117話 既に判明してました
「うーん、魔石の数があんまり無かったせいでMポーションが思ったよりも作れなかったか」
夜の砂漠でスケルトンファイターとかを狩ってたから魔石は多少あったけど森で採って来た素材分には全然足らなかったな。もうちょい魔石の入手が楽になったら良いんだけど。
「Mポーションが思ったより作れなかったのはしょうがない。昨日と今日手に入れた素材で作って欲しい物も出来たしヤヨイさんの所に行くか。流石に追加の分は出来上がるのが遅くはなるだろうけど。それに迷いの森について何か知ってるかもしれないしな」
そう思いヤヨイ達が屋台を出している北通りへと移動する。一応召魔はエラルシアの里に着いた時点でいつもの癖で送還済みである。
「こうして見ると色んなプレイヤーの店が増えてきたな。武器とか防具、食事だけじゃなくて見ただけじゃどんな効果があるのか分からない様な物まで売ってるんだな。後でじっくりと見て回るのも面白いかもな」
などと呟きながら歩き目的の屋台へと近づくと。
「おう!ハルトかよく来たな!この時間に来るのは珍しいじゃねぇか。何か良い食材でも仕入れたか?」
「リョウさん、こんにちは。食材の方もゲットしてきましたよ!」
「おー!そうか!早く裏に来て早速それを売ってくれ!」
良い笑顔でリョウに向かって親指を立てるとリョウも良い笑顔で答える。
そして、屋台の裏へ通されるとそこにはヤヨイしか居なかった。
「ヤヨイさん、こんにちは。今日はヤヨイさんおひとりですか?」
「ハルト君、こんにちは。ええ、今日は私だけね。他の人は用事があったり狩りに行ったりしてるのよ。私達は生産系のクランだけどマップの新規開拓もして行かないと良い素材が手に入り難いのよね。勿論他のプレイヤーから買い取ったりするんだけどそれだけだと自由に開発したり実験したりして失敗すると赤字になっちゃうじゃない?だからどうしても自分達でも素材の採取やモンスターの討伐なんかは出来た方が良いのよね」
他の人は出払ってたのか。道理で今回は連行されなかった訳だ。いや、連行されたかった訳じゃないんだけどね?
「生産職の人達も大変なんですね」
「生産職だからって作ってるだけだって思ってる人もいるから分かって貰えて良かったわ。それに、ハルト君は素材を沢山売ってくれるから助かってるわよ」
「ははっ、俺も沢山買い取って貰えるので助かってます」
「それで今日は何を持ってきてくれたのかしら?」
「今日持ってきたのはこういうのですね」
そう言って空いている机の上に素材を1種類ずつ出していく。
「あら、これは迷いの森の素材ね?」
「そうですね。Mポーションの素材を採取しながら3マス目に進んでみました」
「普通はついでに進む様なものじゃ無いんだけどね……。まぁ、ハルト君だしね。」
「俺だからの意味が分かりませんが……」
「そうかしら?それより素材の買取の話をしましょ。迷いの森の素材は既に他のプレイヤーからも持ち込まれてるからいつもみたいな高額にはならないと思うけど構わないかしら?」
「あ、それは別に構わないですよ。元々お金稼ぎで行った訳でも無かったですし」
「それなら良かったわ。迷いの森は採取素材も豊富だし。それに最近美味しい物が食べたいって人が増えて料理ブームが起きてるのよ。ゲームの中じゃ美味しい物をいっぱい食べても太らないし、誰かさんが色々な食材を仕入れたり振舞ったりしてくれたお陰しらね?」
そう軽くウインクしながらおちゃめに言うヤヨイに少しドキッとさせられたハルトであった。
「そういうのもあって本当の意味で美味しい素材がある迷いの森は人気になりつつあるのよ」
あれ?そうなると北の森で人が多くてレベル上げがしにくかったのって俺のせい?いや、まさかな。気のせいだよな。うん、そうに違いない。
「だから森鶏のお肉と卵、茶熊のお肉はあるだけ買うわ。他の素材もまだまだ需要が高いからそれも全部買い取るわ。この素材の装備が多く出回って安くなればプレイヤー全体のレベルが上がって探索範囲が広がって行くからね。それからタスクボアの素材は無いけどタスクボアには遭遇しなかったの?」
「そういえばタスクボアには遭遇しませんでしたね」
「まぁ、タスクボアは迷いの森のレアモンスターだから中々出会えないから無理もないわね。4マス目とかに進めばもっと遭遇出来るかもしれないけど、今はまだ進めたって報告は聞いてないわね」
「迷いの森の進み方が全然分からないですもんね」
「あら?進み方はβ版の時から解明されてはいるわよ?まだモンスターが強くて先に進めてないだけで進み方はβ版の時と同じだって聞いてるわよ?」
「え!進み方って分かってたんですか!……てっきりまだ進み方が分かって無いのかと思い込んでました」
「β版の時はじっくりとレベルや装備を整えて調べてたから攻略法はバッチリよ。たださっきも言った通りレベルや装備が整って無いから行けないだけで。本当なら3マス目に入るだけでももっと時間が掛かってもおかしくなかったんだけど、それはハルト君のお陰ね」
「俺ですか?」
「ええ、ハルト君が先に進んでその素材をどんどん売ってくれるから攻略上位陣がそれの装備を買って先に進めてるのよ。まぁ、中には自分達の力だけで進んでやるってクランもあるけど。でも全体で言えばβ版よりも早いペースで進んでるのは確かね。だからどんどん素材を売ってね!」




