89話 エラルシアの里
『杖のレベルが上がりました』
『火魔法のレベルが上がりました』
『ファイヤーウォールを取得しました』
『アタックアップを取得しました』
……
…………
少な!ボス倒してレベル上がるどころかスキルレベルが2つしか上がらないなんて……。スキルを覚えたのは良かったけどさ。まぁ、今回のボスは少し弱かったのかな?序盤は苦戦するかもって思ったけどなんかアッサリ終わったし。そういえば鑑定でレベルも見えてたしな。
「なんか今回のボスは弱かったですね。スキルレベルも全然上がりませんでしたよ」
俺がそう言うと皆から可哀想な子みたいな視線が飛んできた。
「ハルト君、確かに比較的早く討伐出来たが弱かったとは思わんが……それにレベルもあがったぞ?」
「私もレベル上がったわよ?ハルト君のレベルが高くて上がらなかっただけだと思うわよ?」
あれ?レベルが上がらなかったのは俺だけだったのか?
「んー、これがハルト君クオリティなのか……。ボス戦が楽に感じるとは……」
十兵衛さんが何か呟いてるけど何?その俺クオリティって?
「ちなみにハルト君は今何処で狩りしてるのかしら?」
「今ですか?昨日4マス目に入った所で辞めたんで狩り自体は3マス目になるんですかね?あ!そうだ!ヤヨイさん達に4マス目の事を聞こうと思ってたんですよ」
「ハルト君……。残念ながらβ版では3マス目までしか実装されてなかったのよ。だから私達は4マス目の事は分からないわ。むしろ私達が教えて欲しいぐらいよ?」
なんと!β版では3マス目までしか無かったのか!これから先は手探りで行くしかないのか……。うーん。
「なるほど、そこまで進んでいるのならボスとはいえ1マス目の敵なら楽に感じてもおかしくはないのか」
そう言ってファルコさんは妙に納得した顔で頷いていた。
「ま、まぁ、俺の事は置いておいて回復済ませたら先に進みましょうか!」
先程の戦闘でジャイアントフォレストオウルを上空へは逃さなかったが、その場では暴れた為ダメージは食らってしまっていたのだ。
全員がポーションでHPを回復させた所で倒したジャイアントフォレストオウルをファルコが解体すると。森梟の尾羽が3つと魔石を獲得出来た。
「レアドロップの森梟の瞳は出なかったか。ボスのドロップ品も解散する時に分配するって事で良いかな?」
「良いわよ」
「それで良いです」
「では、そろそろ進もうか。ここから先は2マス目だ。気を引き締めて行こう」
1マス目でも他のフィールドより視界の悪さとモンスターの強さで難易度が1番高いとされていたが、2マス目では更に出現するモンスターの厄介さが上がっているらしい。その原因とされているのが……。
イリュージョンバタフライ Lv8
状態 アクティブ
そう、このイリュージョンバタフライのせいだと言われているらしい。見た目は綺麗な大きめの蝶々だが、何とこの蝶々はプレイヤーに混乱の状態異常を引き起こしてくるのだ。そのせいで何も知らなかったβ版では全滅するパーティが続出したそうだ。
「早速出たか、ハルト君頼んだ」
十兵衛さんに頼まれたので俺は火魔法でイリュージョンバタフライを攻撃した。
「ファイヤーアロー!」
混乱する原因はイリュージョンバタフライの鱗粉なんだそうだ。なので火魔法で鱗粉ごと燃やすと良いらしい。火魔法がないなら出来るだけ速攻で片付けるしかないそうだ。幸いイリュージョンバタフライのHPと防御力は低いので混乱させてくる以外は問題無いそうだ。そして、混乱状態になってしまったら仲間に殴ってもらえば混乱は解けるそうだ。ただし、混乱状態のプレイヤーの攻撃はダメージを受けるらしい。なので強いプレイヤーが混乱状態になると戦況が一気に悪くなるらしい。
ともあれ、イリュージョンバタフライを瞬殺したハルト達は倒したイリュージョンバタフライを解体して、先に進む事にした。
「あ、そうだ。折角2マス目に来たんで採取とか伐採とかしても良いですか?」
「そうね、ボスも早く倒せたし良いんじゃないかしら?」
「俺達も構わんぞ?回り回って俺達にもメリットがあるからな」
その後モンスターに注意しながら採取と伐採をしていると。
「ん?これは……」
【素材アイテム】
魔力草 品質C レア度2
深い森で採取出来る魔力を蓄積している草。薬草の1種。
「お!魔力草じゃねぇか!Mポーションの材料になるから良かったじゃねぇか!俺も取ってかねぇとマイにうるさく言われそうだからいくつか取らねぇとな」
「Mポーションの材料なんですね!俺は魔法を多く使うから美味しいMポーションを早く作りたいんですよね」
「だろうな。うちも魔法職の連中に急かされてんだよ」
その後も採取と伐採を頑張りながらも襲ってくるモンスターを蹴散らしつつ進み、目的の場所へと辿り着いた。
「止まれ!何奴だ!」
村?の門みたいな所で弓矢を向けられて止められたけど……。でもあれってそうだよな?
門の所で弓矢を向けていたのは長身でスラッとした体型をして耳が長いエルフと言われる種族だった。
おおー!まさかのエルフだ!初めて見た!なんか感動だなー!
「私達は冒険者です。これがギルドカードです」
どうやらここに入るにはギルドカードを提示しないといけないみたいだな。
全員がギルドカードを提示した所で警戒を解いてくれた。
「ここはエルフが住むエラルシアの里だ。くれぐれも騒ぎは起こさないようにな」
門から中に入るとエラルシアの里は自然溢れる場所だった。お店とみられる建物は地面に建てられているが、住居とみられる建物は木の上に建てられていた。
「うわー!綺麗な場所ですね!」
「うふふ、そうね。初めて見る人は感動する人が多いみたいね」
里に入った俺達は真っ先にワープポイントの登録の為に中央広場へと向かったのだった。




