チャージャ
前回のあらすじ~
マンイーター倒しに来たら、捕まってる人がいた。
頭?は目なし、口?だけがガバッとひらいているだけ。よく見る食虫植物のようだ。
その下に体なのか、頭を支える為にあるのか、蔓のような物がタコ足のように生え、うにょろうにょろ動いている。
その触手には、他にも動物らしき物も捕まっているのだが(マンイーターじゃないんかい)その1本には明らかに人が!
「あ、あれ、人じゃない? た、助けないと」
と私がオロオロしているというのに、皆冷静だわね。
「人じゃのう」
「人であるな」
「ひとー?」
「人ですね」
なんで冷静なのよ!
「まあまあ、慌てるでない主殿。あれはまだ食さぬようじゃし」
「え? なんで?」
「食らうつもりならばすでに食らっておるじゃろう。あれは今腹がくちくなっておるのかもしれん。腹が減ったら食らうつもりなのじゃろう」
「保存食みたいな?」
「そんな感じじゃのう」
嫌な感じ。
それでも早く助けなければならないことには変わらない。
「ということで、よろしくお願いします」
「妾じゃと、全て滅してしまうやもしれんのう」
「助けてあげて下さい」
「シロガネ殿、たまには行ってみるかの?」
「いや、我は主をお守りするという大役があるので」
そんな大役いつの間に担っていたのでしょう。
「ではやはりハヤテかのう?」
「ハヤテー!」
ハヤテが嬉しそうに両手を上げて答える。
コハクはさすがに、今回はお休みで。
なんでって?マンイーターだからだよ。
万が一にも食べられちゃったらどうするのよ!
「ハヤテ、なんか捕まってる動物達と、あの人は傷つけちゃだめよ? 倒すのはあのマンイーターだけね?」
「あい」
いいお返事をして、ハヤテがテコテコとマンイーターに向かって行った。
「主殿、人以外も助けられるのか」
クレナイが聞いて来た。
「まあ、倒しても街まで持って帰れないし、私の主義として、やはり無駄な殺生はあまりしたくないかな。何かあってもクレナイ達がいるからなんとかなるでしょ?」
クレナイとシロガネがにやける。何故?
「うむ! 妾がなんとかしてみせようぞ!」
「我がいれば主に傷一つつけさせないのである!」
なんだかハリキリ出した。
テコテコと向かって行ったハヤテに気付いたのか、マンイーターが頭を向ける。
「たおすー!」
何でもないように言って、ハヤテが腕を振るう。
すると、ハヤテに向かっていた触手達が、スパスパと切り落とされていく。
なんて凄いのでしょう、ハヤテちゃん。
その後も迫り来る触手をスパスパ切り落とし、ついでに捕まっている触手達もスパスパ切り落とし、落とした後のことは考えていなかったけど。
頭から地面に落ちてたけど、あの人大丈夫だろうか…。
ハヤテの猛攻に敵うわけもなく、ほぼ全ての触手を切られたマンイーターが逃げ始めるも、ハヤテは逃さない。
移動用に残っていた触手も全部刈り取って、動けなくしてしまい、最後は頭を真っ二つ。
うん、植物?だからまだましかな。これが動物だと内臓云々が…。
「ハヤテ、人間だけ引き摺って来やれ」
とのクレナイの言葉に、
「あい!」
と元気よくお返事。
トテトテと倒れている人の側に近づき、むんず、と足らしきものを掴み、そのままズルズルズル…。なんだか申し訳ない。酷い格好で運ばれてきた。
気絶していたのでそのままリンちゃんに治療をお願いする。
俯せだったのを仰向けにしてみれば、実は女性だったという事実。ローブを羽織っていたから性別分からなかったんだよね。
女の子の顔に傷を残すわけにもいかんと、リンちゃんにここら辺は力を尽くしてくれと注文。いや、まさか、ハヤテが付けたとは思わないけど、一応ね、一応。
すると、その女性を見て、シロガネが唸った。
「む、この女…」
「知ってるの? シロガネ」
「う~ん、覚え違いでなければ、我に従魔紋を施した新米従魔師であったと思う」
ああ、あの、昼寝中のペガサスにこっそり従魔紋を施した、ある意味勇者さん。
が、何故ここに?!
「う~ん…」
その女性が目を覚ました。
「あ、大丈夫ですか?」
声を掛ける。
「はれ? ここは? 貴女は?」
「ここは北の森、マンイーターが出ると噂の場所。私は冒険者やってる八重子です」
「は! マンイーター! マンイーターどこ?!」
ガバリと突然起き上がる女性。
「あ、あの、マンイーターは既に倒しちゃってますけど」
「え? マンイーターを倒した? ああ、魔術師? の人?」
「いえ…。一応…、従魔師? で登録してます」
あれ、よく考えたら、私無職?
「従魔師の方っすか…。…、従魔は?」
「ええと…。話せば長くなるのでちょっとここでは…」
「ああ、申し訳ないっす。無理には聞かないっすよ」
なんか、憐れむような目をされてるんだけど、何か勘違いされてるよね?
「貴女は? なんでこんな所に?」
「ああ、自分はチャージャって言うっす。その、未熟ながら自分も従魔師でして。色々事情があって、まだ自分の従魔を持ってないんすよ」
とポリポリ頬をかく。
「それで、ここにマンイーターが出るって聞いて、どうにかマンイーターを従魔に出来ないかとやって来たんすよ。そしたら捕まって、意識がなくなって…。てことは、貴女、命の恩人すね! すいません! 遅くなりましたが、ありがとうございます!」
「いえいえ、どう致しまして」
頭から落ちたことは黙っていよう。
「其方、何故従魔師なのに従魔がおらんのじゃ?」
もっともな疑問ですね。
「その、自分は、父親が従魔師で…」
チャージャが語ったことによると、元々父親が従魔師で、彼女もその後を継ごうと父から指導を受けていたらしい。普通の従魔師は、一人前になると、師から1体従魔をプレゼントされるらしい。いきなり単身魔獣を捕まえてこいというのはやはりハードルが高いのだそうだ。
彼女も本当なら一人前になる頃に、父親から従魔を受け継ぐはずだったのだが、その前に運悪く、とある依頼を受けた時にお亡くなりになってしまったと。
その時父親に付いていた従魔は3体。2体はその時一緒に亡くなってしまったのだが、残る1体はまだ生きているという。
「その子は、ブルーシルバーウルフという、シルバーウルフの亜種という珍しい子だったす」
従魔は契約主がいなくなると、新たな主を求めて彷徨い出す。
そのウルフも彷徨って、彼女ではなく、違う従魔師に拾われてしまったのだそう。
故に、彼女は従魔を持っていないのだそう。
「1度、奇跡でペガサスを従魔契約出来たんすけど、借金の形に取られちゃいまして」
その時の資金で借金は返済出来たものの、少ない資金もあっという間に底を尽き、かといって従魔師の仕事も出来るわけもなく、ちょっとした依頼を受けながら、細々と暮らしていたらしい。
「それで、今回起死回生のマンイーターを従魔にしてやろうと来たんですけど…」
あえなく返り討ち。
「まず、胸がどこか分からなくて」
そこからですか。
「まあ、あんなのに単身で挑んでもねぇ」
うちの子達ならともかく。
「本当に、今回は命ヤバかったす。助けてくれてありがとうっす。何もないけど、お茶くらいは入れるんで、うちに来て下さいっす」
悪い子でないことは分かる。ただ、どこか抜けてる感がひしひしと…。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
なんとなくほっとけない感じがして、それに、シロガネと合わせてくれたお礼も兼ねて、チャージャの家に行くことにした。
最後の方、眠くて誤字脱字がしょっちゅう・・・。
直してますけど、治ってなかったらごめんなさいです。




