86話 パーティ決め
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次の日の午前。昨日は洞窟でログアウトしたのでログインしてからクルストへと飛んできた。
「今日は小次郎さんに言われた北の森を攻略する予定なんだけど……。しまったな、何処に行けば良いのか聞くの忘れてたな……」
昨日は参加する事だけを伝えて何処で集合とかを聞くのを忘れていたのだ。小次郎もハルトが参加すると聞いて周りに連絡しなければという思いが先走りハルトに時間と場所を言うのを忘れていたのだ。
「とりあえず屋台の方へ行けば良いのかな?」
とりあえず屋台のある北通りへと向かい屋台までやって来ると、そこにはヤヨイ、ロバート、小次郎が居た。
「おお!坊主!良かった、今からメールでも入れようかと思ってたとこだ」
「昨日場所と時間を聞き忘れたのでこちらに来させて貰いました」
「ごめんね、ハルト君。折角参加してくれるって言ってくれたのに。小次郎にはちゃんと注意をしといたからね」
「い、いや、あれは注意というレベルでは……」
そこまで言った時に、ヤヨイから睨まれて次の言葉が出せなくなる小次郎であった。
「ま、まぁ、ハルトが来てくれて助かるぜ。実はもうすぐ1回目の集合時間なんだよ」
ロバートさんの説明によると個々にイン出来る時間が違うそうなので何回かに分けて集合して合同攻略をしていくらしい。
「ハルト君には1回目のパーティの1つとして行って貰って良いかしら?」
「俺はそれで構わないですよ」
「サンキューな!それじゃあそろそろ移動しようか」
そう言って4人で北門へと移動を開始した。
北門へ行くと既に何人かのプレイヤーが待っていた。その中に明らかにそっち系と思われる40代ぐらいで髭面でオールバックの強面のプレイヤーが居た。皮鎧を着て居るが、これでスーツや和服を着ていたら絶対目を逸らして遠ざかるタイプの人に見えた。
しかも、そのプレイヤーはハルトの事を見つけると、ハルトの方へ歩いて来たのだ。
「君が……ハルト君かね?」
「そ、そうですけど。何で俺がハルトだと?」
「ヤヨイ君達から今日君が来ると聞いて君の特徴を尋ねたのだよ。黄色い髪に赤と青のメッシュが入ってると聞いてて、君だと思ったんだよ」
「な、なるほど。確かに俺がハルトですが……」
何か個性を出そうとしたのが失敗だったか!こんな人に目をつけられるなんて!……あれ?でもヤヨイさん達に聞いたって言ってたよな?
「な、何か御用でしょうか……」
心臓バクバクで相手がどう動くのかを見つめていると。相手の人が急に頭を下げてきた。
「先日は俺のクランの者が失礼をした。」
えっ?えっ?と俺が戸惑っているとロバートさんが説明を始めてくれた。
「この前のイベントの時にハルトと運営に突っかかってペナルティ受けた奴らが居ただろ?」
ああ、何か攻略組だぞって連呼してた人達ね。
「その人はそいつらのクランのクラマスなんだよ」
「すまぬ、自己紹介がまだだったな。“極隼攻略組”のクランマスターをやっているファルコだ」
「この前も言ったと思うがこの人は泣く子も逃げ出すような厳つい顔してるけど優しい人だから誤解しないであげてくれな」
「余計な一言も入ってはいるが一応感謝しておこう」
「ひっ!」
ファルコさんに横目で睨まれたロバートさんがビビっていた。
「クラマス。そんな顔したらみんなが引いてしまいますよ」
「そうは言うがな十兵衛」
十兵衛と言われた人物の方を見ると、20代後半ぐらいで身長は170ぐらい、黒髪でこちらも皮鎧を着た男性だった。
「初めましてだな。俺は“極隼攻略組”のサブマスターの十兵衛だ。先日は済まなかったな。奴らが復帰したらしかるべき対応をとると約束しよう」
「あ、はい。俺はもう気にしてないので俺はそれで構いませんが……。別に命を取ったりまではする必要は……」
「……一応言っておくが俺はカタギだからな?まぁ、良く誤解はされるが……。ゴホンッ、とにかく任せてくれる事には恩に着る。お詫びと言っては何だが今回の攻略では俺と十兵衛が君に同行しよう」
「おおー!それは良いんじゃねぇか?ハルトこの2人は攻略組の中でも指折りの実力者だ。同行して貰って損はないぞ」
「そうなんですか?それじゃあお願いします」
「任せておいてくれ。まぁ、クイーンを倒す程の実力のあるハルト君には俺達の方が役不足かもしれないがな」
「2人共ハルト君に同行する事はクランの人達は納得してくれたの?」
ヤヨイさんが心配顔でそう尋ねる。
「ああ、クランメンバーにはちゃんと説明済みだ。彼と力を合わせれば今日中に2マス目には到達するだろうから今日1日という条件だがな」
「そう、それなら大丈夫ね。ならハルト君には召魔を1体にして貰って私達のクランからも2人出してバランスを取りましょうか。勿論1人は私よ」
そのヤヨイさんの宣言にギョッとしたのはハルトでは無くフリーワークスの面々だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺もハルトと一緒に組みたいぜ!」
「ワシもじゃ!」
「あら?ファルコさんの所はクラマスとサブマスなのよ?だったらうちからはクラマスの私が組むのがバランスが良いと思わない?後1人は……そうねハルト君と面識があるロバートか小次郎のどっちかかしらね」
その言葉を聞いて2人がジャンケンでどっちがハルトと組むのかを決めた結果、ロバートが見事その立場を勝ち取ったのだった。




