含め、ハヤテにも人間の子供達は傷つきやすいので手加減を忘れないことを言い含め、お互いに遊んでもらった。

取ってこいを教えたら、子供達が順番に投げて、そのうちハヤテが空中キャッチするようになった。余計に盛り上がってました。

一人ハヤテに対抗するように少年が走っていたけど、うん、子供だのう。


大人達はシロガネに興味津々。

近頃雨が少ないというので、シロガネにちょっと水を頼んだら、良い感じに水を撒いてくれました。

それからというもの、


「ペガサス様」

「ペガサス様」

「ペガサス様」


と様扱い。

うちの飼い葉はどうだとあちらこちらから持って来て、シロガネに献上していた。


「うむ。悪くない」


などと偉そうにシロガネ堪能してましたよ。食べ過ぎに気をつけてね。

若い女性限定(・・・・・・)でブラッシングもさせていたよ。…おとこだな。


怪我人はリンちゃんの前に並ぶ。

そう人数の多い村でなくて良かった。


「それは、妖精?」


と目敏い村人がリンちゃんを発見し、もし良かったら古傷を…、なんて言ってきた。

私はリンちゃんの体力?魔力?を心配して断ろうかとしたんだけど、リンちゃんがひらりと前に出て、ちょちょいのちょいで治してしまった。

それから行列が…。

リンちゃんを心配して、後ろでリンちゃんがいつ倒れても大丈夫なようにじっと見ていたら、クロにボソリと「目つきが怖いぞ」と注意された。

村人がなんだかよそよそしかったのはそのためか?


いやあ、昔読んだ漫画にさ、癒やしの力を持っている青年が、その力を使いすぎて最後死んじゃうって話があってさ。その青年は自分の生命力を削って他人を治していたから、それが分かった時にはもう手遅れで、体中がボロボロになっていて。最後の一人を治し終えたと同時に、心臓が止まっちゃうんだよね。

リンちゃんとは力の使い方が違うかもしれないけど、やっぱりちょっと心配になるじゃん?妖精も魔力切れとかでふらふらになるのかは知らないけど。


お礼にと猪の料理を振る舞ってくれて美味しかったわけだけど、リンちゃんは食べられないわけだし、なんとなく割に合わない感じがした。けど、こんな如何にもお金ありません的な村から金銭を要求するのも気が引けて、口には出せなかった。

リンちゃんが大丈夫という風に頷いていたので、まあいっか。


シロガネは存分にもてはやされ、ハヤテは存分に遊び倒し、リンちゃんも女性陣から可愛いわね~と褒められまくり、穏やかに一日が終わりました。

クロはずっと私の膝の上におりましたよ。

子供も知らない人も、猫は苦手ですからね。











翌朝、村の皆に見送られ、子供達は特にハヤテと別れを惜しみ、私はシロガネに跨がって、村を後にした。

ハヤテも何度も振り返っていたから、子供達と仲良くなれたのだろう。良きかな。

また空を飛んで、いつもの街へと帰る。

あ~、シロガネがいると移動が楽で良いな。


「そういえばシロガネっていくつなの?」

「年であるか。確か100と23であったと思う」

「123…。おじいちゃんだったのね…」

「ペガサス的に見ればまだまだ若造であるぞ!」


ペガサスは長いと1000年生きる者もいるらしい。鶴並に長生きだ。(鶴もそんなに生きません)


「なんで従魔になっちゃったの? やっぱり小さい頃に捕まったとか?」


ハヤテは卵の頃に攫われて来たらしいけど。


「え? その、なんだ…」


急に歯切れが悪くなる。


「そ、その、手強い人間にだの、であるからして…」

「昼寝していた所にいつの間にか胸に従魔紋を刻まれていたらしいの」

「このクソ猫! 何故知ってる!」


ちゃんと前を見て飛んで下さい。











とても綺麗な湖を発見しその畔で休憩していた。

あまりの気持ちよさに、つい寝転んで昼寝してしまった。

そして気がつくと、目の前に一人の人間。


「や、やったっす…。ペガサス、従魔にしちゃったっす…」


言われて、胸の辺りに違和感を覚えた。

なにやら抗えない力の鎖をかけられたような感触。逃げようにも逃げようとする意思を掻き消されてしまう。


「ペガサスさん! 私と一緒に、お金稼ぎましょう!!」


ペガサスを捕らえたのは、金がない、なりたてホヤホヤの従魔師だった。


「これで借金も返せるっす。あの家も売り払わなくて済むっすよ」


その人間の雌、チャージャと名乗ったその女は、元々従魔師だった父の後を追って従魔師になったらしい。ところが従魔師は従える従魔が優秀でないと、冒険にも仕事にも出かけられないものである。なので従魔師を募集している所などに片っ端から面接に行くも、まだ従魔も従えておらず、経験のなかった彼女は片っ端から落ちまくった。

生活に困り、ついには危ない所から借金をしてしまったのである。

その返済期限が来月末ということらしいのだが…。

そのチャージャの家へと行くと、


「おうこら! 何処いっとたんじゃこら!」

「ひ! なんであなた方がいるっすか!」

「なんでって、支払期限が今月末って言っといたじゃろうが!」

「あれ?! 来月では?!」

「先月に今月までと言ったろうが!」

「あああああ! 日にち間違えてた!」


どうやらかなりのうっかりさんだったらしい。

そして彼女は、泣く泣く捕まえたその日に、ペガサスを手放すことになった。


「ううう、短い付き合いでしたけど、ペガサスさんに会えて良かったっす。術がちゃんと使える証明できたっす」


使ったことなかったんかい。

そしてペガサスはそのまま借金の形に売られ、いろいろな人手を渡り、あの屋敷へと辿り着いたのだった。











「シロガネを捕まえた人もかなりのうっかりさんだったのね…」

「類は友を呼ぶというが、その良い例だの」

「それはどういう意味だクソ猫」


ガヤガヤ言い合いつつ、行きの道を覚えていたのか、特に私がナビゲーションしなくても街に着いた。

車より便利です。

二度目なのでいくらか落ち着いた門番の衛兵さん達にチェックを受けて、無事に街へ帰還。さっそくギルドへ向かう。


「ああそっか。ここでシロガネが人に化ければ、一緒にギルドの中に入れて、外で人だかりが出来ることもないんじゃん?」


わざわざ宿に寄ることもないしね。


「それは名案であるな」


ということで、ちょっと人のいない所へ行って、シロガネ人バージョン。

白髪の美青年が現われる。

一緒に歩き始めると、なんだかチラチラとこちらを見る女性が多い。

うん、そうだよね。見るよね。

まあ、その視線は私に集まっているわけではないし、馬のまま…ペガサスのままで歩いているよりはまだましなので、そのまま歩いた。

ギルドに着いて、中に入る。


「こんにちはエリーさん」

「あら、こんにちはヤエコさん。やっぱり別の依頼にするのですか?」


と笑いながらこちらを向いたエリーさんが固まる。

その視線は、私の後ろ、シロガネに注がれている。

というか、ギルド内にいた人達全員の視線が集まっている気がするのだけど…。


「!!!!!」


何故か慌てて手で髪を整えだす女性陣。ギルド職員の中には手鏡を覗く人も。何があった。


「えええ、えと? えと、ヤエコさん? 何か、ご用で…?」


エリーさんが挙動不審になってます。

慌てて髪を手手櫛で整え、服装の乱れを直し、私を見ながら、チラチラと後ろに視線を送る。

う~ん、人化させない方が良かったかなぁ?


「依頼を片付けてきたので、確認をお願いしたいのですけど。これ、確認書と、あとゴブリンの討伐証明部位です」


どさりとカウンターにその袋を置く。


「え? は、はい?」


エリーさん、再びフリーズ。


「片付けてきた? え~と、依頼内容はゴブリンの調査だったはずでは…」

「可能なら退治してくれともあったと思いますけど」

「いやまあ、そうなんですけどね…」


エリーさんが袋を見る。


「これ、全部そうですか?」

「ああ、ホブゴブリンが1体と、ゴブリンメイジが1体いました。分かり易いように一番上に置いたはずだけど…」


袋を開けてみる。メイジのほうはちょっと紫がかっていて、ホブのほうはでかいから一目で分かる。


「これとこれがそうです。え~と、ちなみにこれ、メイジが身に付けていた装飾品の一部です」


とジャラリとカウンターに置く。


「分からなかったのでメイジもホブも同じ左耳取って来たんですけど。で、エリーさん?」


エリーさんの顔が心ここにあらず状態になってます。


昔読んだ漫画とは、パタリ○という漫画です。作者自身が読んでます。

覚え違いでなければ3巻あたりに収録されていたお話しです。

宇宙に行くことを夢見る青年は、他人を治す不思議な力を持ち、主人公の少年国王の命に従い、多くの患者を救っていく。金儲けのために。

ところがその青年の力は自分の生命力を他人に移すという、自分の寿命を削る力でした。

それに気付いて慌てて止めようとするも、最後にどうしても治して欲しいという患者が現われ、その人を治し、青年はそのまま心臓を止めてしまうと言うお話し。

主人公の少年国王の初めての涙に切なさを覚えました。

気になる方は読んでみてください。ていうか、パタリ○って3巻なんて売ってるんだろうか・・・。

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