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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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久々の王都

前回のあらすじ~

獣人の国にミドリ茶が流行る事を期待しながら、しばしの別れ。(違うだろ!)

「1度王都に戻ろうかなと思ってるの。コハクの、冒険者証も返さなきゃだし…。それに、多分、仕事も溜まってるんじゃないかと…」

「むう…」


後ろから苦しそうな呻き声。また仕事を押しつけられるのが嫌なのね、クレナイ。

闇夜に紛れて、また上空不法侵入を繰り返し、久々のマメダ王国に入国。さすがはクレナイ。この距離もあっという間。

一晩野宿して、朝になったら王都に入ろうと言うことになった。

眠るときに、やはりコハクの事を思い出してしまう。無理矢理頭から閉め出し、睡魔に身を委ねた。


起きるとやはりハヤテが、水をバッシャバッシャ言わせながら持って来てくれた。まだしばらく修行が必要ですね。

軽く朝食を済ませて、街へ向かう。そろそろ携帯食料も補充しておかないと。なにせ大食らいがいますからね。ハヤテも近頃良く食べるようになって来たしなぁ。成長期だね。

冒険者証を見せて、街中に入る。変わらない喧噪。不思議と懐かしく思う。そんなにここで過ごしてないはずなんだけどなぁ。


ああでも、コハクとはここで…。思い出しかけて頭を振る。泣いている場合じゃない。

まずはギルドへと足を運ぶ。相変わらず盛況なようで、よろしいことで。

まあ、私達は入って顔を見られた途端、いつもの受付嬢さんがすっとやって来て、


「お帰りなさいませ。こちらです」


とVIP対応。

ああ、この突き刺さる視線も久しぶり。

奥のいつもの部屋に通される。皆でソファに座る。シロガネも座れるかと思ったら、コハクが小さいから座れていたのだと分かった。追い出されたシロガネはちょっと寂しそうに後ろに立つ。

すぐにドカドカ足音がして、扉が開かれた。


「やあ、帰って来たんだね!」


嬉しそうなオンユさん、満面の笑みで書類を抱えている。

おい、増えてないか?


「ええと、一時的に帰って来たご報告と、あと、その、うちのパーティーのその、1人が…」


そっと冒険者証を机に置く。

オンユさんがそれを受け取り、冒険者証を見て、こくりと頷いた。


「分かった。手続きはしておこう。ああ、もちろん、詳細を話せとは言わないよ。その顔を見れば、何となく分かる」


あれ?私そんなに分かり易い顔してるか?

コハクの冒険者証を胸ポケットに入れて、横に置いていた書類をバサリと机に置いた。


「で? 仕事、するんだよね? そろそろ期限も近いんじゃないかと思うんだけど」

「いえ、まだ大分余裕はありますけど」

「ち、分かってたか…(ボソリ)」


聞こえてる聞こえてる。

長居する予定ではないと話をして、それでも1つでも多く依頼をこなしてくれと話して、再びすったもんだの挙句、やはりクレナイが閉めました。


「後進を育てる機関でも作ったらいかがですか?」

「考えてはいるんだけどね…。色々手続きとか、色々とね…」


色々あるらしい。


「それと、帝国の進展なんだけどね」


忘れていたよ。

オンユさんの話によると、無事に(?)人の流出は起こっているらしい。しかも、度々ドラゴンの姿が目撃されているので、人々はかなり辟易しているのだそうな。

クレナイのお父さんとお母さん、頑張ってますね。

もちろん、周辺諸国は手を貸そうとはしない。なにせ相手はドラゴン、しかも喧嘩を売ったのは帝国自身。自分でケリを付けろとそっぽ向かれているのだそうな。それはちょっといい気味かも。


クレナイが選んだ10枚の依頼書を持って出ていこうとすると、


「出来るだけ、素材を無事な姿で、お願いします」


オンユさんが縋り付いてきた。


「まあ、考えておいてやるのじゃ」


冷たい眼でオンユさんを見て、そっぽ向くクレナイ。里に行くのを邪魔されたのを根に持っているのかも。


部屋を出て、カウンターの向こうへ行く。

いつものようにさっさと出て行こうとしたところで、


「やあ、君かい? ドラゴンを連れた従魔師っていうのは」


なんだかキンキラキンの人に声を掛けられた。

いや、小林幸子のように光っているのでは無くて、着ている鎧が微かに光っているように見えるのだ。

周りが革の鎧とか、黒めの鎧とか、そんなだから、1人だけ白く淡く光っていると目立つ。


「いいえ、違います」


なんだかあまり関わりたくないと思ったので、さっさと否定して出て行こうとする。

一瞬ポカンと呆けた顔になったその男の人も、慌てて私の前に立ち塞がった。


「いやいやいや、君だろう? 黒猫を連れてるって有名な冒険者は」


ち、さすがにクロはいませんとは言えない。実際に今抱えてしまっているし。

クロの尻尾もフリンフリンしている。目の前の男の人が気に入らないようだ。


「まあ、そうですけど」


一応肯定。しかし、隙あらば逃げだそうと伺う。

む、この人何気に隙がないぞ?


「逃げだそうとする気満々の顔に見えるけど」


私の顔はそんなに正直か?!

ふと気付くと、なんだか周りがざわついているような…。皆がこちらを見ているのはいつも通りだと思うけど。なにせ、後ろに美男美女が揃ってるし。


「少し聞きたいことがあるだけなんだよ。ちょっとでいいから時間を貰えないかい?」


噂が広まるにつれ、私達に近づく輩は滅多にいなくなったんだけど、もしかしたらこの人、かなりの実力者なのか?いやに堂々としてるし、一応爽やかイケメンではあるし、隙のない動きに何気に私達を観察しているようなその目つき。うん、気に入らない。

所謂金髪青い目のイケメンだけど、私の好みではないね。

急ぐので…と言いかけて、


「アルダール!」


後ろから大きな声が。


「何やってるんだ! この方達にはあまり関わるなと言っただろう!」


つかつかとギルマスのオンユさんが、珍しくカウンターを乗り越えてこちらにやって来た。


「オンユさん、ちょっと話を聞きたいだけなんだけど…」

「いかん! この方達の邪魔するな!」


温厚そうなオンユさん、怒ると迫力あるね。

わあわあ言い始めた2人を見ながら、どうしようかと考えていると、


「面白そうじゃ。オンユ殿。そちらの話を聞こうではないか」


クレナイの声が。

驚いて振り向くと、何やら黒い笑みを浮かべている。

せめて半殺しで許してあげてね。
















クレナイがそう言うならと、オンユさんは静かに下がっていった。最後に爽やかイケメンを睨み付けて。


「やあ、ありがとう。僕の願いを聞いてくれるとは思っていたよ」


ふぁさ・・・


前髪を払う。


うわ、鳥肌が…。

あかん、この人、私、苦手やわ…。口調もおかしう、なっちょるよ。


こちらへと案内されて、ギルドに併設されている食堂の一角に向かう。そのテーブルには、4人の女性が座って、爽やかイケメンを待っていた。


「遅いわよ、アルダール。無理に引き留める事、なかったんじゃないの?」


いかにも魔導師っぽい格好をした、ちょっとエロい格好の巨乳の黒髪の女性が、少し怒った風に言う。


「無理強いはよくありませんよ」


いかにもプリーストといった風の、こちらも金髪青い目の巨乳美女が心配そうに言う。


「うん、無理強いは良くないのだ。これ以上敵が増えても困るし(ボソリ)」


活発系の赤い髪の短髪の女の子が、なにやら最後に呟いた。こちらの方は、胸は慎ましやかだ。奥にいる大人しめの茶色の髪の女の子は、なんだかモジモジしている。


「やあゴメン。だけど、僕達には必要な事だろう? ちょっと無理をする価値はあったと思うよ」


爽やかイケメンはさらりと前髪を払う。


毎度思う。

そんなに邪魔なら、切っちゃえば?


丸テーブルなので、周りの椅子をちょっと借りてきて、ちょっときつめに感じながら座る。

なんだか、周りの視線がいつもよりもじろじろって感じなんだけど?


「それじゃあ、改めて、自己紹介させてもらうよ」


改めても何も、何もまだ言われていないんだけど。


「僕達は『雪原の薔薇』というパーティで、ランクはA。ちょっとした有名人さ」


前髪をふぁさ・・・。




誰か、ハサミ持って来て。


ブクマ、評価ありがとうございます!

昨日どうも筆が乗らずに更新出来なかったので、今日こそはと頑張りました。

いまだしばらくはコハクの事を思い出し、ちょっと涙ぐみながらも八重子は前に進みます。

また変な人が出て来て、八重子はまたいざこざに巻き込まれて・・・?

この先も楽しんで頂けたら幸いです。

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