59話 実は……でした
その後もアリの巣を見つけては殲滅を繰り返し、3つ程アリの巣を攻略していた。
プリンとアックのレベルも2つ上がり6になっていた。
3つ攻略して2つしか上がらなかったか。まあ全部ボーナス1のアリの巣だったし経験値的には美味しくないか。でもこれでアックの敏捷が7になったし、数値的には他の皆と同じになったし他のステータスも伸ばしていこうかな。
もう大分暗くなって来たし、夕飯の時間まであんまりないし少し早いけど一旦ログアウトするか。
街に近い場所で狩りをしていた事もあり、比較的早く街へと帰還出来た。
皆を送還してっと。うーん、規模が小さい所ばっかりだったから結構MPが残ってるな。
そうだ、残ってるMPを全部水魔法のレベル上げに使ってしまうか。そうでもしないと攻撃魔法がない水魔法のレベルが上がらないしな。
「ウォーター」
ウォーターを使うと手から水が出てきた。
でもウォーターなんて何に使うんだ?魔法としてあるんだから使い道は必ずある筈なんだけど……。水を使う事……。もしかして錬金術にも使えるのか?今までは普通に用意されてた水瓶の水を使ってたけど魔法で用意した方が品質が良いポーションが出来るとか?試してみる価値はあるな。
一旦ログアウトしてインしたら材料買って錬金術をやってみるか。
そうと決めたら北通りに移動し宿屋へ入って行く。
「いらっしゃいませ!こちらをご利用ですか?」
説明がいるかどうかは初回だけみたいだな。今回はそんなにMPとか減ってないし安い部屋で良いか。
「睡眠の部屋でお願いします」
「睡眠ですね。100Gになりますがよろしいですか?」
安いな。でもこれくらいじゃなきゃ皆泊まれないかな?
「はい、大丈夫です」
そう言ってカウンターに置いてあるトレイにお金を置く。
「では、こちらがお部屋の鍵になります」
鍵を受け取り鍵に記された番号の部屋へと入って行く。
快眠の部屋は豪華な感じだったけどこっちはベッドがあるだけのシンプルな部屋なんだな。まぁ、ログアウトするだけなんだから部屋なんかどうでもいい気がするけど。
運営が聞いたら怒りそうな事を考えながらハルトはベッドに横になりログアウトして行った。
「ふぅ、ゲームから戻った時が1番疲れてる気がするな」
ベッドから降り体を伸ばすようにストレッチをしていると。
「お兄〜もうすぐご飯だって」
「だから真梨。人の部屋に入る時はノックをしろって言ってるだろ?」
「別にいーじゃん。細かい事気にし過ぎだよ。それよりまたゲームしてたの?テスト期間中なのに余裕じゃん」
「………お、おう」
痛いとこ突いてくるなぁ。でも今の所いつも通り出来てる筈だから大丈夫。………多分。………だといいなぁ。
「ほ、ほら。ご飯で呼びに来たんだろ?行くぞ」
真梨を連れてご飯を食べにリビングへと向かう。
そして、食事を終えて部屋へと戻ってきた冬馬のテンションはダダ下がりだった。
「くそぉ、真梨のやつずっとゲームしてたのバラシやがった。お陰で母さんに成績下がってたら夏休みのゲーム禁止にされちまうよ。明日の昼からはちゃんと勉強しろって言われたし」
「自業自得じゃん」
「やかましい。ていうか何で真梨も俺の部屋に居るんだ?」
「そんなのGPOの話を聞くために決まってんじゃん。ワタシももうすぐGPO出来る様になるんだし」
そういやこのイベントが終わる位に第2陣が入って来るんだったか。確か夏休みに合わせたらしいな。
「真梨はちゃんとテスト勉強してるのか?夏休みにゲーム禁止になっても知らないぞ?」
「お兄と一緒にしないでよ。ワタシはちゃんと毎日勉強してるもん!で、今イベント中なんでしょ?」
「ああ、そのイベントの貴重な時間を真梨によって削られたけどな」
「だからそれは自業自得じゃん」
グハッ!心のHPが……。誰かヒールをかけてくれ……。パタッ。
「それでイベントはどんな感じなの?面白い?」
「まだ初日しかやってないけどまあまあ楽しいよ。アリの巣に潜ってアリを倒しまくるってワンパターンな気もするけど。敵も強いのが出てくるし気を抜けない感じだな」
「へー、1回目のイベントだから気合い入ってんのかって思ってたけどそうでも無いの?」
「さぁ?まだイベント報酬がどんなのかが終わってからじゃ無いと分からないから何とも言えないな」
「終わってからじゃ無いと分からないの?」
「そうみたいだな」
「サプライズとかありそうだね!」
「だから休みの日のうちにイベントポイントを稼いどきたかったんだが……」
「だからそれは自業自得じゃん。毎日ちゃんと勉強してたらお母さんも何も言わなかったと思うよ?」
「……ちゃんと課題はやってた」
「学校から出される課題をやるだけじゃ勉強って言わないと思うよ?」
妹の正論にぐぅの音も出ないぜ……。今日はもうログイン出来そうに無いな。流石に今日ログインするのは印象が悪いからな。
「そ、そういえば真梨はどの職業でプレイするのかは決めたのか?」
「まだ決めてないなぁ。友達と一緒にやるから相談して決めようと思って。友達はゲーム好きだから色々情報集めてるんだよ。ギリギリまで情報集めて慎重に決めたいんだって」
「慎重な子なんだな」
俺と違って。
内心自虐しながら妹の質問に答えていくと真梨は満足して自分の部屋へと帰って行った。
「ふぅ、やっと帰ったか。……少し勉強しとくか」
その後、今日はログインすること無くその日を終えたのだった。




