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異世界は黒猫と共に  作者: 小笠原慎二
102/194

トレントと戦おう

前回のあらすじ~

トレント狩りに行こうぜ!

「どど、どーすんの?!」

「落ち着くのじゃ主殿。心配はいらぬ」


クレナイがそう言うと説得力あるわー。安心。


「いや、でも、どうやって抜け出す?」

「守りは既に敷いてある故、ハヤテ、やってみるか?」

「ハヤテ?」


名指しされたハヤテが首を傾げる。


「そうじゃ、この周りにおる動く木を狩ってはみんか?」

「あい!」


元気に手を上げ、さっそくとテコテコ列から離れて行く。


「お、ちょ、ちょっと! いいのか?!」


離れて行くハヤテと私達を交互に見やり、慌てたようにウルグさんが叫ぶ。


「大丈夫じゃ。大人しく見ておれ。そなたはそれを見に来たのじゃろうが」


何を今更とクレナイが溜め息を吐く。


「だ、だがしかし…!」


ウルグさんがそう言ったと同時に、


ズズ~ン


何かが倒れる音。


「お、やりおったのう」


クレナイが見つめる先には、倒れた木。

あれ、でもまだなんか動いてないかい?


「ふむ、倒すのは容易くとも、止めを指すのは厳しいか?」


クレナイさんの実況中継が入りました。

それを聞いているのかいないのか、あんぐり口を開けて固まっているウルグさん。

見てるよね? うちのハヤテの活躍見てるよね?

よく目を凝らせば、木々の間に時折ハヤテの姿。跳んだり跳ねたり走ったり。目で追い付けないよ。

幼児なのにあの身体能力…。さすがグリフォン。


「あれ、でも火の魔法使ってなくない?」


さっきから風の魔法しか使ってないように見える。


「さすがにこんな森の中で火を使ってはのう。森の中では火はいかんという教えをちゃんと覚えておったようじゃな」


ニヤニヤしながら解説してくれるクレナイ。

クレナイはハヤテをどういう風に育てたいのだろう。

まあハヤテが楽しいならいいか。


バチン!!


「な、何?!」

「なんだ?!」


私とウルグさんがほぼ同時に叫ぶ。


「ああ、大丈夫である主。こやつらの攻撃など、我の前ではそよ風に同じ」


シロガネが手を上げて落ち着くようにと指示する。

気分的には、その後ろに見える物で全く落ち着けないのですが。

なんかでっかい木が、枝を鞭のようにしならせて、何度も私達目掛けて振り下ろしている。

その度に、シロガネがいつの間にか張った結界に当たって、バッチンバッチンいっているのだった。


「視覚的に怖いので、なんとかしてください」


ウルグさん、再び口を開けて固まっている。

早くなんとかしてあげよう。


「ハヤテに任せようかとも思ったのじゃが…。おお、そうじゃ、コハク、やってみるか?」


なんですと?!


「え、わ、私?!」


コハクも驚いてるよ。


「いや、クレナイ、さすがにコハクには…」

「主殿、コハクは獣人族じゃ。元より人よりも戦闘能力は高い。腕試しでちょろっとやらせてみても良いと思うのじゃ」

「だけど、コハクが嫌がるでしょ。ねえ? コハク?」

「う、あの…」

「コハク。自分を卑下するでないぞ。其方らの一族も、その血に誇りを持っておった。小さいとはいえ其方も立派な獣人族じゃ。胸を張れい!」


クレナイの活に、コハクが伏せていた顔を上げ、背筋をピンと伸ばす。


「先が短い長いなど考えるな。其方が今、生きたいように生きるのじゃ」


クレナイの言葉に、コハクの瞳に光が点り始める。

一応ちゃんとコハクのこと考えてくれてたのね、クレナイ。


「ご、ご主人様…」


コハクが言葉を紡ぎ始めた。

こうなっちゃったら、答えてあげるしかないでしょう。まったく。


「何? コハク」

「わ、私も、戦ってみたいです!」


初めてのコハクのおねだりが、戦いたい…。

微妙に複雑な気分です。


「う~ん、よし、と言う前に、条件がある!」

「じ、条件、ですか?」


恐る恐る此方を見るコハク。


「そう! 怪我をするな、っていうのはまあ、無理なのは分かってる。だから、死ぬな!」

「…はあ」


キョトンとした顔をするコハク。そんな変なこと言ってる?


「病気は仕方ないとしても、戦いとか、怪我で命を落とすことは許しません! これは絶対命令です! これが守れないようなら、戦わせません! どお?!」


あれ、コハクが俯いちゃったよ?


「は、はい。が、頑張ります…」

「守りますとお言い!」

「ま、守ります!」

「よし! なら行ってよし!」

「はい!」


駆け出そうとしたコハクの襟首をクレナイが掴む。


「これこれ、逸るでない」

「く、クレナイ様…」

「これ、リンや、コハクの補佐に付いてやっておくれ」


リン!


リンちゃんがふわりとコハクの頭に乗ると、そのクマの耳に捕まった。

だーかーらー!なんでカメラがないかなああああ!!!


「リン、頼むのじゃ」


リンリン


リンちゃんからもいい音頂きました。


「これ、コハク。待たれよ」


今度はシロガネがコハクを掴んだ。


「一応その身にも我の術を施してやる。だが、あまり無理はするでないぞ?」


シロガネがコツンとコハクの額を小突いた。


「は、はい!」


コハクが張り切って、相変わらず結界を、バシバシ飽きることなく叩きまくっているトレントに突っ込んでいった。


「お、おいおい…」


ウルズさん、一応金縛りからは解けていたのね。しかし、やはり幼いコハクが駆けて行くのを見て、顔が引き攣っている。

だよねー。だって、武器も防具も着けてないもの…。って、そうだよ!コハクは普通の服しか着てません!

だ、大丈夫だよね…。


結界を出たのか、コハクが見事なステップで、トレントの枝を避ける。


すげ…。


ウルズさんも、何かを悟ったような顔をしている。

うん、その気持ち、よく分かるかな。

少し遠いところからは、相変わらず大きな木が倒れる音が。

順調に片付けているのだろうか、ハヤテ。

コハクも見事に迫り来る枝を避けるが、なかなか本体までには届かないようだ。


お?


地面から突然ツタが生えてきて、器用にトレントの枝を縛り付けてしまう。

全てではないが、太い枝は殆ど捕らえられてしまった。


リンちゃんだな。


こうなったらば、もうコハクも怖いものなどない。

見事なダッシュであっという間にトレント本体に近づき、その顔らしき所に拳を叩き込む。

コハクちゃん、武闘派だったんですね。

ついでに足蹴りもたたき込み、最後は両足で顔面を蹴って距離を取る。

その間も迫り来る枝の処理を忘れない。


う~ん、なんて器用な子を拾ったんだろう…。

リンちゃんのツタも次々と切られては、また地面から生えてトレントの動きを止める。

そんな連携プレーを繰り返し、ついに、コハクの拳がトレントの顔面を打ち抜いた。

ぐらりと揺れるトレント。


「コハク! そのまま叩き折るのじゃ!」


叩き折るって、おいおい。

その声が聞こえたのか、コハクが連打をトレントの顔に叩き込む。

するとヒビが広がり始め、皮が飛び、木片が飛び…、


「だりゃあ!!」


渾身の気合いを乗せ、回し蹴り2段蹴りが炸裂!

なんで空中であんなに器用に回転出来るんでしょう。

メキメキと音が広がり、トレントがバランスを崩してその体?を地面に傾けていく。

そして、その頭?はさらに角度を増して地面を目指していく。


ズズ~ン・・・


とうとう、トレントが倒れた。

どこか遠いところを見つめているよ、ウルズさん。大丈夫か?


「ご主人様、やりました!」


嬉しそうにコハクが帰って来た。


「お帰り~! 良くやった!」


クロが肩に逃げる。

私は両手を広げてコハクを迎える。

そこに、少し躊躇いながらも、コハクが飛び込んできた。

ついでに抱っこ…。はちょっと重かったかも。でも、今だけ頑張る!


「良くやった! コハク! 凄い!」

「ありがとうございます。ご主人様。ご主人様のおかげです!」

「コハクが凄いからでしょ~。もう、街に戻ったら美味しい物いっぱい食べようね!」

「い、いえ、そんな…」

「遠慮しても、その口に放り込むから覚悟しておけ」

「え、…は、はい」


はにかみながら微笑んでくれた。くそう、可愛いな。


リンリン!


頭の上から抗議の声が。


「リンちゃんもお疲れ! 凄かったね! あのツタで縛っちゃう奴!」


リンリン!


胸を張って偉そうにしてる。

ぶふ、可愛い。


さすがに重いのでちょっと降りてもらって、世のお母さんはよくこんな重い物持って買い物なんぞしてるもんだな。いや、10歳だったらもう抱っこはしないか?しかもコハクは痩せてる方なのに。

私の筋力が足りないだけ?

コハクがクレナイやシロガネに頭を撫でられているのを見ながら、そんなことをにべもなく考えていると、


「あるじ~、おわった~」


どうやらこの辺りにいたトレントを全て片付けてきたハヤテが帰って来た。

そしてお疲れハグ。


ウルズさん?もちろん、悟りを開いたような顔をして固まってましたよ。

いや~、久々風邪ひきました。

久々39度の熱が出て、救急車呼ぼうか迷いました。

なにせ一人暮らしなので、もし意識を失ったら誰も気付いてくれないから。

高熱が4日続いたら新型を疑うかな~と思ってたら、3日目で下がりました。

うん、インフルも陰性って言われたし、ただの風邪かい!

皆様も、健康にはお気を付けて。まあ、今の時期が時期なだけに。

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