表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
152/194

動き始めた者達

前回のあらすじ~

「消えた子供を探しましょう!」「「「「おう!」」」」リン!

(結局我が輩が動くのであろうが・・・)

喫茶店を出て、シロガネとハヤテは街を出る為に街門へと急ぐ。コハクには一応お金を少し渡し、クロの案内で危なそうな小道へと誘われて行った。心配だ。


「さ、主殿。妾達は宿へ急ぎましょうぞ」

「うん」


街から宿は距離がある。クロの力も及ばないだろうと言っていた。ボロが出ないように、会話はクレナイに任せて、私は笑っているだけにする。


「やっぱりコハクが心配だなぁ」

「じゃがしかし、コハクが狙われれば、それだけ事件の解決が早まりましょうぞ」

「それはそうなんだけどねぇ」

「お気持ちは分かりますがな」


クレナイも辛そうな顔をしている。そうだよね、クレナイも心配だよね。これでコハクに何かあったら、クレナイを止める自信が私にもないよ。

いや、クロが付いているのだ。万が一などということはないだろう。信じよう。

そんな事を話ながら歩いていると、宿までもう少しという所で、クレナイの言葉が分からなくなって来た。そんなに離れたのか…。

だがしかし、近頃の〈暇な時のクレナイ講座〉のおかげで、単語は拾えるようになってるぞ。話すことはまだ自信がないが。

宿に着くと、熊さんがいた。クレナイが適当に誤魔化して、足早に部屋へと入る。


「*〒○■¥#?」


なんとなくだが、折角だから単語の勉強でもしましょうか?と聞かれている気がする。


「イエス!」


指でOKの意を示し、そこではたと気付いた。

あ、荷物全部シロガネが持ってっちゃった…。お金は鞄に入ってるけど、ほとんどの荷物、シロガネの鞄の中だわ…。

書くものがないと微妙に勉強しにくいんだけど…、仕方ない。

拙い言葉でコミュニケーションを取りながら、クレナイと単語の勉強をするのだった。

















街を出たシロガネとハヤテは元の姿に戻り、飛んで山の通路へと急いで向かった。

通路の入り口の所に、入って来た時とは違う狼人族が立っていた。

近場で降りて、狼人族の元へと足早に近寄る。


「ん? あんたら?」


近づいて来たシロガネとハヤテを見て、狼人族が首を傾げる。2人共翼を出すのを忘れていたのだ。

しかし、この2人は国の中から来た。国に入った只人は1人で、雌と聞いていたので、番人の狼人族は首を捻る。


「我はペガサスである。今は訳あってとある御方の従魔になっているである。そして、この者はグリフォン。話は聞いていると思うのであるが?」


確かに、只人がドラゴンとペガサスとグリフォンと妖精を従魔にして、よりにもよって獣人の子供を奴隷にして連れ歩いているとは聞いていた。


「確かに聞いているが、あんたらの主は? なんであんたらだけでここに?」


他に影は見えない。何故2人だけでここに来たのかと尋ねる。


「最近、子供が行方不明になる事件が続いていると聞いてな。つい先程我らの主にその疑いがかけられた。我らはこの国を滅ぼして出て行こうと進言したのだが、我らの主はそれを良しとせず、消えた子供を探そうと仰ったのだ。故に、我らは奔走しているのであるよ」

「はあ…?」


只人なのだから子供を誘拐しようとしても不思議ではない。なのに何故この国が滅ぼされようとするのか…。そして、何故只人が消えた子供を探すなどということをするのか…。


「念の為であるが、我らの主の許しが出るまで、たった今からこの通路を封鎖させて頂く! 誰1人としてこの国からは出さぬ! 良いな!」

「いや、良いなって、なんでそうなる…」

「我らの主の命である! 何を言おうと通行禁止にするである!」


言うが早いか、シロガネが結界を張ってしまった。

これで、八重子が事件が解決したと宣言しない限り、この国からは誰1人として出ることが出来なくなったのだった。















コハクはクロに言われた通りに、少し薄暗い裏通りをあてどもなく歩いていた。

時間はもう午後も遅い時間、もう少ししたら陽が陰り始めるだろう。元々薄暗いのに、陽が落ちたらここはどれだけ暗くなるのか。

胸の辺りに感じるリンちゃんの温かな気配が、コハクに孤独ではないと教えてくれる。

暗い所はなんとなく、嫌なものを思い出しそうになる。今のご主人様に会う前の嫌な事。

寒いわけでもないのに少し身震いをして、コハクは足を前に進める。

時折、通路の片隅で蹲る人影や、物陰から怪しげな視線を感じたが、近づいて来る者はいなかった。

獣人の中でも、虎人族は強い部類に入る。それが子供と言えど、下手に手を出せば受ける被害は並々ならぬものではない。だから滅多な輩は、コハクの頭でピコピコ動く耳と、油断なく揺れ動く尻尾を見て、コハクに手を出そうとは思わないのである。


「なうん」


先の暗がりから、黒猫がゆったりと歩いて来た。

コハクはクロなのか、普通の猫なのか判断に迷う。黒猫は足元に擦り寄ってきた。

しゃがんで顔を近づけてみると、膝を足がかりに顔を寄せて来た。


「そんなに警戒心丸出しでは、誰も手を出してはくれぬぞ?」


コハクにやっと聞こえるくらいの小さな声が耳に届いた。


「クロさ…」

「我が輩の名は呼ばぬで良い。じきに陽も暮れる。さすがに夜は八重子が心配するでの。折を見て宿へ帰るが良い」


そう言うと、またふらりと側を離れ、暗がりへと歩いて行ってしまった。

やはりどう見ても普通の猫にしか見えないことにコハクは感心しながら、立ち上がって再び歩き始めた。

警戒心をなくして、警戒心をなくして…。

どうしたら油断ばかりの者に見えるだろうと考えながら、やはり天性のものか、油断なく暗い道を歩き続けるのだった。













八重子と離れたクロは、まずは行方不明になったという子供の家に忍び込んでいた。そして、その子供の臭いがついている物を探し、臭いを覚え込んでいた。

さすがに全く知らぬ相手を捜し当てる事など出来るはずもない。せめて臭いでも分かればなんとかなるかもしれぬと思ったのだった。


ちなみに、猫は目があまり良くない。猫の視力は0.1~0.3、つまりド近眼なのである。そして視野も狭い為、よく動く玩具を首を振って追いかけるのは、その為とも言われている。

指を目の前に差し出すと臭いを嗅ぎに近寄って来るのも、よく見えない為、臭いを嗅いで危険を知ろうとしているのだとか。

ただし、暗闇でもよく見え、動く物に関しては言わずもがな。動体視力は人間の4倍もあるらしい。人の目で追えない玩具の動きをしっかり追っているのは、この優れた能力によるものである。ただし、ゆっくり動くものに関しては気付きにくいらしい。

ただ、遊ぶ時に関しては、早く動かしたりゆっくり動かしたりすると、猫の反応が良くなります。緩急付けると猫も楽しいらしいです。


閑話休題。


ちなみに、犬の嗅覚は人の100万倍に対し、猫の嗅覚も人の数万倍~数十万倍らしいです。


ひとまずどんな臭いなのかを覚えると、クロの体は空間に溶け込んでいった。

マーキングしてある仲間達の気配を感じながら、クロは街の地下を探って行った。

















「只人よ…。全部只人のせいなのよ…」

「まったくだ。なんで只人なんかを国に入れたんだ」

「また子供が攫われるかもしれない」

「今のうちに追い出せ! いや、消えた子供達の行方を吐かせるんだ!」

「そうだ! 只人なんか袋叩きにしてやれ!」

街では只人に良い思いを持たない者達が、騒ぎ始めていた。


ブクマ、評価ありがとうございます!

いつの間にか増えていてビックリ。素直に嬉しいです!

よっしゃー、もっと書くぞー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ