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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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皆が従魔だということは分かってません

前回のあらすじ~

前髪男が情報が欲しいというので、金貨100枚ふっかけて教えてやったら、早速自分でバラしてた。

大声で私の言った事をバラしてしまったことに気付いたのか、前髪男が口元に手を当てる。


「自分で周りに教えてしまうとは。金貨100枚も払っておきながら、バカな男である」


そう冷たく言い放って、シロガネが席に戻ってきた。


「な、なによ、バカにして…」


チタがシロガネを見るが、貴公子然としたシロガネの美貌にちょっとタジタジ。その冷たい眼差しがそそると女性に人気です。

私の前では3枚目風になってしまうが。


「そ、そんなことで、従魔を動かせるのかい?」


自らの失態に顔を少し青ざめさせながら、前髪男が聞いて来た。


「言ったでしょう? 命令はしません。だから、私の意思で動かしたりはしません」

「な、なら、どうやって…」

「自主性に任せてます」

「じしゅせい?」


ポカンとした顔になる。


「やりたければやらせる。やりたくなければやらせない。どうしてもして欲しかったらお願いする」

「お願い? 従魔にお願い?」

「余程の事がなければ、それで私の言葉を受け入れてくれますよ」

「うむ。主殿は命令などせぬ。おかげで従魔達は毎度困惑しておる」

「である。主は命令など滅多なことではしないである」


1、2度命令したことはある気がするけど、あれはどうしようもなかった時だったと思う。確かその時は皆も合点だという感じで、例え命令がなくとも率先して動いていた気もするが。

クレナイとシロガネがうむうむと頷いている。

ハヤテは暇そうに足をブラブラ。もうちょっと待ってね。お菓子でも頼もうかしら? いやしかし、もうすぐで終わるならいらないか? というか、早く終わらせたいぞ。


「そ、そんなバカな話が…」

「あ、あの、どうしてそんなに従魔に懐かれているのですか?」


モジモジ系美少女のイスタが話しかけて来た。従魔師なりに気になることがあるのだろう。


「どうして? どうしてだろう?」


改めて言われると、いつの間にか皆私に懐いていてくれたなぁ。


「従魔の願いを聞いてくれるのじゃ」

「従魔が嫌がる事は無理強いせぬである」

「あたまなでなでいっぱいー」


リリリン


何故皆様率先して意見を言おうとしているのでしょう。


「飯も美味いものをたらふく食わせてくれるのじゃ」

「何故ペガサスの扱いがちょっと雑なのであろう…」

「ぎゅってね、ちゅーってね、してくれるー」


ハヤテ、君の発言はちょっとヤバいので、黙りましょう。


リリリリリリリリリリ!


リンちゃん、君の言葉は人間には伝わってないと思うよ。


「自由行動を許してくれるしのう」

「ブラッシングがちと足りない気もするであるが、きちんとしてくれるので許容範囲である」


シロガネからは不満が漏れている気がする。

ハヤテはしーしてお口チャック。


リンリンリンリンリン!


リンちゃん、頑張れ。


あーだこーだと止まらないので、


「ストップ! それ以上は話が進まない!」


止める。


「主殿の素晴らしさをもっと語りたいのじゃ…」

「そうである…」


いらん。

ほら、目の前の氷の薔薇さん達が固まってるじゃない。あれ? 氷原の薔薇だっけ?


「じゅ、従魔相手に、そんなことを、していいのですか?」


イスタが恐る恐る聞いて来た。


「良いんじゃない?」


何か悪い事でもある?


「信じられないのだ…。従魔に触るとか…」


ああ? 喧嘩売ってるんですかね? チタさんとやら。


「恐ろしくはないのですか? 従魔師に危害は加えられないとは言え」


プリースト美女のシンカが尋ねてきた。


「恐ろしい? なんで?」


従魔紋で従魔師に危害は加えられないのでしょう? それなら、モフリ倒すに決まってるじゃないか。

クロさん? 尻尾がたしたししてますが。

何故か野バラの皆さんの顔が強ばっている。


「信じられない。あんな穢れた物に触るなんて…」


魔女ッ子美女のウーリィさん。今、物扱いしましたね?

このパーティー、ちょいちょいいらっとすること言ってくるんだよなぁ。


「縁があって仲間になったのなら、お世話する《モフリ倒す》のは当たり前じゃないですか」

「仲間? 従魔が仲間?」


前髪切ってやろうかコノヤロウ。

バラバラの面々がおかしな物を見るような目つきになって来た。ん? イスタだけ違うな。


「では、皆さんは従魔を普段どのように扱っているので?」


逆に気になったぞ。


「あれは命令を聞くだけのものだろう。飯は自分で取ってこさせている。宿でも出るが、そんな無駄金は使いたくないしな」


前髪ふぁさ・・・。

うずうずしてくるわ。


「手入れはまあ、お金を出せば宿でもしてくれるしね。なんで私達が従魔なんかの世話を?」


足を色っぽく組み替える魔女ッ子ウーリィ。


「従魔は穢れているものとして、神からもあまり関わってはいけないと、教わっております」


巨乳プリーストシンカ。手を組む程に胸のボリュームを強調しているようにしか見えない。


「従魔なんて、便利な道具なのだ。なんで世話とかしなきゃならないのだよ。自分で出来るでしょう」


私よりも控えめな胸してるチタさん。後で体育館裏に来て貰おうかな?


「わ、私は、その…」


イスタ、何か言いたそうだけど、どう言えばいいのか分からない感じ。どうしよう。そのモジモジ感、ちょっとくすぐりたくなってきてしまうよ。

何故くすぐるって? ああいう子は感度が良さそうだからよ。

仕方ないのでクロさんを手でモフモフして我慢。

クロさん、頭を撫でろと。はいはい。

イラッとしていた所に、アニマルセラピー。さすがは癒やしの象徴的なにゃんこの頭。効果は抜群。


ふと気付いて横を見ると、剣呑な表情のクレナイとシロガネ。

おおう、この人達を塵と化してしまいそうな顔している。あらら、ハヤテまでぶすっとした顔。

このほっぺをつついてしまいたいと思うのは、私だけ?


「主殿、ちと肩が凝ってきてしまったのじゃ」


何故腕を振り回すかな?クレナイ。


「うむ。ちと、運動をしたくなって来たである」


運動は外でやろうね、シロガネ。


「あるじ~」


ハヤテも早く終わらせて行こうよと袖を引っ張る。

やべい、皆の限界値が近い。


「ええと、まあ、そんなわけで、私達は情報を渡しましたし、これで失礼…」

「待ってくれ!」


出来なかった。


これ以上何かあるんかい! これ以上は皆がやべいよ!

何か用かと睨み付けると、前髪男が少しタジタジっとなった。


「ぜひ1度、貴方達の従魔と戦っている所を見せて貰いたいんだが…」

「アルダール、もういいじゃない?」


そうだ、魔女ッ子、止めろ。


「いやほら、ああは言ってるけど、何か隠してるかもしれないじゃないか」


声、潜めてる気かもしれないけど、私にさえ聞こえているよ。ということは、当然皆にも聞こえているよね。


「良い提案じゃ、主殿。是非に1度妾達の戦いを見て貰ってはどうじゃ?」


クレナイ、笑顔が怖いよ。


「でも、いいの?」

「それは、このバラ達次第じゃの」


クレナイのバラバラ達の扱いも酷い物になってきた。


「ぜ、是非に、お願いするよ!」


提案を受け入れられたと喜ぶ前髪男。しかし、


「して、いくら払う?」


クレナイの言葉に固まった。


「もちろん、人から物を教えてもらうに、只と言うことはないじゃろうな?」


クレナイの凄みの効いた笑顔に、誰も言い返せなかった。









金を払わなければそれでもいいが、戦いを見せるのはなし。付いてこようとしても、ペガサスに乗って移動してしまうから無理。貴様らに合わせて地を歩いて移動してやるのだ。というクレナイの説明に、渋々金を払うことに同意したバラ達。

クレナイが金貨50枚に負けてやろうと言ったら、文句を言ってきたが、それなら話はなかったことにと言ったら、黙り込んだ。

結局金貨50枚支払った。なかなか金を持ってるパーティーだな。


別にお金が欲しいわけじゃなくて、ちょっと困らせたかっただけなんだけどね。うふ。


「何かいい依頼ある?」

「よさそうな物があるのじゃ」


クレナイが持っていた書類の中から、一枚を引き出した。


「マーダーベアの討伐任務じゃ。これならそちらの面々も死ぬことはなかろう」


とヒラヒラと書類を弄ぶ。


「な、なんだ。マーダーベアか。それなら僕達にもこなせる依頼だな」


前髪男が前髪をふぁさ…。なんかちょっと元気がないような?


「支度もあるじゃろうし、明日の朝の鐘で南門に集合して、そこから馬車でも拾って行けば良いじゃろう。どうじゃ?」

「分かった。明日朝、南門だな」

「それじゃ、妾達はこれで」


今度は引き留められなかった。

ふとギルド内を見渡すと、皆がさっと視線を避ける。しかもいつもより静かだ。

聞いてたね?

















「アルダール、金貨150枚なんて大金、本当に出して良かったの? 元が取れなかったら大損よ」


魔女ッ子ウーリィがここぞとばかりにアルダールに責め寄る。台詞だけなら少し怒っている風だが、テーブルの下でアルダールの足に自分の足を絡めている所からして、それほど怒ってはいないのだろう。


「だ、大丈夫だよ。きっと何か隠してるんだって」


少しタジタジとなりながらも、ウーリィの擦られる足に、悪い気はしていないアルダール。


「あ、アルダール、私の為に、ごめんなさい」


イスタが頭を下げる。控えめな性格とは裏腹の控えめではない胸が大きく揺れる。


「イスタ。良いんだ。君のためになることは、パーティーの為になることなんだから」


アルダールがいつもの前歯キラリンイケメンスマイルを発揮。先程までは得体の知れないあのパーティーを前にして、精彩を欠いていた。


「そうなのだ。イスタにも頑張ってもらわなきゃならないのだよ! 仲間なんだから!」

「あ、ありがとう、チタ」

「イスタさんには、従魔師として、これからも頑張ってもらわなければいけませんもの」


シンカの聖女系スマイルを向けられ、顔を赤くするイスタ。


皆でイスタを励ます素振りを見せるも、それはアルダールに優しい女と見られたいが為であり、本心はどうやって蹴落とそうかと考えているのだった。女性怖い。


イスタは、つい最近までいたグレーオウルを思い出す。名前の通りの灰色の梟。戦闘力はそこそこで、風の魔法を少し使えた。

師匠から譲り受けたもので、従魔師は最初だけ師匠から貰った従魔を従えて、自分の従魔を増やしていく。しかし、増やす前に、グレーオウルは死んでしまった。

そこそこに役に立っていたからこそ、このパーティーにいられたのだ。従魔がいなくなってしまっては、自分に価値はない。


パーティーの皆の協力で角ウサギを従魔にしたのはいいが、これが全く言うことを聞かない。いや、命令を無視するわけではないのだが、その命令の裏をかくような事ばかりをする。

足元の、椅子の下にいるだろう角ウサギの方をチラリと見て、溜息をつく。

最初から慣れていたグレーオウルと全く違う角ウサギに、イスタは参っていた。


そんなイスタを気遣ってくれたのか、アルダールが言い出したのだ。


「そうだ。従魔師として今話題に上がっている、ドラゴンを連れた従魔師に話を聞いてみてはどうだろう?」


と。







アルダールは内心焦っていた。

話に聞いていた従魔師は女性ということで、話しかければなんとかなるだろうと思っていた。これまでも、女性ににっこり笑顔で話しかけると、文句を言いながらも答えてくれたりしていたからだ。自分がイケメンだという自覚があった。


だから今回も、なんとかなるだろうと思っていたのだが、これが大外れ。

いつものにっこりスマイルを披露しても、何故か顔を顰める女性。赤髪の、これまた他に類を見ないほどの美女も、胡散臭げな顔をしてこちらを見る始末。

しかし、パーティーの皆の為にもここでめげるわけにはいかない。そんな格好悪い所は見せられない。

なので、少し強引に話を進めてしまった。終わった今、何故金貨100枚の所で止めなかったのか、ちょっと悔やんでいる。


周りの耳も気にしてしまったのだ。ギルド内にいた人達がこちらに耳を傾けているのは分かった。自分達はAランク。そんな金も出せないのかと見くびられるわけにもいかなかった。


(大丈夫だ。きっと何か隠していることがある…)


一緒に行動すれば、何か分かることもあるだろうと、ちょっと苦しいながらも再び金貨50枚も払ったのだ。かなり痛手ではあるが、これでイスタが使い物になれば全て丸く収まる。


「さ、支度をして、今日はゆっくり休もう。明日のためにも」

「そうね」

「そうですね」

「はい」

「うんなのだ」


男性陣からは嫉みの、女性陣からは憧れの視線を感じながら、雪原の薔薇パーティーはギルドを出て行ったのだった。





余談ではあるが、もちろん4人全員と出来ている。


ブクマ、評価ありがとうございます!

珍しく筆が乗りました。パソコンだけど筆と言っていいのかしら?

この世界の従魔の基準みたいなものをこのパーティーは教えてくれましたね。

なんと分かり易いバラバラさん達だったことか。


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