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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
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不自然ではないかい?

前回のあらすじ~

チャージャを助けた。

マンイーターの討伐証明部位を取って、いまだに気絶している動物達はそのままに、誘われるままチャージャの住む家へと向かった。

先程見た小さな村から、さらに少し離れた所に、チャージャの家はあった。


「ちょっとボロいすけど」


確かにボロい。

いや、今にも倒れそうなという程ではないが、なんつうかボロい。

と、その時、道の向こうに人影が見えた。

3人の男の人と、少し小さな2つの影と、犬?

チャージャの姿を確認して、なんだか馬鹿にしたような顔をした後、クレナイに視線を移して、一瞬固まった。

そして慌てたように森に入って行った。


「綺麗な狼…」


犬かと思ったけど、あれは狼だ。間違いない。

青銀の毛並みの、精悍な顔つきのこれぞ狼というような狼だった。

それと、小さな2つの影、あれ、人間じゃなかった。獣人と呼ぶには全身毛深過ぎて、体付きも犬っぽい。

コボルトって奴じゃなかろうか。

ん?何故クレナイにシロガネにハヤテ、ちょっと不機嫌な顔をしているの?


「あいつら、また来たっす」


チャージャが彼らを睨み付けた。


「今の奴等が、ブルちゃんと新しく契約結んだ奴等っす。父は従魔師の中じゃ変わり者と呼ばれてて、あいつらはそんな父のことを良く思ってなかった奴等っす。ブルちゃんと契約したからって、ことあるごとに見せびらかしに来るっすよ」


つまり嫌な奴等ってことね。


「ブルちゃんて、今の青銀色の狼? ブルーシルバーウルフだっけ?」

「そっす。ブルーシルバーウルフなので、ブルちゃんて呼んでたっす」


安直だ。


「自分、本当ならブルちゃんを譲り受けるはずだったんすよ。父の従魔の中でもブルちゃんは自分に懐いてくれてたっす。よく一緒に寝たりもしてたっすよ」


寂しそうにチャージャが呟いた。


「どうにかならないの? 元の持ち主が父親だって証明したらとか…」

「契約主が死んだ時点で、契約従魔は見つけたもん勝ちっす。無理っすよ」

「買い取りとかは?」

「1度そんな話も持ち込んできたっすけど、明らかにからかい目当てっすね。自分には払えない事が分かってて、金貨5枚ふっかけてきたっす」

「それ、今でも有効かしら?」


金貨5枚なら今の私ならいけるぞ。


「無理っすよ。自分にそんな金ないし、なんか、どこぞのお偉いさんに売る事が決まったとか話を聞いたっす」


う~ん、諦めちゃってるんだなぁ。

どうにかならないかしらと首を捻るも、私の頭でそんな良いことが浮かぶこともなく、誘われるままにチャージャの家の中へと入っていった。


「何にもないっすけど」

「本当に何もないね」


入ってすぐ、居間?リビングと言った方がいいのかしら?

少し大きめで、台所らしき所があり、椅子が一脚にテーブル。小さな鍋と、お皿が一枚。

何をどうやって食べてるのだろう。


「あ! しまった! コップがない!」


と慌てている。


「シロガネ、出来る?」

「朝飯前である」


シロガネがちょっと外に行って、木でできたコップを人数分持って帰って来た。

なんと便利な。


「コップ、自分達のがあるので」

「ああ、申し訳ないっす。さすが冒険者っすね。常備してるんすか」


ちょっと違うけど、そういうことにしておこう。

椅子もないので、チャージャが普段使っているという布団を軽く敷いて座らせようとする。

地面に近いので、リンちゃんにお願いしたら、柔らかい草を生やしてくれました。

チャージャが目を丸くしていたよ。


「粗茶っすけど」


と言って入れてくれたお茶は、ほとんど色が出ていなかった。

なんか、泣けてくるんだけど。

味もほぼなし。ただのお湯と言った方が早い。

本当に極貧生活してるんだな…。


「な、なんか、申し訳ないっす。思ったより物がなかったす」


平謝りに謝ってくる。


「いやいや、大所帯で押しかけたのはこっちだし」


なんとなく危なっかしいから付いてきたってのもあるんだけど、危なっかしいどころじゃなく、何もなかったね。

話てみると、同い年だということが分かった。


「ブルちゃんを抱いて寝るのが気持ちよくって。すんごいいい抱き枕なんすよ」

「うちのクロも左脇に入って来てゴロゴロ言うのよ。それがすんごく気持ちよくって」

「ブルちゃんはお腹に頭乗っけても嫌がらないのでそのまま寝られるんす」

「クロのお腹に顔を埋めると天国にいる気分になります」

「ブルちゃんは頭が良くって格好良くって足も早くて狩りも上手くて」

「うちのクロも頭良いし格好いいしジャンプ力も凄いし狩りも上手いです」

「ブルちゃんは…」

「うちのクロは…」


「主殿、不毛な争いになっておるぞ」


クレナイからストップがかかりました。

飼い主自慢は尽きることがありません。


「ふ、チャージャ、系統は違うが、私達は同士であるとみえる」

「そっすね。同じ匂いを感じるっす」


2人は互いに手を出し合い、握手を躱した。友情が芽生えた瞬間だ。

クロが呆れたように溜息を吐いたが、気にしない。


「う~ん、どうにかチャージャのブルちゃんを取り戻せないかしら?」

「それは無理っすよ。万が一あいつがおっ死ぬか、あいつ自ら契約を放棄すると宣言しない限りは」

「ふむ。彼奴を亡き者にすれば良いのじゃな」


立ち上がりかけたクレナイを制する。

殺しちゃいけません。


「でも聞けば聞くほど、チャージャが可哀相というか、不憫というか」

「それは仕方ないっすよ。運が悪かったとしか言いようがないっす」


と、クロがクレナイの元へと移動した。何やら肩に乗ってイチャイチャしている。

嫉妬しちゃうよ?


「主殿、命を取らなければ、どのような方法を取っても良いのじゃな?」


なんか含みのある言い方だけど。


「う~ん。まあ、許す!」


OKして様子を見てみましょう。


「な、何かするんすか?」

「私には分からないけど」

「なんで、なんで今日知り合ったばかりの自分に、そんなことまで…?」


チラリとシロガネを見る。


「う~ん、覚えてないかもしれないけどね、こっちの男の人、シロガネが、以前あなたにお世話になったようなので」


チャージャがいなければシロガネと会うこともなかった。

シロガネにとっては良い迷惑かもしれないけど、私はシロガネとの出会いに感謝しているので。出来たら何かしてあげたい。


「そちらの男性…? う~ん、覚えがないっすね~」


でしょうね。

首を傾げてうんうん考えるチャージャだったが、どこでシロガネに会ったのか分からないらしかった。

当然でしょうね。


「あい」


ハヤテが何かに返事をして、リンちゃんもハヤテの頭に移動すると、クロを引き連れて外に出て行ってしまった。


「あ、あれ、いいんすか?」


端から見たら幼児が1人で外に出て行ったように見えるよね。


「ああ、大丈夫。すぐに戻ってくるから」


一応大丈夫のフリ。

クロ、せめて何か教えておくれよ。まあチャージャがいるから喋れないのは分かるけどさ。

少ししてクロだけ戻ってきて、私の膝に収まった。


「さて、では幼児だけ外に出しておくのは心配じゃ。主殿、探しに行こうぞ」


そう言ってクレナイが立ち上がった。

何かを考えておりますね?


「分かった。行こうか」


私も立ち上がる。


「人手は多い方が良い。其方も手伝ってくれるか?」


チャージャも引っ張り出すらしい。


「はい。いいすよ」


なんの疑問も思うことなく、チャージャが立ち上がった。

うん。この子、良い子なんだよな。

コハクとシロガネも立ち上がり、皆でゾロゾロ外に出る。


「はて、どこまで行ってしまったかのう?」


白々しいですよクレナイさん。


「まずくないっすか? 迷子になってるのかも」


こちらは良い人チャージャさん。

クレナイ達は何を考えてるんだろうね?


「あちらかのう?」


そう言って歩き出すクレナイ。


「あ、じゃあ自分はこっち見に行くっす」


そう言って離れようとしたチャージャの首元をクレナイが掴んだ。


「いやいや、離れてしまっては危ないのじゃ。一緒にこちらを探しに行こうぞ」

「え、え? でも…」


問答無用でチャージャを引き摺りながら歩き出すクレナイ。

不自然過ぎやしないかい?


いかん、眠い・・・

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