3話 初戦闘
ギルドの中に入ったハルトは、銀行の窓口みたいだと思った。それは受け付けが横一列にずらっと並んでいるのを見てそう思ったのだった。それ以外は床は板張りで、カウンターも木材で出来ているので、銀行感は無いのだが。左右の壁際の床にはいくつか魔法陣が描かれていた。入口の横の壁とカウンターの横には依頼ボードがあり、幾つかの依頼が貼ってあった。
カウンターに向かう途中、登録が終わり出口に向かう人の中に、「テイマー?」とか「モグラ?」とヒソヒソ話している声が時折聞こえてくる。
GPOじゃサモナーよりテイマーの方が人気があって、サモナーはあんまり選ばれないのかな?全然サモナーって単語が聞こえてこないんだが‥
ハルトはそう思いながら歩きカウンターに向かった。
「本日はどの様な御用件でしょうか?」
黒いワンピースに白いエプロンを着けたギルド職員の女性にそう尋ねられたが、ハルトはどうすればいいのか分からないので逆に聞いてみる事にした。
「えっと、初めて冒険者ギルドに来たんですがどうすればいいんですか?」
「初めての方は、まず登録が必要なのでこちらの水晶に手を当てて下さい」
ハルトは言われるままに水晶に手を当てる。すると水晶が淡く光った。光が収まると水晶の台座からカードが出てきた。
「これで登録は完了となります。次回の素材の買い取りや依頼の受け付けの際は、こちらのギルドカードをご持参下さい」
そう言われてギルドカードを手に取り見てみるとギルドカードには、ハルトの名前と職業とギルドランク1と書かれていた。
「ギルドランクは基本的には依頼を達成する事でポイントが貰え、一定数に達するとランクが上がります。また素材の買い取りでも、多少ですがポイントは貰えますので、買い取りを多く出して頂くと早くランクが上がりますよ。ギルドランクが上がりますと色々利点が御座いますので、是非ランクを上げてみて下さい」
「ちなみにランクを上げると、どんな良い事があるんですか?」
「ランクが上がりますと、ギルドに預けられる金額やアイテムが増えます。また購入制限が掛かっている、アイテムの上限が上がります。更にギルドランクが3になりますとカードに上階への許可が記されます。上階には職業の系統別の窓口が御座いまして、そこでは特殊な施設やサービスが受けられます」
「わかりました。ありがとうございます。これから狩に行くんですけど初心者にオススメな場所はありますか?」
「ハルト様はギルドに登録したばかりですので、西門から出た平原がオススメです。魔物の強さは、西の平原、南の草原、東の荒野、北の森の順に難易度が高くなっていくのでお気を付け下さい」
「ありがとうございました」
そう言ってハルトは、ギルドを出たのだった。
これで冒険者ギルドにも登録したし、西門から外に出て狩に行ってみるか
ギルドを出て更に西に向かって、ハルトは歩き始めた。
西門に辿り着き門を出てると、視界の上にエリアマップ1平原と出た。平原に出て辺りを見回すが魔物の姿は見えない。
「さすがに街を出てすぐの場所に居るわけないか。もっと西に移動してみるか」
ハルトは西に向かって歩き始めた。歩き始めて、30分もすると周りには、魔物と戦うプレイヤーの姿が多くなってきた。
パーティの最大人数は6人だが、まだゲームが始まったばかりということと難易度が1番低い平原なので、周りのパーティは2人〜4人が多かった。
「この辺は人が多いから、もうちょっと先に行ってみるかな」
更に西に歩いて行くと、周りにプレイヤーがほとんど居なくなったので魔物を探し始めた。そして見つけたのは、
「ワイルドドッグか、とりあえず鑑定っと」
ワイルドドッグ Lv2
状態 アクティブ
「1匹だし、Lv2だし初陣には丁度いいな」
ワイルドドッグは1匹で、その頭の上には逆三角形の赤いマークがあった。こちらに気付いているからなのかマークがゆっくり回っているようだ。
「まずは、アッサム攻撃だ!」
「キュー!?」
アッサムはワイルドドッグに向かっていき、爪撃を放つ。しかしワイルドドッグに素早く躱されてしまった。
アイツの方が素早いから、隙を作ってからじゃないと当たらないか、じゃあ俺も魔法で支援しないとな。「【ファイヤーボール】」
ハルトが放った拳大のファイヤーボールは、アッサムの攻撃を躱したばかりのワイルドドッグに向かって飛んでいきワイルドドッグに命中する。するとワイルドドッグのHPバーが3割程減っていった。
「今だ!アッサム」
ハルトの叫び声と共に、アッサムはワイルドドッグは向かって爪撃を繰り出すと、ワイルドドッグのHPを残り2割まで削っていった。
HPを残り2割まで削られたワイルドドッグは、アッサムを睨みつけ鋭い爪を思いきり振りかぶってきた。
アッサムはワイルドドッグの攻撃をもらってしまい、HPが2割減ってしまう。しかし叩きつけてきた前足をアッサムは逆に掴み、ワイルドドッグの体ごと持ち上げ地面に叩きつけた。
ワイルドドッグのHPバーが砕け散り、ワイルドドッグは動かなくなった。
「無傷とはいかなかったけど、こんなもんかな。良くやったぞアッサム」
ハルトはアッサムに近づいていき、頭を撫でてやる。アッサムは喜びハルトの腰に抱きついて来た。
「ハハッ、戦闘中はカッコよかったのに結構甘えん坊だな」
一頻り撫終えると、ワイルドドッグの死体に近づいていき、解体ナイフを取り出し死体に突き刺した。
するとワイルドドッグの死体が消え、アイテムが残されていた。
素材を取るのは、解体ナイフを刺すだけだから楽だな。何が取れたかな?
【素材アイテム】
名称 野犬の爪 品質D レア度1
ワイルドドッグの爪。
鋭く尖っている。刺さると痛い。
野犬の爪か、まんまだな。まぁこういう素材を換金してアイテムや装備を買うんだからな。冒険してるって感じで、テンション上がるぜ!この調子でどんどんいくぞ!
こうしてハルト達は、次の獲物を探して歩き出したのだった。