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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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美味しい物食べたい症候群

前回のあらすじ~

「ロックチョウを片付けて、さっさとこの村を出よう!」「「「おう!」」」

「このロックチョウこそが我らがドラゴンの御使いじゃ! 以後大切に祀るように!」

「ははあ~」


集まっていたリザードマン達が頭を下げた。

結局こうなってしまったわけで。

リザードマン達がドラゴンを神と崇めるならば、ロックチョウをその御使いにしてしまえという。まあ、これで丸く収まるならそれでもいいんだけどね。


今までの事は、リザードマン達がドラゴンの御使いのロックチョウに気付かなかったが故の蛮行。以降きちんと供え物をして崇め奉れば、この村を末永く守ってやると、こじつけた。

こじつけだ。


しかし、ロックチョウは人の言葉をそこそこ理解は出来ても話すことは出来ない。ということで、やり方を教えてましたよ。クレナイとシロガネが。良いんだろうか、ポンポン変身出来る魔獣が増えてしまって…。

さすがにすぐに出来るようになるわけではなかったので、このまま練習に励めと言い残す。私達はさっさとリザードマンの村から出たかったからね。なにせ食事がね!


クレナイ達の主ということで、ロックチョウに懐かれてしまったのは、悪い気はしてないけどね。うふふ、羽毛がふわっふわでしたよ。特にお腹ね。あれは極上ですね。モフって振り返ったら皆の顔が曇ってたのは何故なのかしら?


しばらくは雛に餌を与えなければならないけど、あまりリザードマンの生簀から獲ってくるのはリザードマン達も困るから、他へも狩猟に行ってねとお願い。ただし、定期的にお魚を与えるようには話をつけるからと。これで万が一餌が取れなくても、飢えることはない。

雛が大きくなって自分の力で取れるようになったら、リザードマン達に話して貢ぎ物を止めれば良い。その為に人化の術を習得して置いた方が良いだろうと。


リザードマン達はなにせドラゴン本人からの言葉だ。疑うことなくそれを受け入れた。

5日に1度魚を奉納すると約束してくれて、これでロックチョウの被害もなくなるならと喜んでいた。しかも御使いが目と鼻の先。これからは村で何か起ころうものなら、遠いドラゴン達に祈りを捧げて運命に身を任せるのではなく、ロックチョウが守ってくれるようになる。

うん、万々歳だね。


「我が輩がいてこそだの」


クロにはご褒美のモフモフを…。


「それは八重子のご褒美だろうの」


てへ。


リザードマン達がお礼の宴をと申し出てくれたけど、


「いや、妾達には急ぎの用があるのでな。名残惜しいが早々にここをお暇するのじゃ」


私に気を使ってくれたのか、はたまた生の魚の一気食いに飽きたのか、クレナイがそう言ってくれたので早々にここから出て行けることになった。


心の中でガッツポーズ。


それでは早速出て行きましょうとなって、


「ドラゴン様。こちら、お約束の品にございます」


とリザードマンの長老さんらしき人が何かを持って来た。

そこそこ大きな赤い石。これどこかで見たことあるぞ。


「この辺りに時折出るヒュドラから捕れたものです。ここいらで価値がありそうな物といえばこれくらいしかありませんで。行商人もこれを良い値で買い取ってくれるので、持って行けば何かのお役に立つかと」


行商人は獣人の人達かね。リザードマンは獣人に入るのか?ううむ、分類が分からん。

クレナイが私を見た。私は頷いた。はっきり言って何もなさそうな村から、これ以上の物を貰うことも難しいだろうし、また魚を手渡されても困る。


「うむ。良かろう。其方達の心意気、しかと受け取ったのじゃ」


クレナイが魔石を受け取り、シロガネとハヤテに乗って、空へと飛び立った。

下から皆が手を振って見送ってくれた。

村の上空を3度ほど旋回し、獣人の街を目指した。







八重子達は気付かなかった。さすがのクロも気づけなかった。

あの虹彩雉の群れが、このリザードマンの村の近くにあることを。

魚を主食とするリザードマン達から狩られることもなく、ロックチョウの威厳に守られ、虹彩雉達はそこで安心して暮らしているのだった。

その事実は誰も知らない。
















「美味しい物が食べたい!」

「うむ! 戻ったら美味しい物をたらふく食うのじゃ!」


そんなことを言い合いながら獣人の街へと戻る。

また離れた所で降り、早足で街に入る。


「クレナイ、よろしく!」

「うむ! 目星を付けていた所があるのじゃ!」


そう言って小さな食堂に飛び込んだ。


「何ぃ?! 海鮮丼だとおぅ?!」


メニューを開いてびっくり。海の幸のお名前が。


「しまった、肉はないのじゃろうか…」


クレナイがちょっぴりしょげている。美味しい匂いだけで入ったから、肉かどうかまでは見ていなかったようだ。

迷わず海鮮丼を注文。コハクも同じ物を。魚は飽きたのじゃと良いながらも魚しかメニューにないので盛り合わせを頼んだクレナイ。ハヤテも一緒に盛り合わせ。良く食べる3歳児。シロガネはぶれずにサラダ盛り。

やって来たご飯を目の前に、いただきますして口にかっ込む。


う、うめえええええええええ・・・。


ご飯かと思ったら下にはご飯とは何か違う感じのものが詰まっていたが、美味しいから何でも良し!醤油らしき物をかけて食べたら、これはもう海鮮丼。

クレナイとハヤテも夢中になって食べていた。もちろんコハクも。


「我が輩も食いたい」


珍しくお零れだけでは満足出来なかったのか、クロもおねだりしてきた。

その姿に萌えながら、刺身の盛り合わせを注文。やって来たお魚の切れ身達を、クロも美味しそうに頬張っていた。食べる姿も可愛い…。ハアハア。


同じ生魚でもこんなに違う物なのだわね…。

変なことに感心しながら完食。ふう、満足したぜ。


「「「「美味しかったです!」」」」


と一同、満面の笑みを浮かべてお礼を言ったら、猫科の獣人さんも嬉しそうにしていた。うむ、料理人ですな。

お金もちきんと払ってそこを出て、魔石をどうにかしようとギルド…、じゃなかった、仕事斡旋所へと向かう。魔石は獣人の国でも重宝なのだわね。


斡旋所に着いて中に入ると、視線が突き刺さって来た。毎度の事ですね。

買い取りカウンターらしき所へ行って、そこに立っていた狐耳の美人さんに魔石を見せる。

この前の狐耳の美人さんとは違う人だわよ。見回してみたら狐耳の美人さんが多い気がする。これは狐系の人は美人が多いということだろうか。


驚いた顔をした買い取り嬢さんだったが、これをどこでもらったか話して、ちょっと首を傾げながらも納得してくれた。


「強奪したわけではなく?」

「とある依頼をこなしたら、快くくれたのです」


誰が強奪するもんかい。

微妙に疑問の残る顔をしながらも、魔石を買い取ってくれた。いつものように銀行に…と言う前にはっと気付く。やべ、ここには銀行がない。

仕方がないので金貨の詰まった大袋を、シロガネに持って貰う。


「む、ちと重いであるな…」


だよね。

お金が荷物になるとは…。贅沢な悩みなんだろうか。

ギルド、じゃない斡旋所を出て、ふと閃く。

どうせ獣人の国のお金だし、人の国に持って行くのもなんだし、どこかに寄付しちゃえと。

お金に困ってるわけでもないしね。


さっそく孤児院などはないかと聞いて、孤児院を訪れた。

最初只人の私を見て、かなり警戒していた孤児院の人達も、「寄付しに来ました」とどさりと目の前にお金の詰まった袋を置いたら、固まってしまった。

ちょっと戸惑いながらも子供達に会わせてくれて、その可愛さを堪能。いや、お触りはしてません。皆警戒して近寄って来てくれなかったので。

でもそのお耳と揺れる尻尾を眺められただけでも眼福です。

皆からお礼を言われて、そのまま素直に立ち去った。ハヤテが遊びたそうだったけど、我慢ね。やはり只人は警戒されてしまうのだな。


街を散策しながら夕飯は何にしようかと話し合う。クレナイ、屋台にいちいち目を向けないの。太るよ?

さすがに魚が続いたから次は肉が食べたいと言い合っていたら、


「あいつよ! あいつが私の子供を攫ったのよ!」


と女性の声がした。

前を見ると、豚のような耳を生やしたおばさんが、私を指差しながら、もの凄い形相でこちらを睨んでいた。


ブクマ、評価ありがとうございます。

頭の中でストーリーが固まってくると、小説書きたい病にかかります。

でも仕事で書けない・・・。ジレンマ。

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