97話 テイム
「んー、中々見つからないな。やっぱり2陣が入って来たからか近くじゃ良い狩場が無くなってきたな。昨日からファルコさんやヤヨイさん達1陣の人達が2マス目に移動しようとして森に入ってるのも関係してるのかもしれないけど」
街から近い場所では他のプレイヤーが多く、中々モンスターに巡り会えないので少し奥へと入る事にした。
「この辺りだとちょっとモンスターのレベルが上がるから2陣のプレイヤーはほとんど来ないだろう。2人共ちょっとモンスターのレベルが上がるから気を付けてな?」
「モンスターのレベルが上がるの?うーん、それだとテイム出来るかな?」
2人の話しでは、テイムの成功率は自分のレベル、従魔術のレベル、相手のレベル、相手の残りHP、相手の状態が関係してくるそうだ。特に相手のレベルが自分より高いと成功率がガクッと下がるそうだ。
「そうなのか……。とりあえず試してみてどうしても無理そうなら戻るか。もしかしたら成功するかもしれないし、ここならレベル上げにもなるしな」
「レベル上げになるから良いかな?ミーニャちゃんもそれで良い?」
「私もぉ、それで良いと思いますぅ」
2人からも賛成を貰ったのでこの辺りでモンスターを探す事にした。
それから、何度かモンスターと遭遇するが何故かオオカミとは遭遇出来なかった。
「昨日はあんなに遭遇したのに今日は出てこないな。あれか?物欲センサー的なものでも導入されてんのかな?」
その後もしばらく探し続けると。
「居た!」
ハルトの視線の先には3匹のオオカミが居た。
「2匹は俺とアッサムで引き受けるから1匹は2人で抑えててくれ。俺達が倒し終わったら残りの1匹を動けない様にしてテイムしよう」
「分かった!」
「はい!」
魔法職とはいえ俺も既に2次職になってるからな。オオカミの1匹ぐらい余裕なはず。
「ファイヤーアロー!」
火魔法を放ちながらオオカミに近付いていき、
剣を構える。ハルトが放った火魔法が命中したオオカミは苦しみながらもこちらに向かって来るが向かって来る速度が激減している為、ハルトでも対処は簡単だった。
近付いて来るオオカミに向かってスラッシュを放ち怯んだ所を剣で何度か斬り付けるとオオカミのHPバーは砕け散りオオカミを倒す事が出来た。
「俺も大分つよくなったもんだな。この辺のモンスターならある程度1人でもいけそうだ。アッサムの方はどうだ?」
アッサムの方を見ると、丁度オオカミをツメで仕留めたところだった。
「流石アッサム、余裕だな。残るは1匹か。テイムする為に先ずは動けなくしないとな」
アッサムがオオカミを仕留めたのを確認し、アッサムと共にマーリンとミーニャの所へと向かった。マーリンとミーニャはオオカミ相手に苦戦している様だった。
「アッサム!俺がオオカミの気を引いている間にオオカミの背後に回って背後から押さえつけてくれ!倒さない様に気を付けてくれ!ファイヤーボール!」
ファイヤーボールをわざと当たらない様に放ちオオカミの意識をハルトに向けさせる。
そうすると、オオカミがハルトに向かって走って来たのでハルトは、アッサムがいる方へ蹴り飛ばした。
オオカミが目の前に飛んできたアッサムは一瞬ビクッとしたが直ぐにオオカミの上に乗り取り押さえたのだった。
それを見たハルトもオオカミの口元を押さえにかかった。
「良し、これで動けはしないだろう。マーリン、ミーニャどっちからテイムする?」
「ミーニャちゃん、どっちからいく?」
「私はぁ、後で良いですよぉ。マーリンちゃんお先にどうぞぉー」
「じゃあ私からいくね!えいっ!テイム!……ダメかぁ」
マーリンがテイムを掛けてみるが何の反応も無かった。
「マーリンちゃんガンバですぅ!」
「うん!何回もやってみる!テイム!テイム!テイム!」
諦めずに何度もテイムを掛けていると。オオカミの体が淡く光ったのだった。
「お?これは来たか?」
「……やったー!テイム出来てるー!」
「マーリンちゃんおめでとぉ!」
「へー、コレがテイム出来た時のエフェクトなんだな」
そう呟きながらオオカミの上からハルトとアッサムが退くとオオカミはマーリンの前まで歩いて行き、ちょこんと座って待っていた。
「マーリン、オオカミに名前を付けてあげて」
「そうだね!うーんと、君の名前はガルフ!よろしくねガルフ!」
ガルフと名付けられたオオカミは嬉しそうに尻尾を振りながらガウッとひと鳴きした後に光となって消えてしまった。
「なるほど、パーティ人数がいっぱいだから牧場に送られたって訳か」
「多分そうだと思う!次はミーニャちゃんの番だね!」
「マーリンちゃんにぃ続ける様に頑張りますぅー」
その後、先程と同じ様にオオカミを見つけ動けない様に押さえつけミーニャがテイムを掛けているのだが。
「テイム、テイム、テイム。むぅー、ダメですねぇ」
「ミーニャちゃん頑張れ!」
「はいですぅ、マーリンちゃんも頑張ったので私も頑張りますぅ。テイム、テイム、テイム」
その後も何度もテイムを掛けるが成功せずにいた。
「テイム。あっ、MPがぁ無くなってしまいましたぁ……」
MPが無くなってしょんぼりしてしまうミーニャ。
「ミーニャちゃんこれ使いな」
ハルトがミーニャにMポーションを投げ渡す。
「これは、良いんですかぁ?」
「ああ、使って良いよ」
「ありがとうございますぅ」
お礼を言ってMポーションを飲むミーニャだったが不味かったのか顔を顰めてしまった。
「……お兄、何飲ましたの?」
「MPが回復するMポーションだよ。まだ作れないから不味いのしかないんだ」
「……美味しいのが出来るまで出来るだけ飲まないようにしよ」
「MPが回復しましたぁ!では行きまぁす!テイム、テイム、テイム」
Mポーションを飲んだ数回後のテイムでミーニャも見事オオカミをテイムする事に成功したのだった。




