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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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突っ込みたくなる絵本

前回までのあらすじ~

人間草むしり機と化し、あっちゅーまに仕事を終わらせちった。てへ。

依頼書を見るエリーさんが固まっている。

あれ?あの爺さん、ちゃんとサインしてくれなかったのかな?

くそ、騙されたか!

と内心焦っていると、


「ヤエコさん、どんな魔法を使ったんですか…」


その台詞、さっきも聞いた気がするよ?


「いや、私魔法は使えませんて」

「あのくそジジ…じゃなかった、あの人から最高評価頂くなんて! 何をしたんですか?!」

「え、普通に草むしりですけど」

「3人で半日かかるのを…、数時間で片付けて…、評価が5って…。確実にあの人のサインぽいし、不正はしてませんよね?」

「してませんよ。私字書けませんし」

「そうですよね…。他に書く人が…。でもあの人の名前を勝手に書くなんてことする人もいないだろうし…」


ブツブツ呟いてサインを穴が開くほど見つめているエリーさん。

うう…。クロの言う通り、早すぎたかも…。

調子に乗りすぎました。

ちらとクロを見ると、ホレ見ろみたいな顔してる。くそう。


「すいません。ちょっと上の者に確認して参りますので、少しお待ち頂けますか?」

「は、はい…」


やべ、なんか大事に。

エリーさんが席を立って、奥の方へ行ってしまった。

私は仕方ないので、壁際に備えつけられている椅子にでも座って待つことにする。

昼間なので、冒険者の姿もほとんどない。ちらほらいるのは、休みの人なのか、仕事にあぶれた人なのか。


膝にクロを乗せて、その背を撫でながら待っていると、なんだか眠たくなって来てしまう。

元々どこでも寝られる体質ではあるが、猫を撫でていると眠たくなってくるのは何故なのだろう?

我が家ではクロを睡眠導入剤とも呼んでいた。

寝顔見てるだけでも眠くなってくるんだもの!

コックリコックリ、小さな船を漕ぎ始めた頃、


「ヤエコさん」


名前を呼ばれた。

はっと目を開け、そっと口元を拭う。大丈夫、涎は垂らしてなかった。

エリーさんの窓口へと向かう。


「お待たせ致しました。確認が取れましたので、依頼完了の手続きを取らせて頂きます。報酬は銀貨3枚になります」

「ありがとうございます」


あ~、良かった。なんとか依頼達成できた。


「それと、今回高評価を頂いたことと、先に申し上げておりました、依頼達成件数割増しがございますので、今回の達成で、達成件数を3追加させて頂きます」


あ~、そんなんありましたね。


「ちなみに、私今依頼達成件数って何件になるんですか?」

「今回ので、合計13件です。凄いですね。まさかこんなに早くここまでできるなんて」


エリーさんも驚き。私も驚き。あと7件こなしたら、Fランクに上がります。


「そんなにやってたんだ~、私」

「ヤエコさんがまさかここまでやるとは、私の人を見る目も落ちましたね…」


あらら、エリーさんが落ち込んでしまったよ。エリーさんの目は間違ってないよと言ってあげたいけど、クロのことを話すわけにもいかないし、自力で立ち直って頂こう。


手続き終えて、報酬貰って、そういえばまだ時間的に昼頃だったと思い出す。

宿に帰っても、また下手するとウララちゃんに追い出されてしまう。


「エリーさん、なんか丁度良い仕事ってあります?」

「う~ん、今からですか? う~ん、良さそうなのはなさそうですねぇ」


依頼書をパラパラと捲って確認するエリーさん。また討伐なら、とか言い出しそう。

これから森に行っても、微妙な時間だし、仕方ない、また街でもぶらつきますか、と考えた所で、


「そうだ、ヤエコさん、単語の勉強はいかがですか?」

「え? まあ、まあまあかな?」


文字の形は何となく分かってきたけど、まだ覚えられてません。


「それでしたら、ギルドの裏手に一応小さいけど図書館がありますので、そちらへ足を運んでみてはいかがでしょう? 絵本などを見て勉強されるのもいいと思いますよ」


え?図書館?あるの?しかもギルドの裏とか。

近すぎて行ってなかったわ。


「そうですね。面白そうなので行ってみます」


行ってみることにした。

ギルドを出て、裏手に回ると、ちょっと大きめの3階建ての建物。

ギルドが2階建てなので、こちらの方がいささか立派に見える。


「クロ知ってたの?」

「一応。あの女の頭を覗いた時にの」

「教えてくれれば良かったのに…」

「単語も分からぬうちに本を読む気か?」

「それもそうですが…」


入ってすぐに受け付けがあって、暇そうに眼鏡を掛けた女性が座っていた。


「身分証を拝見させて頂きます」


そう言われ、冒険者証を出す。

ちらりと確認すると、すぐに返してきた。


「ご利用は初めてですか?」

「はい」

「では、ご説明させて頂きます。こちらは基本自由に閲覧できますが、持ち出すことは厳禁です。机なども自由に使って頂いて構いませんが、飲食は禁止しております。多少の会話は大丈夫ですが、周りの迷惑になるような大声での会話などはご遠慮下さい。何かご質問はございますか?」


普通に図書館と同じだね。


「絵本のコーナーはどの辺りにありますか?」

「左手の奥、低い棚のコーナーが絵本のコーナーになります」

「ありがとうございます」


低い棚を探して左手の奥へと入って行くと、確かに周りよりちょっと低めの棚が3つ程。

子供を想定して低くしてあるのか、はたまた冊数が少ない為なのか…。

クロには肩に乗って貰い、試しに一冊手に取ってみる。

ん?なんか見たことあるような絵なんだが…。


赤い頭巾を被った女の子と、狼のような絵が描かれている。

え~と…、題名は読めないけど、これ、赤ずきんだよね?


ぱらりと中を捲ってみると、お母さんから荷物を手渡されている女の子の絵。

森の中で狼と赤ずきんが出会っている絵。

森の中で花を摘んでいる赤ずきんの絵。

おばあさんの家の前に立っている狼の絵。

おばあさんを食べてしまった狼の絵。

おばあさんの振りをしてベッドに入っている狼、知らずに訪ねてくる赤ずきんの絵。

赤ずきんが狼に飲み込まれる絵。

眠る狼、それを発見する猟師…、ん?これ猟師というより冒険者?

死んでいると見られる狼のお腹の中から、赤ずきんとおばあさんが出てくる。その側には冒険者…。

無事に家に辿り着いた赤ずきんの絵。


うん。この世界用にちょっと作り替えられてますね。


桃太郎っぽいものもあった。

連れているのは犬猿雉ではなく、従魔らしき変な動物。きびだんごじゃなくてなんか契約交わしてるっぽい。

行くのも鬼ヶ島じゃなくて山の中の洞窟。そこにいたのは鬼みたいなやつ。オーガってやつかな?

無事に倒して凱旋。うわお。


シンデレラっぽいものもあった。

そこそこ身分の良さそうな家に継母と義姉妹がやってきて、労働させられて、お城の舞踏会かと思ったら、城では無くどうやら領主の館っぽい。しかも嫁を決めるための試験みたいな物やらされてる。

自分を守ってくれていた精霊っぽいものに助けられながら、数々の難問をクリアし、その功績を認められ、嫁に選ばれる…。努力家だわ。


って、おおおい!先人!何面白い物作ってんだよ!

なんすか?!パロディの世界っすか?!

いろいろ突っ込みたくなる所を必死に我慢する。

図書館では騒いではいけません。


「微妙に分かりそうで分からぬ話だの」

「内容がっすか? 言葉がっすか?」

「言葉であろうが」


色々絵本を引っ張り出し、なんとなく内容を見て文章を想像して、クロと色々な絵本を突っ込みたくなるのを我慢しつつ目を通した。

そして思ったこと。

これ書いた人、印税とか貰ってたのかしら?



昔話パロディ考えるの面白かったです。

他にどんなパロディができるか、ちょっと考えてみても面白いかも?

あ!「長靴を履いた猫」考えれば良かったか?!

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