24話 狩りの成果
「今日はありがとう。おかげで今回は大量の素材を集める事が出来たわ」
「ホントだね。次からの事を考えると気が重いくらいだよ。ねえ、いっそのことうちに入らない?そうしたら狩りが楽なんだけど」
「こら、アイ。無茶言っちゃダメよ。うちは生産職だけのクランだからハルト君は入れないでしょ。気持ちは分かるけど」
街に戻って来たハルト達はドロップアイテムの分配の為にヤヨイ達の屋台の裏に来ていた。ちなみに採取や伐採で取ったものは各自の物となっていた。
オオカミのドロップアイテムは狼の爪と狼の牙そして狼の毛皮。それがハルトの前に大量に置かれていた。
「えーと。こっちの狼の爪と牙ですね。狼の爪が108個、牙が84個、毛皮が52枚ですね」
1匹につき複数ドロップしたとはいえ、3桁は凄いな。最初見たとき数えるのが嫌になったもんな。
「こっちの野鼠の皮が286枚ね。こっちも凄い数ね。ワイルドラットの方が群れの数が多かったけど、この数は‥‥。私達だけじゃいつもこの前半分もいかないわ」
ワイルドラットのドロップアイテムは野鼠の皮。その大量の野鼠の皮を数え終えたヤヨイとマイはどこか満足気な表情をしていた。
「森梟の尾羽は24だった」
そこへフォレストオウルの尾羽のドロップアイテムを数え終わったマイも合流した。
「いやー、レベルは上がるし素材も大量だし、今回は本当に満足いく結果だよ」
アイの言う通り今回の夜の狩りで全員のレベルが2つ程上がっていたのだ。勿論ハルトは2回とも魔力を上げ、最大MPを100まで上げていた。なおカルマのレベルは上がっていない。
まさかパーティを組んでいてレベルが2つ上がるとは思わなかった。夜ってあんなにモンスターが出るんだな。俺とカルマだけだったら危なかったな。実際何度か囲まれたし。
モンスターの数が多くなり過ぎてカルマだけでは手が回らない事があり、何度かカルマを突破してハルトまで迫って来るモンスターがいたのだ。その際に守ってくれたのがパーティを組んだ3人だったのだ。それを理由に素材の配分を変えるように提案したのだが3人は断固として譲らなかった。
俺の取り分が半分て事は狼の爪が54、狼の牙が42、狼の毛皮が26、野鼠の皮が143、森梟の尾羽が12か。
【素材アイテム】
狼の爪 品質C レア度1
狼の爪。鋭く尖っている。この爪で引っ掻かれるのはシャレにならない。
【素材アイテム】
狼の牙 品質C レア度1
狼の牙。鋭く尖っている。噛まれるとヤバイ。
【素材アイテム】
狼の毛皮 品質B レア度1
狼の毛皮。なめす事でいろんな事に使える。
【素材アイテム】
野鼠の皮 品質D レア度1
野鼠の皮。あまり大きくはない。小物作りに多用する。
【素材アイテム】
森梟の尾羽 品質B レア度2
森梟の尾羽。これを使って作られたものに隠密(小)が付与される。
うーん、やっぱり俺が持ってても大した使い道が無いな。俺が何か作る訳でも無いし、ギルドに売るぐらいしか思いつかないな。いっそのことヤヨイさん達に買い取って貰うか?
「ヤヨイさんの所でこの素材を買い取って貰うことって出来ますか?」
「ええ、大歓迎よ。まだオープンしたてで素材はどれだけあってもたりないくらいだから」
「じゃあ、お願いします。あ、後狼の毛皮で何か作れますか?」
「作れるけど多分イベント迄には間に合わないと思うわ。今度のイベントが討伐系らしいから注文が殺到しちゃってるのよ」
そうか、それなら全部売ってお金に変えてNPCの店で一通り揃えた方が早いか。素材はまた取りに行けばいいだけだしな。
「それじゃあ今日モンスターからドロップした素材は全部売ります」
「じゃあ、清算するからちょっと待っててね」
そう言って素材を見ながら計算を始めた。
「ねえねえハルっちって掲示板に書き込んだりしないの?」
「掲示板ですか?俺は書き込んだりはしないで見るだけですね」
「そうかあ‥‥。じゃあさ今日の事私達が掲示板に書いてもいいかな?」
「今日の事ですか?いいですけど、何を書くんですか?」
若干警戒した様子で尋ねると慌てたように手を振りながらアイが答えた。
「あ、ハルっちの名前とかは勿論出さないよ!書き込みたいのはサモナーの事だよ!でもサモナーはハルっちしか居ないから特定しようと思えば特定されちゃうけど」
確かにサモナーは俺1人しか居ないからサモナーの情報は全部俺の事になるのか。まあ特にサモナーってバレてもデメリットは無いかな?だったら別に構わないかな。
「まあ別にいいですよ。でも名前は出さないでくれるんですよね?」
「うん!出さない出さない!じゃあ書き込んでもいい?」
「ええ、良いですよ」
「良かったー。ありがとう」
そうこうするうちに清算を終えたヤヨイがやって来た。
「お待たせ。素材全部で38200Gになったわよ」
ま、まじか!めっちゃ大金じゃないか!?ヤヨイさん達に装備を作ってもらえなかったのは残念だけど、これだけあればNPCの店でも装備を充実させられるはず。
「ありがとうございます」
動揺を隠してお金を受け取ると、ヤヨイ達に付き合っていたせいで、いつもより遅くなってしまっているので少し焦りながらも冷静を装いヤヨイ達の元を後にした。
「じゃあ、これで失礼しますします」
「今日は本当にありがとね」
「またねー、ハルっち」
「また」
3人はハルトを見送り、その姿が見えなくなると盛大にため息を吐いた。
「「「はあ〜〜〜」」」
「ハルっち自分がどれだけ凄いのか理解して無かったね」
「ホントね。私たちでフォローしといてあげないとね」
「ん、フォロー大事」
なんにも分かってないハルトに呆れながら3人はもう1度溜息を吐いたのだった。