55話 装備を一新
「アタシの名前はヴェルーナって言うんだ。皆からはヴェル婆って言われてるからあんたもそう呼ぶさね」
「ベル婆ですか?」
「“ベ” じゃなくて “ヴェ” だよ。そこんとこ間違えるんじゃないよ?」
なんか拘りがあるっぽいな。
「分かりました。ヴェル婆ですね。俺もヴェル婆と呼ばせて頂きますね。俺の名前はハルトと申します」
「ハルトだね。今はどんな子を召喚出来るんだい?」
「今はモグラ二等兵にゴブリン、ブラックデーモンとスケルトンにコウモリですね」
「変わった子も居るが、まだまだヒヨっ子達さね。鎧とか装備出来ない子達にもちゃんと装備させてるかい?」
「あー、アッサム、あっモグラ二等兵にバンダナ装備させてるぐらいですね…」
「はぁ?あんたそんなんでよくサモナー名乗れるね?召魔達にちゃんと装備させるのはサモナーの義務さね義務」
「す、すいません」
「ほら、これにアンタの召魔の種族と装備を書きな。後予算もね。アタシが軽く見繕ってやるさね」
そう言って紙とペンを渡され、それに召魔の種族とその召魔が装備している装備と予算を書き出し、それをヴェル婆に見せる。
「はぁ、マシなのはゴブリン位さね。他は全然ダメダメさね。まぁこれだけ予算があれば一通り揃えられるさね。なんでこれだけ予算があるのに今まで装備を買わなかったんだい?」
「えーっと、その、冒険が楽しかったのでつい…」
バツが悪そうに答える。
「まぁ、アンタは若いんだからその気持ちは分かるさね。分かるけど装備をととのえる事でその冒険ももっと楽になるって事を覚えておくさね。これは年寄りからの助言さね」
「はい。肝に銘じておきます」
「それじゃあここに装備を持って来てやるからちょっと待っときな」
そう言ってメモを持ってヴェルーナは奥に引っ込んで行った。
あれ?棚にあるのから選ぶんじゃないのか?
少ししてヴェルーナが奥から箱を幾つか運んできてカウンターの上に置き箱を開けて中から装備を取り出し説明をしてくれた。
【装備品・胴体】
名称 狼皮の鎧 品質C レア度1
狼の毛皮で作られた鎧。これを着れば貴方も初心者脱却!毛は全て除去されている。
物理防御+5 魔法防御+2
【装備品・籠手】
名称 狼皮の籠手 品質C レア度1
狼の毛皮で作られた籠手。これを付ければ貴方も初心者脱却!毛は全て除去されている。
物理防御+3
【装備品・足】
名称 狼皮のブーツ 品質C レア度1
狼の毛皮で作られたブーツ。これを履けば貴方も初心者脱却!毛は全て除去されている。
物理防御+3
「今のアンタじゃあこの辺りが妥当だろうかね。これをアンタとゴブリンとスケルトンが装備しときな」
見せて貰ったのは今装備している兎皮シリーズの1つ上のランクだと思われる装備だった。
「後アンタはこれも付けときな」
【装備品・装飾】
名称 狼皮のベルト 品質C レア度1
狼の毛皮で作られたベルト。毛は全て除去されている。左右に武器を挿す所が作られている。
物理防御+1
「アンタ剣と杖の2つ使うくせにベルトを装備して無かったからね。今までどんな戦闘してたんだか…」
「う、な、何とかズボンに差し込んでました」
「それじゃあ動き辛いだろうに。これがあれば大分マシになる筈さね」
試しに着けさせて貰い剣と杖を差して動いてみたり抜き差しの確認したりしてみた。
「おお、今までと全然違いますね」
「そりゃ何もない時と比べたら大分違うさね」
そう言って笑われてしまった。これからは良い素材が手に入ったらこまめに変えよう。ヤヨイさん達にも優先してくれるって言ってくれたし。
「それでモグラちゃんにはコレさね」
【装備品・武器】
名称 狼の鋭爪 品質C レア度1
狼の爪を集めて鍛えられた鋭爪。
物理攻撃力+13
【装備品・胴体】
名称 狼皮の毛皮マント 品質C レア度1
狼の毛皮で作られたマント。これを着れば貴方も初心者脱却!
物理防御+3 魔法防御+3
アッサムの爪の上に爪、毛の上に毛皮……。アッサムどんまい。
「まぁ、見ため暑苦しいけどマントだから大丈夫さね。それにこの爪は手に嵌めるタイプのだから自分の爪より威力が出せるさね。そしてコウモリちゃんには残念だけど今の街の流通じゃあ装備出来そうなのが無いねぇ。冒険者ギルドに使える素材が流れれば仕入れられるんだけどねぇ」
ほう、冒険者ギルドに素材を売れば周りの店の品揃えにも影響が出ると。なるほど、他の人とコミュニケーションをとるのが苦手な人や生産ギルドと揉めた人達への救済措置って感じかな?
「それとこのブラックデーモンの装備を見るとこりゃ普通のブラックデーモンじゃ無いね?」
「ええ、二つ名が付いたブラックデーモンです」
「そうかい、なら下手な装備は着けない方がいいね。もっとレベルの高い装備じゃないと動きを阻害しかねないからね」
前にも店の人に同じ事を言われたな。カルマの装備は強い装備が買えるか作れるかしないとダメだな。その為にはガンガン進んで行かないと。
「まぁ、今用意出来る装備はこんなとこさね。これで値段はこんなもんさね」
値段の書かれた紙を見せて貰ったがハルトが書いた予算より全然少なかったので余裕で支払えた。
「まいどあり。アタシはここで時々店を開けてるから偶には顔を出すさね。その時はアンタの召魔を見せとくれ」
「ありがとうございました。時々何ですか?」
「老後の資金は十分あるからね。趣味でやってるだけだからそんなに開けないのさ。サモナーも全然見かけないしね。だからアンタが来るのは歓迎するさね」
どうやら俺がサモナーだから親切にしてくれたみたいだな。なんかフラグでも踏んだんだろうか?街中にもこういうイベントみたいなのがあるんだな。
「分かりました。今度来る時は召魔達も連れて来ますね」
「ああ、そうしてくれさね。アンタなら近いうちに召喚が少しは楽になるさね」
「………?それはどういう意味ですか?」
「それは自分で確かめる事さ 」
「……そうですね。それではヴェル婆また」
挨拶をして店を後にした。




