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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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我が輩は黒猫のクロである

前回までのあらすじ~

豚ブルドッグの屋敷でクロが一暴れして帰って来た。

首元のクロの頭の感触が可愛い過ぎて、歩きながら軽く頬でうりうりとしてしまう。

ハア、マジカワイイ。ハアハア。


「何をハアハア言っておる」


いかん、心の声が出てしまっていた。


「クロさんが可愛い過ぎて」

「それは知っているがの」


うああ、なんて生意気な返事だ!それも可愛い!

少し嫌がるクロをモフリつつ、高級感溢れる住宅地を過ぎ、いつもの通りへと戻ってくる。

そういえばもう昼時ではないかと、適当にその辺りの屋台で買って食してみる。

うむ。なかなか美味。


肉を焼いた系が多いが、お好み焼きや焼きそばっぽいものもある。

面白いものでは、魔法を使って氷を作ってフラッペみたいなものを売っている所があった。

値段が少しお高めなので、今日はもう腹も膨れてるしいいやと素通り。

クロに言われて今日の予定を思い出し、雑貨屋で紙と鉛筆のような物を贖う。そこそこのお値段。

気疲れしたし、文字も纏めたいしで、宿屋へと戻った。


また追い出されるかと思いきや、先に掃除しておいてくれたとか。ありがたや。

どうやら今日は休むことをなんとなく察してくれていたらしい。

プロだ!プロの鏡だ!

私のことも心配してくれていたらしく、何があったかと問いただされたが、適当に答えておいた。

まだ何か心配そうにしていたが、とりあえず大丈夫だからと、部屋に引きこもる。


単語帳を見ながら文字の練習と、なんとなくのあいうえお表を作るのだ!

机に向かい、書き始める。

なんといってもまだ現役の学生だもの。机に向かうのは得意です。向かうだけとは言わないで。


「ふむ。このまま八重子はしばらく引きこもりかの?」


あ、クロさん暇かしら?


「今日はもうそうしようかなと。お金も払ってきたし、あとは夕飯に行くだけかな」

「ふむ。では、我が輩ちょっと出かけて来ても良いかの?」

「トイレ?」

「それもあるが、情報収集とかもの」


ああ、クロさん、人の頭覗き放題だものね。


「うん。いってらっしゃい」

「夕飯までには戻る。それまでできるだけ人と接触せんようにの」

「なんで?」

「言葉が通じるならば接触しても良いがの」

「あ…」


そうでした。自動翻訳機のクロさんが出かけるということはそういうことだ。


「なるべく早く帰ってきて…」


来ないとは思うが、ウララちゃんが来ても対応できない…。

寝たふりして誤魔化すか。


「うむ。早めに帰るとしよう」


そういうと、開けた扉の隙間から、するりとクロが出て行った。

なんか、途端に不安になるんだけど…。

いえいえ、私も文字を読むために頑張らなければ!

鉛筆を握りしめ、机に向かった。













銀翼の剣の4人が、ギルドのテーブルに座って何やら話し込んでいた。

仕事があるかと見に来たが、自分たちのレベルに合うものもなく、狩りにでも行こうかと話したが、それよりも4人の戦術について意見を詰めようと言う話になった。

森の中で会った不思議な猫のおかげで、多少懐にも余裕はある。猫の助言を素直に聞いた4人は、冒険者の人達に声を掛け、親切な冒険者に剣の指導などを受けていた。

その他にも、4人でも戦術をよく考えた方がいいとの助言を受け、暇ができると色々と話し合うようになっていた。


話していると色々見えてくる物もある。

良かれと思ってやっていたことが、実は邪魔になっていただとか。

できるだけの状況を想像しながら、4人はどう動くかの話し合いを続けていた。


すると、何やらギルドがざわりとなった。

話に夢中になっていた4人は気付かず、話し合いを続けている。


「ここにおったか、お主ら。探したぞ」


そう声を掛けられ、4人がギムの後ろに立った人物に気付いてその顔を見上げた。

端正な顔立ちの黒髪に金の瞳の、全身黒服の男だった。

レンカの顔が仄かに赤くなり、男達は呆然と見上げる。

唯一ダナが、何故か瞳を輝かせた。


気づけばギルド中がその男を見つめている。

薄く笑みを浮かべた口元。少しきつめだが優しさを湛えた瞳。

女性は仄かに頬を赤らめ、男達は少し悔しそうな顔をしている。

粗野なギルドになんだか場違いなその男は、視線を集めながらも平然と立っていた。


「お主らに話がある。少し付きおうてくれるかの」

「はい! 喜んで!」


男の言葉に、ダナが喜び勇んで立ち上がる。

その返事の早さに驚く3人。


「ちょ、ちょっと、ダナ?!」

「リーダー俺…」

「え…、知り合い?」


会ったこともないのにこちらを知っている風のその男に疑問を抱いていたのに、ダナが何故か速攻で返事してしまい、困惑する。

ダナの返事に了承は得たとばかりに、男が歩き出し、ギルドから出ていく。

ダナもその男の後ろに付いて行ってしまう。

慌てて3人も、男とダナの後を追ってギルドを出ていった。

その後しばらく、ギルドは騒然としていたという。










男はそれ程急ぐ風でもなく、それでいて段々と人気のない方へと進んで行く。

やがてスラム街の方へ出て、やっと男が足を止めた。

ダナを先頭に付いてきた4人も足を止める。


「ここらなら人がいなさそうだの」


周りを見渡し、男が4人の方へと振り向いた。

ダナ以外の3人が、男をじっくりと見つめる。

どこかで会った、または見かけたことが会っただろうか…。

しかし、これほど目立つような人物を、見かけたことも噂を聞いたこともない。

訝しがる3人を、男は少しおかしそうに見つめた。


「ふむ。分からぬのも無理はなかろうの。ダナと言ったか。その方は我が輩が分かるか」

「もちろんでございます。クロ様」


ダナの言葉に驚く3人。

何故男の事を知っているのか、そして、そのクロ様というのは、森で会ったあの黒猫のことでは…。


「ふむ。お主は色々と読み取る力が優れているようだの。魔法使いとしては優秀なようだの」

「お褒めいただき、光栄にございます」


ダナが深々と頭を下げた。

一体ダナに何があったのかと心配になる3人。

あの日、あの時から、引っ込み思案だったダナが、なんだか堂々とした態度を取るようになって来ており、ダナの保護者気分であったレンカは、今まで妹分だったダナの様変わりように困惑し、少し寂しく思っていた。


「さて、後ろの3人は未だに不思議に思っているようだが、我が輩は黒猫のクロである。

まあ、別に信じなくても良いがの」


信じられないけれども、3人は目の前の男が真実を言っていると何故か確信できた。

聞いた話によると、高位の魔獣は、人に変化できる力を持った者もいるらしいとか。

それなのかと3人は納得することにした。

でも猫だよね?

その疑問は心の奥底にしまい込んだ。


「信じる信じないはお主らに任せるとして、ここまで足を運んで貰ったのは、まあ我が輩の正体をあまり知られたくないというのもあるが、お主らにまたちょっと依頼したいことができての。

あの場で言うと、ギルドを通せと文句を言われそうだったのでの」


冒険者への依頼はギルドを通じて行われる。

ギルドはその紹介料などを頂き、運営しているのだ。

直接的に依頼を受けることもないことはないが、それだとギルドへの貢献ポイントが貯まらず、ランクを上げられなくなってしまう。

ランクを上げなければ受ける仕事の幅も狭くなり、稼げない。


それにギルドを通さない依頼は、確かに依頼を成功させれば、ギルドへの手数料が引かれることなく、規定よりも多少多い金額を受け取ることができるであろう。しかしギルドへの貢献ポイントも貯まらないし、もし失敗したとしたら、ギルドという防波堤がないので、違約金を払って済むような問題では無くなってしまうこともある。

なので冒険者は直接的な依頼でも、できるだけギルドを通して受けるようにしていた。


話題の闇営業とはまた違うものである。

先程居たギルドの中で、直接依頼したいと言っても、ギルド職員の待ったが入るのは必然だった。

なので場所を移動したのである。


「いかなるご用命でしょうか、クロ様」


ダナは受ける気満々である。


「ちょっとダナ!」


さすがに止めに入るレンカ。


「リーダーは俺だろ!」


そっちが気になるかギム。


「せめてどんな内容か聞いてから決めようよ」


冷静なコール。


「うむ。そっちの小僧の言い分が正しいぞ。

ダナとやら、迂闊に依頼を引き受けるなどと口にしてはいかん」

「はい! 申し訳ありません! 以後気をつけます!」


素直に頭を下げるダナ。

引き攣る3人。

本当に、いったいぜんたい、ダナに何があったのだろうと心配する。


「まあ、今回もそう難しい依頼ではないがの。

前回は良くやってくれたの。おかげで良いように事が運んだわ」


にっこりと微笑むその顔に、少し見とれてしまうレンカ。

いやいや、相手は黒猫だぞと気を引き締める。


「依頼の内容だがの、迷い人についての話を集めて欲しいと言うことだけなのだ。

無理に集めろとは言わん。耳に入ってきたものだけでよい。どうかの? やってくれるかの?」


ダナが答えようとしてぐっと我慢した。後ろを振り向き、ギムを見つめる。

レンカとコールもつられてギムを見つめた。

3人に見つめられ、少し慌てるギム。いやいや、ここはリーダーとしてしっかりしなければ。

少し考えるフリをする。


「お、俺は、まあ、良いんじゃないかと思うが? 確かに難しい話では無いし」

「俺も。話を集めるだけなら危険もないし」

「あたしも賛成。それくらいならあたし達でもできるものね」

「私は賛成です」


4人の意見は纏まった。


「その依頼、お受けします」


ギムが代表してクロに答えた。


「うむ。よかろう。ではこれは依頼料だ」


そう言って、ポケットから金貨を1枚取り出して、ギムに手渡した。

ギョッとなる4人。

金貨など初めて手にしたギムの手が震える。


「それと、その話を集める際、我が輩のことは言わぬ事。

話を集めている者がいるなどということも言わぬ事。

お主らの興味本位で話を聞いているということにしておいてくれ」

「は、はい。分かりました」


言ったらどうなるかなど、3人は考えたくもなかった。


「あの、話が集まったら、どうやってクロ様にお伝えしましょう?」


ダナが尋ねる。


「うむ。時折我が輩がお主らを尋ねる。その時に耳にした話を貰えれば良い。

もしその金が足りないようなら、追加で払うことも考える」


話を集めるだけなのに金貨を貰って、しかも足りないようなら追加料金もあるかもしれない…。

なんだか上手い話過ぎて、ちょっと不安になってくる3人だった。


「話は変わるが、お主ら、我が輩の忠告をきちんと聞いているようだの」

「はい! もちろんです!」


嬉しそうにダナが答えた。

反対に怯える3人。

何故知っている?どこで見てた?話を聞かれてた?

怖くて聞けない。


「今日はこの姿だし、まだ時間もあるし、我が輩が少しアドバイスしてやろうか?」

「是非! お願いします!」


止める間もなくダナが答えた。

青ざめる3人。

何が始まるというのか…。


「ふむ。では、少し広いところへ行くかの」


そう言って歩き出す。

断ることも怖くてできず、3人は嬉しそうなダナの後ろからトボトボと付いて行ったのだった。







少し広い所へ来ると、ギムはまず素振りをやらされた。

そして素振りを毎日100回こなすことを約束させられる。

コールも素振りをさせられ、同じく素振りを毎日100回。

レンカは矢を飛ばして、精度を見られる。

1日100本練習で打つことを約束させられた。

最後にダナが魔法を使ってみる。

ダナがそれまでに使うことができたのは、ファイヤーボールとストーンバレットの2種類のみ。しかし、クロからもらった知識により、火、水、風、地の魔法を使えるようになっていた。


「ふむ。元々の魔力操作能力は高いと見えるな。

足らぬは知識だけであったか。ダナ、お主文字は読めるかの?」

「いえ…。習ったことがないので…」


悲しそうにダナが答える。


「良い。ではダナは文字の習得が課題であるな」

「文字、ですか?」

「文字が読めれば本が読める。本は知識の宝庫であるぞ。

さすればお主の魔法もどんどん上達するであろう。魔力操作の練習も毎日欠かさずやるのだぞ」

「はい! 分かりました!」


嬉しそうにダナが答えた。




その日、ギルドの単語帳が、また一つ貸し出されたそうな。



更新だぜひゃっはー!眠くてハイテンションだぜひっふー!もう寝るぜぐー・・・。

でもこれ更新するの朝なんだよな・・・。予約掲載設定するから・・・。

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