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15話 サモナーが嫌われてる理由

「そういえばハルト君は、何の職業なの?」


 どうしよう。ここは正直に答えるべきか?サモナーは敬遠されてるし、いっそのことテイマーだ通してみるか?‥‥いや、確かヤヨイさん達は見守る派だった筈。ここは正直に答えよう。


「俺は、一応サモナーやってます」


「‥‥‥‥え?ホントに?」


 あ、やっちまったかこれ?でも、もう後には引けない!


「あー、やっぱりサモナーって嫌われてます?パーティ募集はともかくクラン募集でも嫌われてる感じなんですけど」


「嫌われてるっていうか、ちょっと敬遠されてる感はあるわね。ハルト君はサモナーのモンスターを仲間にする方法は知ってる?」


「自分でHP5割っていう奴ですか?」


「そう、それが1番のネックなのよ。テイマーもサモナーも、モンスターが強いから足手まといにはならないのよ。経験値の配分とかで不満がある人もいるけどね」


「経験値の配分?ああ、そうか!モンスターにも経験値が等分されるから1人で何人分も持って行ってる事になるんですね」


「そうね。でも、私はモンスターも戦ってくれてるんだし、使役職の人が直接何人分もの経験値を得るわけじゃ無いんだから別に問題無いと思うんだけどね。それよりも問題が、サモナーのモンスターの使役方法なのよ。パーティのサモナーがモンスターを仲間にしようとした時に、他の人はあまり手を出せないし、待たないといけないでしょ?」


「確かに。でも5割までなら手伝っても大丈夫ですよね?それならあんまり時間は掛から無いんじゃないですか?」


「5割までの加減が難しいのよね。それにサモナーってMPが多くないと、入れ替えたり出来ないから、MP特化になりやすくて攻撃力が低くて、残り5割でも結構時間が掛かるのよ。先に進めば進むほどね」


 確かに今でも結構キツめだしな。戦闘で魔法を使い過ぎると後々困るからあんまり魔法も使えない。MPを上げたいから筋力も上げ難い。あれ?これ詰んでね?


「決定的だったのは、後少しで倒せるって所で流れ弾が当たってモンスターが死んだ時ね。物凄い言い合いになって揉めたらしいわ‥‥。その話が広まってからは、そんな面倒臭いサモナーとは組みたく無いって人が多くなっていったのよ」


 うわぁ、後少しの所でそんな事になったらそれは揉めるだろうな。俺でもキレるかもしれんし。


「それでサモナーが避けられてたんですね」


「それでどんどんやり難くなったサモナーが辞めていったのよね。私達のクランにも元サモナーが居るのよ。あら?噂をすれば、彼が元サモナーよ」


「お、いらっしゃい。早いなもう客が来てんのか」


「ちょうどあなたの話をしてた所なのよ。紹介するわね。彼がさっき言ってた元サモナーのロバートよ」


 ヤヨイさんが紹介してくれたのは、ハルトよりも頭1つ分程背が高く、がっしりとした前衛向きの体格でとても後衛のサモナーをやっていたとは思えない銀髪の男性だった。


「はじめまして。ハルトと言います。一応サモナーやってます」


「‥‥‥は?マジで?」


 自己紹介すると驚いた顔をした後、2人を疑う様な目で見ていたが、どうやら本当のことだとわかったのか少し嬉しそうな目でハルトを見た。


「へぇ〜、統計データで10人しか居ない貴重なサモナーか。俺が言うのもなんだが負けんじゃねぇぞ」


 励まそうと肩に左手を置いて右手で親指を立てていた。


「本当に貴方が言うなって感じよね」


「うっ!」


 ヤヨイさんにツッコミをいれられてバツが悪そうな顔をする。それを疑問に思ったハルトが。


「え?どういう事ですか?」


「あー、なんだ。β版の時にちょっとした揉め事を起こしちまってな。それでサモナーの印象がもっと悪くなっちまってな。まあそれの責任を取ってサモナーは引退したんだがな」


「揉め事って何やったんですか?さっきの流れ弾云々の話ですか?」


「いや、それは俺じゃない。サモナーっていうのはMP特化が多いんだが、それでもMPを節約するのに越した事はねぇ。だから出てくるモンスターが少ないと後ろで見てるだけって事も多々あったんだ」


「それを面白くない人達が、『サモナーは楽でいいよな、何もしないで経験値持って行きやがって』って言われたらしいのよ」


「それを言われた瞬間からキレちまってな。サモナーの苦労を何にも知らない奴が何も言ってやがる!ってな。召喚モンスを増やすのにどれだけ苦労するかアイツらは何にも分かってないんだ!」


 今でも納得はいっていないとでもいうように、拳を握って熱く語っていくが、ふっ、と力が抜けていく。


「まあその件で揉めまくってな、取っ組みあったり罵りあったりしてたら誰かが運営に通報したんだろうな。運営から警告が来たよ。それでサモナーの印象は更に悪くなっちまってな。サモナーの印象を悪くした奴が、サモナーやってたら印象が悪いままで改善しないと思ったから、サモナーは引退したんだ」


「それでサモナーを辞めたんですか」


「ああ。だからハルトがサモナーって言うんなら応援するぜ!で今日は何を買いに来たんだ?」


「あ、そういえば、すっかり話し込んじゃって忘れてたわ」


 ロバートのセリフに思い出したというような顔をしたヤヨイだった。


「すいません。別に買いに来たという訳じゃ無いんです。まだ夜になって狩りに行ける程の実力が無いので暇つぶしににぶらぶらしてたらプレイヤーのお店があったんで、寄ってみたんです」


「ああ、夜はモンスターの量も質も上がるからな。自信が無いうちは外に行かないのが正解だぜ」


「そうね。夜は視界も悪いしね。でも夜にしか出現しないアイテムやモンスターも居るからゲームをやり込むなら夜に出ない訳にもいかないけどね。私達生産職は特に」


 やっぱり夜は危険度が上がるのか。今まで夜に狩りに行かなくて正解だったな。


「お店もまだオープンしたてで、良いものは少ないけど材料持ち込みでもやってるから、これから贔屓にしてね。うちで装備を整えれば夜もへっちゃらよ」


「俺は木工師だから杖とか作ってやれるからよ、良い材料が手に入ったら作ってやるから待ってるぜ」


 ウインクしながら言うヤヨイと良い笑顔のロバートに感謝しながらその場を後にしたのだった。

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