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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
121/194

部分変化

前回のあらすじ~

ハヤテが竜巻を操って、ケルピーが挽肉になった。

「馬如きが!」「我も馬・・・」

日が暮れる前に王都に到着。

ギルドに行ったら、オンユさんがちょっと遠い目をしながら対応してくれた。

早めに片付けてと言ったから、早く片付けたのに、その対応はどうなのかしら?


「まあ、君達だものね…。うん…」


と力なくブツブツ言っていたのがちょっと無気味だった。

ランクアップなどは手続きを終えてからなので、また明日来てくれと。

風呂に行って食事して帰って来て、後は寝る時間となった頃。


コンコン。


誰かが部屋の扉をノックしてきた。


「む? なんじゃ彼奴?」


クレナイが反応し、扉を開けた。


「夜分に失礼する」


ソウシだった。


「なんとか里の皆の了承を得た。クレナイ嬢の両親にも、其方らに危害を加えないように説得出来た。あとはいつでも歓迎出来ると。それだけだ」


ソウシがチラチラとクレナイを見るが、クレナイは全くそれを気にせず、そっぽ向いている。


「それと、八重子殿に少し話が…」


そう言うので、ちょっと皆に距離を取って貰う。部屋の外にと言ったけど、断固として拒否された。夜分に年頃の男と女が一部屋にいるなどけしからんと。

いや、まかり間違ってもソウシと変な事はないと思うけど。

皆のギラつく視線の中、少し顔を近づけ合って小声で話す。

あ、クロは私の側におりますよ。クロは別枠。いつものことだね。

あ、リンちゃんも頭にいるわ。


「八重子殿! クレナイ嬢の私への態度がつれないままなのですが!」

「ごめんごめん。なかなかクレナイのガードが固くって」

「頼みますよ! 私にはもうまともに視線も向けてくれないのですから!」


第一印象が最悪だったしねぇ。


「頑張るけど、ソウシも鍛錬してる? 再戦を申し込んだ時に負けたりしたらもう本当に振り向いてくれないよ?」

「そこはもちろんです。長老様にも鍛えて貰ってますからね!」


エヘンと胸を張る。


「うん。その調子で頑張れ。いずれ里に行った時にでも、クレナイに再戦を申し込んで、その時にぎゃふんと。そしたらあとはゴール一直線…、じゃなかった。あとは従魔紋を解除すれば一気に…」

「なるほど。分かりました。ではその時に向けて鍛錬しましょう。いつ頃来られますか?」

「それはまだハッキリとは。機を見つけていくよ。その時は何か連絡した方が良いのかな?」

「いえ。里の者に言い含めておきますので、いつでもお越し下さい。クレナイ殿を見れば皆もすぐに分かりましょう」

「分かった。その時はよろしくね」

「うむ。お待ちしております」


ニヤリと、笑い合って距離を取ると、何故か皆の視線が突き刺さるように痛かった。


なんで皆そんな怖い顔してるのよ…。


ギスギスした視線を躱すように、ソウシがそそくさと帰って行った。

あれ?今夜この街に泊まっていくのかしら?それともこれから帰るのか?

そうか、夜闇に紛れればドラゴンも目立たない…。うん、いい考えが浮かんだわよ。

1人納得していると、皆が急いでやって来た。


「主殿、お体は大丈夫かや?」

「何事もなかったであるか?」

「あるじ~」

「ご主人様、あまり知らない方と接近なさるのはいかがなものかと」


なんだなんだ?!


「な、何よ皆、ソウシと何もないわよ。ただちょっと内緒話をしてただけだって」

「彼奴、未だに妾に未練があるようじゃのう」

「とにかく気に入らん奴である」

「あるじ~」

「クレナイ様の同郷の方とは言え、あまり近づき過ぎるのは良くないと思います」


ソウシ、うちの子達の間で評判が悪いな。何故だ。


「まあまあ、何もなかったんだから」


と、とにかく皆を宥める。ハヤテはよしよししたら良い笑顔になりました。

皆ちょっと不満を残したまま、一応納得して離れる。


「そういえばさあ、ふと思ったことがあるんだけど」


話題の転換を図る。


「チャージャのブルちゃんの時にさ、ブルちゃん尻尾だけ変身し忘れてたじゃない? あんな感じでさ、部分変化みないなこと出来ないのかな?」


ちょっと思ったんだ。人型のまま、翼だけ出して飛べないのかしらとか。


「部分変化?」

「考えたことなかったである」

「ぶぶん?」


従魔ズが考え込んでいる。


「ハヤテ、その姿のまま、羽だけ出せる?」

「はね?」


ハヤテが首を傾げる。う~ん、分かってないかな。


「う~ん…」


ハヤテが唸りだした。


「ハヤテ? 無理しないで良いよ?」


バサ


「こえ?」


天才か。

てか、カメラーーーーーーーー!!リアル天使降臨―――――!!


想像してみて下さい。

可愛い幼児の背中から、茶色い可愛い羽が生えている所を。

これが親だったら、「可愛い可愛い」と叫びながら、カメラを構え、ビデオカメラを構え、撮りまくっていたでしょう。


「ハアハア、リアル天使…」

「八重子、落ち着け」

「は! しまった、つい興奮してしまった…」


口元を拭く。涎なんて、ちょっとしか垂らしてないよ!


「むう、な、なんと…」

「ハヤテはまだ変身できて日が浅いである。そのせいもあるかもである」

「なるほどのう。妾達はすでに完成形に慣れてしまっておるからのう…」


クレナイとシロガネも何やら頑張っているようではあるが、全く変わりない。


「ハヤテ、それで、ちょっと飛べる?」

「あい」


ハヤテの翼がバサリと動く。

と、フワリと体が浮き上がり、天井付近をクルクルと飛び始めた。

リアル天使。


「ハヤテ! カモン!」

「あるじー!」


ダイビングキャッチ。とは違うか。

飛んで来たハヤテを受け止める。はあ、可愛い。

そのままなでなでキャッキャしていると、リンちゃんも頭から飛び降りて、人型になった。


「私モ!」


美少女の背中に、虫のような半透明の羽が。なんと妖精らしい…。あ、そのままだ。


「写真がだめなら、誰か、絵を描いてくれ…」


何故この光景を残す手段がないのかーーーーー!!


「主、ドオ?」

「ベリベリナイスのキューティフル」


リンちゃんも抱きしめてなでなでキャッキャ。

はあ、可愛い子に囲まれて、なんて幸せ…。


「コハク~」

「な、なんでしょう…」

「おいで」


強制招集。


これで3方向に可愛い子。はあ、天国。背後にはクロの感触。はあ、癒やされる。


「く、何故妾にはできぬのじゃ…!」

「ぐぬ、この姿に慣れてしまって…」


大人組は寝る時まで頑張っていた。











次の日の朝。

起きると、


「主殿! 見てくれなのじゃ! 出来たのじゃ!」


バサリ


とコウモリのような爬虫類の羽を生やした赤髪の美女。

なんか、吸血鬼みたい…。


「主、我も出来たである!」


バサリ


・・・・・・。


説明しよう。どうか想像してみて欲しい。


白髪の美形が、白い服を着て、その背中にまた白い白鳥のような羽。


うん。熾天使。


この世界、天使信仰とかあるんだろうか。

もしあったなら、これ、ヤバいよね。


「とりあえず、皆、人前で羽生やすの禁止ね」


コハクがいつも通り持って来たタライの水で、今見たものを消し去るように顔を洗った。

クレナイとシロガネがなんだかとっても気落ちしていたのは何故だろう?そんなに羽を生やして街を歩きたかったのかしら?


我が家のニャイドルのお腹を愛でていたら、しつっこいと足蹴りいただきました。

やりすぎた。

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