31話 それぞれの武器
「流石ですね。特にカナタさんのその武器は凄かったですね」
ハルトが苦笑い気味に言うとカナタは嬉しそうに。
「でしょでしょ!これねβ版からの持ち越しの武器なんだよ!これがあればこの辺のモンスターは殆ど吹っ飛ばせるから気持ち良いんだよ!」
「でもその代わりに振り回すのに結構筋力が高くないといけないから鍛冶師に必要な器用値が犠牲になってるのよね」
そうカナタがジト目でヤヨイに見られると「うっ…」と言って少しバツが悪そうにしていた。
「まあ最初はそこまで高い器用値を求められるもんは無いから多少はいいんじゃねぇか?
今の所そこまで不備がある訳でもねぇだろ?」
「流石小次郎分かってるー!」
「でも小次郎は器用値が上がる槌を選んだんでしょ?」
「まあカナタがその大槌を選びそうなのは何となく分かっとったからな。だからワシはバランスをとる意味でこの槌にしただけだ」
そう言って小次郎はカナタの槌の半分位のサイズの槌を胸の前に掲げてみせた。
「小次郎はその辺を考えてくれるからホントにありがたいわね。カナタにももうちょっと全体を見てくれるとありがたいんだけど」
とため息をつく。
「誰がどの武器を選ぶかは個人の自由にするとしたんだからそこは仕方ないだろう。それに戦闘面ではカナタはかなり役立っておるのは事実だろ?」
小次郎の擁護に「うんうん」とカナタは何度も頷いていた。
それを見たヤヨイは肩を落としながら。
「まあ良いも悪いもどっちもどっちって事ね」
「話はその辺にして先に進もうぜ。ハルトも待たしてる事だし」
「あ、ごめんねハルト君。待たせちゃって先に進みましょうか」
ヤヨイの言葉と共に再びフィールドボスを目指して進み始めるのだった。
歩きながらハルトは気になった事を皆に聞いて見る事にしたのだ。
「そういえば皆さんβ版からなんですよね?カナタさんのはさっきちゃんと見れたんですけど他の方はどんな武器を選んだんですか?」
「ワシのはさっきヤヨイが言ったように器用値が上がるこの槌だな。攻撃力はそこそこだがステータスを上げてくれる序盤では貴重な武器だな」
そう言って小次郎はハルトに見えやすいように槌を見せてくれたのだった。
「これは石?じゃないですよね。なんで出来てるんですか?」
「これはな、タスクボアというモンスターの骨から作ってあるんだ」
「タスクボア、イノシシですか?」
「そうだ。牙は剣とか槍等の刃部分になるし、骨は打撃系の武器の素材になる。しかも肉も中々美味いから人気があるモンスターだな。だが中々出会えないレアモンスターだ」
「どこのエリアで出るんですか?」
「β版と変わってなけりゃ北の3マス目だな」
「3マス目じゃあまだまだ行けそうにないですね」
「…お前さんなら割かしすぐ行けそうな気もするがな」
ハルトが苦笑いしながら言うと、小次郎もカルマを見ながら苦笑いしていた。
「次は私の番ね。私は剣と盾で戦う王道スタイルをとってるから剣を選んだわ。鋼で出来てて攻撃力は結構高いけど特殊な効果とかはないわね」
そう言って見せてくれたのはハルトが使っているソードと似てはいるが少し大きく刃の部分の輝きもヤヨイの剣の方が上だった。
「これも3マス目の素材で作ったやつですか?」
「そうね。東の3マス目で採掘すると偶に出る鋼鉄塊っていうアイテムを加工したものね」
「これもレアなんですね」
「次は私の番だね!見てよ!ジャジャーン!」
そう言いながらヤヨイとハルトの間に割り込みながら自分の大槌を掲げて見せてくる。
「これはね!トレントの丸太を削りだして、重量を増す為に先端に鉄を埋め込んだ一品だよ!」
どうだ!と言わんばかりに胸を貼りながら自慢げにハルト見せつけている。
「それで見た目は木槌なのにあんなに吹っ飛んでたんですね…。そのトレントも3マス目に?」
「タスクボアと同じ北の3マス目だね。でもこっちはレアモンスターじゃなくて普通に居るけどね。でね!このグリップのとこがね…」
「はいはい、自慢はその辺にな。最後は俺の武器を見せるぜ」
ロバートが「ちょっとー!」と抗議しているカナタを押しのけ自分の武器をハルトに見せるのだった。
「ロバートさんは槍ですか。これも鋼ですか?」
そう聞くとロバートは頬を掻きながら。
「いや、それは何の変哲もないただの鉄の槍だよ。今から行くとこで普通に取れる鉄鉱石で普通に作れる槍さ」
「え?どうしてそんな槍を選んだんですか?」
「サモナーやってた時は杖を使ってたんだが、生産職になるのに杖はあんまり意味がないからな。それに俺はメインで使ってる杖以外はほとんど売っちまってたからインベントリに録な武器が無くてな。仕方なくってやつだ」
「あー、なるほど。β版と職業変えた事の影響なんですね」
「そういう事だな。ん?」
ロバートが歩みを止めて前の方を見ている。その方向をハルトも見るとまたコボルト2匹が歩いていた。
「次はハルト君の番ね。昨日の打ち合わせ通りにお願いね」
「分かりました。行くぞ!カルマ!」
そう言ってハルトはカルマと共にコボルトへ向かって行った。




