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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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金貨200枚従魔付き

前回までのあらすじ~

〈猫耳亭〉に短期のヘルプに。制服がメイド服で猫耳付きだった。

それは戦場だった。

ドジっ子お約束のお皿割りはさすがにやらなかったが、注文を間違えて他のテーブルに持っていってしまったことが2、3度。お客さんもいい人達ばかりで、初日であわあわする私をいろいろ手伝ってくれた。感謝。


凄いのはキシュリー。あちらこちらから飛んでくる注文を、一つも間違えずに受けていた。

キシュリー曰く、慣れと常連さんだからとか。

だいたい常連さんはいつも同じ物を頼むので、顔を覚えているから何を頼むのか分かるのだと。凄いな。


クロは開店前にのそりと現われたチャーちゃんこと茶虎の女の子と、鼻ちょん挨拶をしていた。どんな挨拶を交わしたかは分からないが、どうやら喧嘩するまでもなく、お互いを認め合ったらしい。

チャーちゃんはいつもの籠、クロは用意された籠にそれぞれ丸くなって寛いでいた。

時折籠から出て、お客さんの間を回ったりして、挨拶したり撫でてもらったり、おこぼれをもらったりしていた。

ぬう、人の食べ物は猫に良くないのだがな。食べ過ぎると肥満も考えないと。

忙しい中そんなことも考えていた。


昼の前哨戦を潜り抜け、夜の本番。怒濤の時間を潜り抜け、終わった頃にはぐったり。

有り難いことに昼食、夕食は賄いを食べさせてくれるとのこと。有り難や。

宿に帰ってもすでに夕食の時間は終わってるものね。

夕食を頂き、疲れた体を引き摺りながら宿へ帰り着く。

ウララちゃんが出迎えてくれた。なんて優しい。宿屋の鑑。

タライ風呂を頂くのも億劫だったので、すぐに寝ることに。

布団に潜り込むのももどかしく、意識がストンとなくなった。





ベッドに入ると同時に寝息を立て始めた八重子を確認し、クロがまた、部屋の施錠を入念に確認し、外へと出かけていった。












次の日も戦場を駆け抜け、その次の日も戦場を駆け抜け、毎度ぐったりとしながら宿へと帰る。


「我が輩は楽だがの」


そりゃそうでしょうよ。籠の中で寝てるだけだしね。まあ猫だからそれでいいのかもしれないけど。

猫の睡眠時間は平均で14時間。家猫だと20時間近く寝るとか。

この世界に来て私の世話でほとんど寝てなかった気がするから、ちょっと良かったと思う。

そんなこんなで5日目の昼の時間を過ぎて少し店内が閑散とした頃、それはやって来た。


「こちらに猫連れの冒険者がいると聞いてきたのだが…」


扉を開けて入って来たのは、あの豚屋敷で見た背の高いローブを羽織った男。


「何かご用ですか?」


とうとう来たのかと、覚悟を決めてその男の前に立つ。

大丈夫。クロも見ている。命が取られるようなことは、ここでは無いはず。多分…。


「ヤエコさん、と申しましたかな? 先日は失礼なことを致しました。お詫びも兼ねて、少しお話しをしたいのだが、大丈夫だろうか?」

「はあ?」


お詫び?あれ?聞いてたのと違うような。

一応事の次第はお店に説明してあったので、キシュリーに断り、端の席に向かい合って座る。

クロが籠から出て来て、私の目の前に座る。目の前にクロの後ろ姿が…。可愛い…。

ではなくて、目の前に座る人物のほうに視線を向ける。


「さて、まずはまだ名乗ってもいなかったと思うので、自己紹介させてもらうが、私はドゴット。

 従魔師をしている。

 魔獣を契約する時の従魔紋を作成することができるので、その能力をアブーラ様に認めて頂き、ほぼ専属で仕えさせて頂いていた。

 知っての通り、アブーラ様は従魔を集めるのが趣味だったのでな。私のこの技能は必須のものであった」

「はあ」


なんだ?自慢しに来たのか?

というか、なんだか表が騒がしい気がするのだが。


「まあそれでと言うか、この度、アブーラ様のちょっとした個人的な理由から、アブーラ様の所持していた従魔3体を、そちらにお譲りすることになったので、是非とも受けて頂きたいのだが」

「はあ?」


話が見えません。


「いかがだろうか? 従魔と言ってもただの従魔では無いぞ。

 アブーラ様が所持されていた従魔はどれも大変に珍しい物で、なかなか市場にも出回ることのない稀少種だ。もらっておいても損はないぞ」

「いえ、なんでいきなり譲るなんて話になってるんですか」


怪しすぎるわ。

ドゴットさんが言葉に詰まる。それからしばらく渋い顔をして何やら悩んでいたが、真面目な顔になると、声を潜めて話し始めた。


「実は、ここだけの話にしてもらいたいのだが、アブーラ様が原因不明の悪夢にうなされるようになってしまってな。眠ると様々な獣に体中を食いちぎられる夢を見るらしいのだ。

 その獣の中にはアブーラ様が殺してしまったものも何体かいるらしい。

 眠る度にそんな夢を見るものだから、眠るのが恐ろしいと、ここのところ一睡もしないように頑張っているんだ。

 だが、そんなこと続くはずもない。うっかりうとうとしようものなら、また恐ろしい夢を見る。

 寝たくとも寝られない状態が続き、アブーラ様も参ってしまっておいでで」


視界に入っている黒猫の頭をちらりと見る。

話を聞いているのかいないのか、顔を洗っているクロ。

何をした此奴。


「どうにもできずに我々がてをこまねいていた所、昨日、旅の占い師と名乗る奇妙な老人が現われてな。 どうやらアブーラ様は〈タタリ〉を受けていると言うのだ」


ほおお、祟りねぇ。


「我々にはよく分からないが、あの屋敷には今までに殺された魔獣達の〈オンネン〉が漂っていて、それが先日、何らかのきっかけでそれが形を成してしまったというのだ。そのきっかけが、その黒猫ではないかと」


あの日のことか。


「その〈タタリ〉を鎮めるには、今手元に置いている魔獣を手放し、鎮魂の祠を建て、毎日許しを請う祈りを捧げるしかないと言われたのだ。そこで従魔達を手放さなければならなくなったのだが…」

「だが?」

「どこから漏れたのか、引き取ってくれそうな者達にアブーラ様のことが知れ渡っていてな。その従魔を引き取った時に、一緒にその〈タタリ〉も引き取ってしまうのではないかと、どこも引き取りを拒否してきてしまって…」

「それでここに来たと」

「そうなのだ」


ドゴットさんが頭をテーブルにこすりつけるように下げる。


「この通りだ。金を払えというならできる限りの金も払う。なんとか引き取ってもらえないだろうか」


私は考えるフリをして、クロをチラリと見た。

クロが私の側に擦り寄ってくると、


「多少料金をふっかけて引き取ってやれ」


と言った。

こらこら、聞こえちゃうよ。

少し慌てたが、ドゴットさんには聞こえていなかったらしい。

ふっかける、ふっかけるねえ。

また白金貨100万枚とか言ったら嫌みだよね。


「そうですね。金額を聞いてからなら考えても良いかな?」


ドゴットさんが顔を上げた。


「ありがたい! 金貨200枚なら即金で払える! それでは不服だろうか?」

「いえ。十分です。分かりました。お受けします」


金額のでかさにビビって、思わず即答してしまった。

クロさんの視線が痛いです。もっとふっかけてやればいいのにと目で言ってます。

でも貧乏気質の私には、でかい金額は怖いです。

お金は後でギルドに行って銀行に振り込んでもらうことに。

そして、従魔達を引き取るために、従魔紋の書き換えをしなければならないと言われ、店の外に出ることになった。

マッドさんとキシュリーにお願いして、少し休憩時間をもらう。今は暇なので行っておいでと送り出された。

表に出ると、人だかり。


「これ! 見世物ではない!」


ドゴットさんが叫ぶが、なかなか人が捌けない。

その人の群れの中に、にょっきり突き出ている白くて長い顔。

おお、馬だ。おお、翼の付いた馬だ。え?

人だかりを掻き分け、そこに出ると、人だかりで見えなかったもう一体の魔獣。

鷲の上半身に獅子の体。え?

え~と、私の拙い知識からその名前を検索しますと、ペガサスとグリフォンに見えるのですけど…。


人がたかるのも無理ないね。


お付きの人らしき人達が、懸命に人をあしらっていた。ご苦労様です。

はて、3体と言ってなかったっけ?

よく見れば、何やら鳥籠のような物の中に、小さな緑色の羽の生えた人型のものが…。

妖精?

ドゴットさんが持っていた鞄から瓶を取り出し、何やら呪文らしきものを唱え出す。


「%▲&○☆■¥その全てを契約者の名の元に支配下に置き、その命を預けるものなり。

 @@\\*+◇♪%$#」


どうやらクロの力でも翻訳できない単語の羅列らしい。

ビビデバビデブーみたいなものだろうか。


「では、髪の毛で良いので、この中に入れて頂けるか?」

「はあ、はい」


1本プチンと切って差し出す。

う~ん、髪が傷んでる気がする。

髪の毛を入れると、不思議なことにあっという間に溶けてなくなった。

え、もしかして塩酸とかじゃないよね?

それから筆を取り出し、中の液体を混ぜながらまた少し呪文らしき物を唱える。


「では、左手を出して頂けるか?」

「はあ、はい」

「手の甲でよろしい」

「はい」


筆で手の甲に何やら書き始めた。

魔法陣みたい。

って、手、溶けないよね?心配になる。


「名は、ヤエコでよろしいのだよな?」

「そうです」


文字らしき物を書いている。ヤエコのスペルかな?ちょっと気になるぞ。

終わったらしく、今度はペガサスの胸、グリフォンの胸、妖精の胸辺りに同じように紋を書いた。


「契約者、ヤエコの名の元に、その全てを捧げよ! ○×▲◇!!」


と、左手の甲の紋が光り出す。

3体の魔獣達の紋も光る。

すぐにその光は消えた。

特に痛くもなかった。


「これにて、この魔獣達はあなたの従魔になった。あとはよろしく頼む」


ドゴットさんが頭を下げた。

今思ったけど、こんな衆人環視の中でやらなくても良かったのではないか?

今更遅いけどさ!

明日にはまた噂になってるよねコレ!



やっと、ここまで来た!

やっと、3体出せた!

勢いで書いてますので、誤字脱字矛盾等発見しましたら、一言お願い致します。

感想なども随時受付中です。

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