30話 合同攻略
「さあ、出発しましょ!」
翌日、ヤヨイの威勢の良い声が響く中、ハルトはヤヨイ達〝フリーワークス〟の面々とパーティを組んで東門の前に居た。
何故ハルトがヤヨイ達と一緒に居るのかというと、それはヤヨイの提案によるものだった。
ヤヨイの提案は一緒に東のフィールドボスを
討伐しようというものだった。メンバーはヤヨイ側は自分とクランメンバーの4人でハルト側はハルトとカルマでお願いしますとの事、道中のモンスター素材はハルト側とヤヨイ側で2つに分ける、ボスを討伐した際の素材はハルトが貰える、というものだった。
そして攻略するのが東の荒野になった理由は…
「漸く金属製の装備を作れるぞ!!作れる様になったらアレもコレも色々作ってやる!」
そう嬉しそうに言っているのはカナタという女性プレイヤーで鍛冶師らしい。1マス目のエリアで出るのは銅鉱石ぐらいで、今までは魔物素材を使った装備が大半だったという。
このカナタというプレイヤーは魔物素材を使った物よりも金属製の武具を作りたいらしく、早く東の2マス目に行こうとヤヨイ達を急かしていたようだ。
だが、イベントの為の装備の発注が増加していて時間があまり取れない事と、戦力的にもまだ十分ではないという事で先に進むのはイベント後という事にしていたそうだがこのカナタというプレイヤーは何かにつけて「今なら行けるんじゃない?」とか「明日なら私行けるから一緒に行かない!」とか周りに頻繁にアピールしていたらしい。それがヤヨイの耳に入る度にヤヨイの頭を痛ませていたのだ。
なので今回ハルトから、もう西の2マス目に到達していて更に別の2マス目にも行くと言うのを聞き何とか情報と引き換えに自分達と一緒に行ってくれないかと交渉したのだった。
それを聞いたハルトは色々教えて貰っているしヤヨイが本気で困っていると感じたのですぐ了承した結果、明日向かうと言う事に決まったのだ。
「カナタは少し落ち着かんか。そこの坊主も引いとるぞい」
そう言ったのは見た目は40過ぎぐらいでザ・ガテン系という感じの男の人だった。頭にはバンダナを巻いて皮鎧を着ていても筋肉ムキムキというのがわかる程の体つきだ。
「いいじゃん!小次郎だって鍛冶師なんだから気持ち分かるでしょ!」
「いや、ワシは魔物素材のが弄ってて楽しいからその気持ちはわからんな。今回ワシが行く事になったのだって、今後の為にもう1人鍛冶師が行った方がいいからって事で一緒に行く事になったんだからな」
「はいはい、2人ともその辺にな」
そう言って2人を止めてくれたのはハルトと面識のあるロバートだった。
今回一緒にパーティを組むに当たってハルトの知り合いがヤヨイだけではハルトに気を使わせてしまうのでは?という事でハルトと面識のある面子の中から時間の都合がついたロバートが選ばれたのだった。
「悪いなハルト、騒がしくてよ」
「いや、全然構わないですよ。普段1人なんでむしろ賑やかで楽しそうですし」
「はぁ、もういいかしら?じゃあ改めて出発しましょうか」
ようやく出発出来るか。なんかちょっとヤヨイさんが既に疲れ気味に見えるけど…
やっぱりクラマスともなると気苦労とか多いんだろうなぁ。
出発してから少しして俺の方へ来て話し掛けてきた。
「ハルト道中の事は聞いてるか?」
「確か、道中では出来るだけ魔法を使わない様にするんでしたよね?」
「そうそう。ここのフィールドボスは物理攻撃に強いからな。道中魔法を使い過ぎるとボス戦がしんどくなるんだ。まぁ、そこの召魔が居れば道中魔法無しでも余裕だろうけどな」
そう言ってロバートさんは、カルマを見て苦笑いしていた。
β版でサモナーをやっていたロバートさんからしてもカルマは異常みたいだな。
こんな序盤で当たりを引けたのは物凄くついてるな。
ん?あれはコボルトか。2匹がこっちに気付いたのか近付いて来るな。
「お?ぼちぼちモンスターも出始めたな。最初は肩慣らしに俺達からやらして貰って良いか?」
「俺は全然良いですよ」
ヤヨイさん以外の人達の戦いぶりも見て見たいしね。
「サンキューな!おーい!最初は俺達で片付けるぞ!」
「よっしゃ!私の実力ハルトに見せてあげる!」
そう言って飛び出して行ったのはカナタさんだった。
「おりゃー!!」
カナタさんの気合いの入った掛け声と共に振り回したのは木で出来た1メートル位の槌だったんだけど、はぉ?その攻撃を受けたコボルトがめっちゃ吹っ飛んだんですけど?
どんだけ筋力にステータスを振ってるんだろう?生産職なら器用にもステータス振らなきゃダメだと思うんだけど…
その吹っ飛びっぷりに残った方のコボルトもビックリしてるし。
「こらっ!いつも勝手に飛び出すなって言ってるでしょ!」
そう言いながらヤヨイ達も残ったコボルトに向かい攻撃をし始めた。
「こっちは私達で倒すからあなたが吹っ飛ばした方は責任持ってあなたが倒してね」
「了解!」
勢いの言い返事をしたカナタは先程吹っ飛ばしたコボルトに走って行き、吹っ飛ばされた時のダメージが大きかったのかヨロヨロと立ち上がろうとしているコボルトに向かい思っいっきり槌を振り落とす。
「どっせい!」
槌を思いっきり振り落とされたコボルトは少し地面にめり込んだままそのままHPバーが砕け散ったのだった。
もう一方のコボルトもヤヨイ、ロバート、小次郎によって危なげなく倒されていった。




