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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
132/194

どこだここ

前回のあらすじ~

「道教えて下さ~い」「いいよ~」「ね~むれ~ね~むれ~」「ぐう」「よし、連れて行こう」

目が覚めると、天蓋付きのベッドに寝かされていた。

うわ、天蓋付きのとか、何処の金持ちだよ。

そこでふと思う。

どこだここ?


「なう」


側で寝ていたらしいクロが甘えてきた。なんて可愛い…。

いや、ちょっと待て。クロが喋らないということは…。


「お目覚めですか」


知らない女性の声がした。

起きてませんとも言えず、渋々体を起こして起きてますアピール。


「ご主人様がお待ちです。お食事のご用意もございますので、ご案内致します」


と、とても綺麗なお辞儀。

そういえばお腹が猛烈に空いている。

ここが何処で、皆がどうなったかも知りたかったが、腹が減っては戦はできぬ。有り難くお食事とやらを頂くことにする。その前に。


「おトイレってどこですか?」


膀胱がいっぱいになってました。
















スッキリした後、案内されていくと、立派な食堂に。

なっがいテーブルの端に、私用に用意されたと見える豪勢な食事があった。


グ~…


お腹は正直だった。

少し赤面しつつ席に着くと、早速グラスに赤い液体を注がれる。

うん、これって、ワインじゃね?


「すいません、これ以外に飲み物ってありませんか?」


と聞くと、驚いた顔をされた。

いやだって、私お酒を美味しいと思えないのだもの。

時折クレナイやシロガネが飲むことがあった。異世界だし、興味本意で少しもらって飲んでみたのだが、見事に不味かった。私はまだ味覚がお子ちゃまなのだそうだ。失敬な!

良いのよ。お酒は二十歳になってからなのよ。私はそれをきちんと守るだけなのよ。え?もう飲んだだろうって?味見しただけ。飲んではいない!と言い張る!


困惑している給仕の女性に、水で構わないと告げると、ちょっと迷いながらもお水を持ってきてくれた。

良かった良かった。ワインより私はまだブドウジュースの方が美味しいからね。

お水を飲みながら、1人で静かにお食事を進める。いや、給仕の人はいるんだけどね。

てか今気づいたけど、なんだか日差しが朝っぽいんだけど。おかしいな?確か朝も遅く、昼に近いくらいに街を出たと思ったんだけど。


時折クロにお裾分けしながら、遠慮なくモグモグ食べていると、なんだか見た顔の男の人が入ってきた。

あの金髪の兄ちゃんと紺髪の兄ちゃんだ。

金髪兄ちゃんはやっぱり美形。紺髪兄ちゃんは目つきが悪いけどそれなりに整った容姿。


え~と、あの人達が私に用があるのかな?


と思いつつ遠慮なくお腹に詰め込む。

その食べっぷりを見て、兄ちゃん達の顔が渋くなる。いや、食べろって言ったのはそっちじゃないか。

入って来て顔をちょっと顰めただけで何も言わず壁際に立っているだけだったので、この兄ちゃん達ではないのかと、やはり遠慮なくパクパク頂く。


なかなか美味い。クレナイがいたら喜んで食べていただろうに。

そういえば、皆どうしてるのかな?まあ、あの子達のことだから心配ないと思うのだが。

最悪ハヤテが狩って、リンちゃんが野草探して、コハクが処理して調理するだろうし。へたすりゃクレナイとハヤテは生肉でも大丈夫だし、シロガネは草でも平気だし、リンちゃんはご飯いらないし、コハクも携帯食料があるから平気だ。なんだ、平気じゃないか。


クロが欲しそうにしていたのでお肉を少し分けてやる。なるべくタレの付いてない所を。う~ん、塩分大丈夫かしら?まあ他に食べられる物ないし仕方ないね。

そのまま事態が進まず、とにかくお腹に詰め込んで、そろそろ入らなくなってきたと思った頃。新たに人が入ってきた。

ちょっと小太りの、いや、小太りと言うよりしっかり腹が出ている、おでこのとても広い、どこから頭だと突っ込みたくなるような男の人だ。着ている者が上等で華美な物だから、なんかの貴族かもしれない。


あれ?マメダ王国の王様はちょっかい出さないって言ってくれたんだけどな。あ、変な奴が手を出してくるかもって言ってたっけ。

水を飲み込んで一息吐くと、そのおでこの広い人が席に座った。すかさず給仕の人がワイングラスを持って来て、ワインを注ぐ。朝から酒かよ。と内心ツッコミ。


もっともらしくグラスを回し、匂いを嗅いで一口飲む。まさに甘美とばかりに顔を緩め、グラスを置いた。

うん。ワインて一気に飲み干さないものだよね。ジュースだと美味しいとゴクゴク飲んじゃうんだけどな。


「さて。目も覚めて腹も満ちて、そろそろ話をしても良いかな?」


おでこさんが話しかけて来た。


「ここはどこですか。貴方方は誰ですか。うちの子達はどこですか。私に何の用があるんですか」

「質問は順に1つずつにしなさい」


怒られた。


「それじゃあ、あんた誰」

「口に気をつけなさい」


言い方がぞんざい過ぎたか。


「まあ、こちらも確かに無礼な振る舞いをした事は認める。その点は謝ろう。しかし、こうでもしなければ貴女とお話も出来ないと思ったのでね。許して欲しい」

「私とお話? すいません。私、年上は好みじゃないんです」

「誰がお見合いと言ったね?!」


別に好きになれば年上でも良いかもしれないけど、明らかに自分の親と同じくらいの人はさすがに範囲外だ。まあそういう話ではないようだけど。


「話というのはだね、君が所持している従魔についてだよ」


う~ん、やはりそう来たか。


「是非とも、私に譲って欲しいんだがね。もちろん、ただとは言わないよ」

「では、白金貨100億枚で手を打ちましょう」

「君はアホかね?!」


うん、自分で言っててもアホだと思える。でもねぇ、それくらいの価値はあるよね?


「ビタ一文まかりません。それと迷惑料と手数料も付けて下さい。ああもちろん、従魔1体につき白金貨100億枚です」

「調子に乗るんじゃないよ? 君はここがどこだか分かっているのかね?」

「いや、いきなり連れて来られてさっき目覚めたばかりでここがどこだかの説明も受けてませんけど」


・・・・・・。


「うおっほん。実はだね。ここはマメダ王国の西にある、レカーテン帝国の私の領地、モッヒーノ伯のお屋敷なのだよ。分かるかね?」


地図がないとよく分からないなぁ。


「え~と、勝手に国境を越えちゃって、問題になりませんか?」

「私の客人ということで通しているから大丈夫だよ」


なあんだ。そうか~。じゃないか。少し慌てた方がいいのかな?


「つまり、味方は誰も居ないと、そう仰りたいので?」

「そう言っているつもりだったんだがね」


でも私の目の前に、黒猫が座っておりますが。

こんな場面でも落ち着いていられるのは、きっとクロさんのおかげ。


「つまり、従魔を素直に渡さないと、どうなるか分からないということだよ?」


ニヤリと薄気味悪い笑みを浮かべる。


「つまり、私にあんなことやこんなことやそんなことをしてお楽しみするってことですね! つまりロリコン!」

「ロリコンという年かね?!」


ツッコミが来るとは思わなかった。


「まあ、君の想像の通りになることもあるし、それ以上に苦痛を味わう事ににもなるかもしれないよ?」


否定はしてくれなかった。つまりロリ趣味確定。え?幼女じゃないだろ?子供みたいな年の女性に手をかけるなんざ立派なロリコンだわよ!


「でも、私の従魔ですよ? 分かってます?」

「もちろん、手は打っているよ」


おでこさんが指を鳴らすと、紺髪の兄ちゃんが何やら唱えた。


「サイレント」


聞き慣れた英単語だわ~。

って感心している場合じゃない!サイレントって言ったら、日本語訳だと「無音」つまり音消し。


「く、私に従魔を呼ばせない為に声を失くしたと…! 卑怯な!」

「そうその通り! そしてワインには遅効性の自我を失わせる薬が入っていたのさ! はっはっは! …て声?!」

「あれ? 喋れてる?」

「おい!」

「え…?」


おでこさんが紺髪の兄ちゃんを見るが、紺髪の兄ちゃんも戸惑っている。


「ついでに言いますけど、私お酒苦手なんで、ワイン飲んでませんよ」

「なんだとーーーーー!! おい! もう一度! 声を封じろ! 従魔を呼ばれたらヤバい!」

「は、はい! ・・・モゴモゴ、サイレント!」


小さく呪文を唱えていたので聞こえていなかったが、確かに魔法は放たれたようだ。


「あー、あー、マイクテスマイクテス。本日はお日柄も良く。うん、問題なし」

「おい! どうなってるんだ!」

「え…?」


紺髪の兄ちゃん呆然。私もなんで魔法が効かないのか分からないけど、先程から私の目の前でふんぞり返って座っている黒猫さんが原因ではないかと思ってます。


「ほっほっほ。どうやら私にその魔法は効かないみたいね。では、リクエストにお応えしまして、私の自慢の従魔ズを召喚しましょう!」

「おい! 眠らせるんだ!」


金髪兄ちゃんが紺髪の兄ちゃんに助け船。

慌てて紺髪の兄ちゃんが呪文を唱え、聞き慣れた英単語を放つ。


「スリープ」

「ぐう」

「ええい! 振りだけするな! 腹の立つ!」


あ、狸寝入りてバレた?


金髪兄ちゃんも紺髪の兄ちゃんも呆然。そうよね、さっき…かどうかは時系列的にどうかだけど、1度はかかった魔法にかからない。さて、何故かしらね?


「では、リクエストにお応えしまして、カモン! クレナイ、シロガネ、ハヤテにリンちゃん! コハクも忘れずに連れてきてね!」


従魔紋が光った。こういう使い方した事ないから分からないけど、呼べば来るみないなシステムはあるらしい。


「なんだ? その名前は?」


おでこさんが首を傾げている。うん。普通は魔獣に名前は付けないらしいからね。


「あ、給仕の皆さん、ここにいると被害被りますから、今のうちに逃げた方が良いと思いますよ」


給仕の皆さんに一応忠告。皆顔を見合わせ、どうすれば良いのかと悩んでいる様子。まあね、自分の主人に言われた訳じゃないから、すぐには動けないよね。


「ファイヤーボール!」


紺髪の兄ちゃんがしびれを切らしたのか、攻撃魔法を撃ってきた。こんな所で火の魔法なんか使ったら、屋敷がキャンプファイヤーになっちゃうぞ。

ところが、こちらに向かって来ていた火の弾は、何故か空中でピタリと止まり、その色が紫色に変化する。そしてポシャリと消え去った。


「な、なんだ?! 俺の魔法が効かない?!」


まあ、ビックリするよね。


「ち、なら!」


金髪兄ちゃんが腰に下げていた剣を抜き放ち、こちらに飛びかかって来た。

しかし、途中でその動きは止まり、そのまま落下してテーブルに激突。ついでに椅子にもぶつかり、床に転がった。あれ痛いぞ~。


「な、なんなんだ?! なんなんだ?! こいつは?!」


おでこさんが混乱しながら壁際まで下がる。そして、


ドッゴオオオ!


屋敷の壁が破壊され、4人の人影が見えた。


「主殿!」

「主!」

「ご主人様!」

「あるじ~」


リン!


ハヤテの頭にリンちゃんが止まっている。皆無事に来れたようだ。


「ヤッホー。元気だった?」

「主殿こそ、お怪我はないか?」

「主、お体はなんともないであるか?」

「ご主人様、変な物食べませんでしたか?」

「あるじ~!」


リリン!


コハクだけなんだか心配のベクトルが違う気がするんだが。


「私は大丈夫だけど、あの人が私に危害を加えようとしたの」


とちょっとしなを作る。

ギラリ、と皆がおでこさんを見る。


「ひ!」


皆の威圧にやられたのか、おでこさんがへなへなと座り込む。なんか股の所が濡れてきているような気がするけど、見ない事にしよう。

給仕の皆さんも腰を抜かしているのか、その場から動けなくなっている。


「さて、どうしようか」

「ここは派手にやった方が良いの」


おや、クロさんから助言が。


「派手にってどれくらい?」

「更地にするくらいやっても良かろう」


更地って…。


「まあいいか。んじゃあみんな、極力死者は出さないように、このお屋敷のある敷地内、破壊活動に勤しんで下さい」

「分かったのじゃ!」

「承知したである!」

「では私は皆さんの避難誘導をします」

「こわす~!」


リンリン!


リンちゃんがコハクの頭の上に移り、コハクが気絶した金髪兄ちゃんを拾って、動けなくなっている給仕の皆さんと紺髪の兄ちゃんと、へたり込んでしまったおでこさんを急かして屋敷の外へと避難するように動かす。


「まずはコハクの非難誘導をしばし待った方が良いかのう。どれ、ここに余っている食材でもちと食しておこうかのう」


と私が食べきれなかった食事を食べ始めた。埃被ってないかい?


「ハヤテも~」


とハヤテも食べ出した。お腹壊さないようにね。


「仕方ない。我も避難誘導の手伝いを先にしてこよう」


とシロガネもコハクの手伝いに行った。


「お、ワインも美味そうじゃのう」

「あ、そのワイン変な薬が入ってるんだって。飲まない方が良いよ」

「なんじゃつまらん。お、あちらのワインならどうじゃ?」

「ああ、さっきおでこさん用についでた奴か。いいよ。取ってくるよ」

「主殿を使うなんぞ罰が当たるのじゃ」

「いいのいいの。これから思いっきり動いて貰うんだし」


ハヤテはお水で我慢です。

皿の上の食材が綺麗になくなった頃。


「クレナイ殿、ハヤテ、屋敷に人はいなくなったであるぞ」

「うむ! では、妾達の出番じゃな!」

「はかい~!」

「んじゃ、私も出てるね~」


クロを抱いて外に出る。

屋敷から離れた所に、大勢の人達が固まっていた。殆どの人が何が始まるのかとザワザワしていたが、


ドッゴオオオン!

バッゴオオオン!

ガッゴオオオン!

グシャ!

メキメキメキ…

ズズゥ~ン…


そんな音が響き渡って来ると、皆顔面蒼白になった。

盛大に砂埃が舞い、どんどんお屋敷が崩れていく。

しばらくしてシロガネだけやって来て、「我はまあ気が済んだので、保護にまわるである」と言って私達の周りに結界を張った。

その間にも破壊音は続き、器用に敷地内の建物を周りに飛び散らないように破壊していった。もしかしたらシロガネが結界を張っていたのかもしれない。

ほとんど瓦礫となった所で、ハヤテが結界の中に入ってきた。


「しあげするって」


ハヤテの言葉に上を見上げると、クレナイが浮かんでいた。その手に少し大きな火の玉。


「・・・・・!」


クレナイが何かを叫ぶと、火の玉は地面に落ちて、盛大なキャンプファイヤーが出来上がった。

キャンプファイヤーは夜じゃなかったっけ?とズレたことを考えながら、燃えるお屋敷を眺めていた。


派遣切られて早半月。こんな状態なので仕事も見つからず。小説は見事に絶好調。

微妙に思う所のある所ですが、書けるのが楽しくてしょうがないのでしょうがない。

気付いたら130話も超えており、評価ptも頂いて、ブクマも増えており・・・ありがとうございます。

これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。

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