95話 従魔牧場
ログインしてからハルトは直ぐにクルストの街へと飛び、様々な格好のプレイヤーを観察しながら広場である人物を待っていた。
「こうして見てると髪の色を変えてる人って案外少ないんだなぁ。これじゃあ髪の特徴聞いただけで俺って直ぐに分かるのも当然か」
昨日ファルコさんに俺の髪の色を聞いていて分かったと聞いたので、今日は他のプレイヤーの髪の色を中心に見ていたのだ。
「それでも髪の色を変えてる人も居なくは無いな。青髪、赤髪、黄巻髪って何か早口言葉みたいになったな。他にも銀髪とかもいるし。茶髪は結構居るな」
道行くプレイヤーを観察していると。
「お兄ー、お待たせー」
「お待たせぇしましたー」
ハルトに声を掛けて来たのはマーリンとミーニャの2人だった。
「いや、俺も今来た所だよ」
「ふふっ、何だかぁ恋人みたいな会話ですねぇ」
「お兄にそんな人居ない居ない」
ぐっ、事実だから反論出来ぬ。べ、別に出来ない訳じゃないし!今はゲームがしたいから作ってないだけだし!
「ゴホン、それで2人共もう行けるのか?従魔を連れていない様だけど?」
そう、合流した2人は従魔を連れていなかったのだ。
「これからお迎えに行くとこだよ」
「少しだけぇ、お付き合い下さいー」
お迎え?そう思い聞いてみると、テイマーはギルドの近くにある従魔預かり所に従魔を預けているそうだ。そこで連れていく従魔を変更したりするそうだ。
ログアウトする時はなるべく預かり所に預けてからした方が良いらしい。連れている状態でもログアウトは出来るが、そうすると従魔はその場で透明になりスリープ状態になるらしい。そうなると放置状態になるのでステータスには無いが好感度が下がっていってしまう様だ。
2人と一緒にギルドの北、クルストの北西にやって来た。
「ここが従魔を預かってくれる従魔牧場だよ!」
2人についてきて到着したのは1階建ての建物だった。そしてその後ろには広い牧場があり、そこにはウサギやネコ、キツネ、コボルト等の従魔がのんびりしていた。
「おおー!正にモフモフ天国だな!」
「そうですねぇ。1日中ここに居る人も居るらしいですよぉ」
「あー、やっぱりそんな人も居るのか」
「その人達にクランに自分達のクランに入らないかって誘われてるんだけどねぇ、どうせ入るんならもうちょっと色んなクラン見てから決めたいから保留にさせて貰ってるんだ」
「へー、という事は2人共まだクランに入ってないのか。あ、そうだ!明日の午後からテイマーの交流会に誘われてるんだけど2人も来ないか?」
「テイマーの交流会ですかぁ?」
「お兄サモナーなのに?」
「最初はテイマーに間違われて声を掛けられたんだよ。それからサモナーも同じモンスターを仲間にする職業だからって事で交流会に誘われたんだ。どうする?2人はテイマーだし、多分飛び込みもOKだと思うぞ?」
「うーん、ミーニャちゃんどうする?」
「私はー、行っても良いと思うよー?」
「じゃあ行こっか!お兄!明日はよろしく!」
「よろしくお願いしますー」
「じゃあ、2人も参加って事でメールを送っておくよ」
早速アイリーンさんに2人追加で参加させて貰っても良いかというメールを送っておいた。するとアイリーンさんもゲーム内にいたのか直ぐに返事が帰ってきた。
「早っ!もう返事きた。大歓迎よ!だって」
「分かった!」
参加の返事を伝えた後、受付のある建物へと入って行く。
建物の中はこじんまりとしていて受付が2つと牧場へ続くであろうドアがあるだけだ。その受付へとマーリンとミーニャがいき、受付のお姉さんと話している。この時間はあまり人が居ないのか俺達の他は2、3人のプレイヤーが居るだけだった。
「お兄ー、こっちこっち」
牧場へ続くドアの前でマーリンが手招きをしてハルトを呼んでいる。
「あいよー」
マーリンとミーニャに続いて牧場内へ入ると結構な数の従魔が居た。しかし、まだまだゲーム序盤なせいか種類の方はまだそこまで多くは無いようだった。
そして、従魔にヨダレを垂らして頬ずりしてる人が居る気がするけど見ちゃダメなやつっぽいから見なかった事にしよう。
「ニャーコーいい子にしてたかい」
「ラッキーおいでぇー」
2人がそれぞれの従魔に呼びかけ撫でている。
「2人のレベルは幾つになったんだ?」
「昨日目標だった5を超えて6になったよ。だから今日はお兄に手伝ってもらおうと思ったんだ」
そう、昨日の真梨のお願いとは2人がテイムするのを手伝うという事だった。
レベルが上がり仲間に出来る数は増えたが中々テイムが上手くいかないという事で俺に手伝って欲しいという事らしい。
「なるほどなー。何か仲間にしたいモンスターは居るのか?レベルが6になったなら2匹テイム出来る筈だけど」
「まずはー、私たち2人ともぉオオカミをテイムしたいなぁって思ってますぅー」
「強そうだしカッコイイからね!」
「まぁ、遊撃やアタッカーとして優秀そうだしな。じゃあ先ずは北の森から行こうか」
こうして2人と一緒に北門まで移動を開始したのだった。




